4 / 49
第Ⅰ章 出会い
ゼロジョーカルテット
しおりを挟むエリオ・クレスト、ダグラス・サーペント、ポール・ゼファーの三人は戦時中からの幼馴染三人組だ。
世界が暗黒に満ちていたとしても、三人でいればきっと何とかなると信じて共に成長してきた。
喜びは分かち合い、多少の悪事もしてきた仲だ。
生き残るために必死だった。
クレスト家の前に談笑する三人組を見つけ、ロゼは駆けだした。
駆け寄ってくる少女に手を振り返したのは、黒髪で前髪を長く伸ばしている青年ダグラスだ。
「おはよ」と短く挨拶し、ロゼを招き入れた。
「遅かったな」
庭の柵にもたれ掛かるエリオが嫌味を言った。
「悪かったわね!」
ロゼも負けじと歯を食いしばりながら言い返した。
「まあまあ」
と宥めるダグラスをしり目に
「はっ、ここまでにしてやる。俺は大人だからな」
と、エリオは得意げな顔でロゼを見下ろした。
燃えるような赤毛がロゼの顔に近づき、彼女は顔を背けた。が、直ぐに笑顔になった。
このやり取りもいつもの光景だ。
孤児院では味わえない、ロゼにとっては非日常の『素敵な世界』だった。
三人との出会いは最悪なものだった。
肩がぶつかった因縁で喧嘩になり、アマレティアとの対決のきっかけにもなった。
ロゼにとっては決して良い思い出ではない。
その後、三人組は巻き上げた金をロゼに返してくれた。
そしてカレーを一緒に食べたことをきっかけにロゼとは親しい仲になった。
また、この五年間で世界からは通貨そのものの概念がなくなり、今は身分証のカードさえあれば生きてゆける。もっとお気楽な時代となった。
和解してからというもの、三人の青年とはよく顔を会せるようになり、
そう考えると悪い思い出でもないのかもしれないとロゼは思った。
「ねえ、生きるのに一番大切なのは?」
ロゼは道中の話題にと持ち掛けた。
「皆答えてよねー。せーのっ」
「食べ物、とかか?」
「友人かな」
「寝ることかなあ。のんびりしたいし」
三人の意見は見事にばらけた。
「ダグ。友人とか、引くんだけど」
「んなっ、ガキの頃約束しただろ! 覚えてるの、俺だけかよ」
それとこれとは違うと親友二人に突っ込まれてしまった。
「食べ物って。毎日おかわりしているお前らしいよ」
と負け惜しみにもならないセリフを吐いた。
三人の男たちは、他人事のようにクスクス笑っているロゼに同じ質問を返した。
「私? 私はねえ……食べるのは、大事だよね。でも疲れたら寝たいし、友達も~……一人じゃつまんないものね」
等といろいろ言ってみたが
「バランスかな」と言った。
「ズルすぎる」
ダグラスの言葉に二人は頷くばかりであった。
「マキナは? 何が一番大事かな」
ポールの疑問にはロゼも気になった。
「どうなの? マキナ」
マキナは待っておりましたと言わんばかりに
「はい! もちろんロゼです!」
と、はりきって答えた。
ロゼは自慢のロボットだと感心した。
他の三人はというと「知ってた」というふうに顔に書いてあった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
京都式神様のおでん屋さん
西門 檀
キャラ文芸
旧題:京都式神様のおでん屋さん ~巡るご縁の物語~
ここは京都——
空が留紺色に染まりきった頃、路地奥の店に暖簾がかけられて、ポッと提灯が灯る。
『おでん料理 結(むすび)』
イケメン2体(?)と看板猫がお出迎えします。
今夜の『予約席』にはどんなお客様が来られるのか。乞うご期待。
平安時代の陰陽師・安倍晴明が生前、未来を案じ2体の思業式神(木陰と日向)をこの世に残した。転生した白猫姿の安倍晴明が式神たちと令和にお送りする、心温まるストーリー。
※2022年12月24日より連載スタート 毎日仕事と両立しながら更新中!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる