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プロローグ

花咲く死地

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【前書き】
この作品を目に止めていただきありがとうございます。完結までがんばってまいりますので、暖かい目でみまもってやってください!
───────────────────────

 真っ赤な花が咲き誇る幻想的な場所。そこで青年は人としての生涯をたった今、終えようとしていた。否、生き抜くのを諦めようとしていた。

 これを運命と言うならば、残酷で非道で無情だろう。今まで仲間だと思っていた人達に、身勝手な天秤にかけられ見捨てられたのだ。相談もなく、悩むこともなく。当然、拒否権だってなかった。

 共に戦うのを拒み、一人の犠牲で済むなら、と。コイツらの変わりは居ないが、刀鍛冶師の代わりならいくらでもいると。

 大して感情も籠ってない謝罪だけを引き攣った笑顔と共に残して。

 ──声が聴こえる。

 破れかかった鼓膜が微かに捉える醜悪でおぞましい唸り声。朦朧とした意識の中、掠れた視界に写る魔獣達は、鋭い眼光を向けている。

 もう逃げる余力も青年にはなかった。十分に戦ったのだ。物語るように、辺りには魔獣の死骸が幾つも転がっている。

 ──だが。だが、生きる希望を持つ事さえ許さないと、魔獣はその数を増やしていった。

「はあ……はあ……」

 息を整えたくても、折れた肋が肺に傷を負わせてる為に出来ない。吐血は止まらず、アドレナリンを凌駕した激痛。そして必然的に陥る酸欠が青年を正常な判断から遠ざける。

 ふと視界に入ったのは地面に刺さった一本の刀。青年の固有スキル・劣化無効クレーロスにより、激闘を繰り広げて尚、刃こぼれ一つない鋭利で且つ芸術的な曲線美を成したそれが訴えかける。

 “ここで終わっていいのか”と。

「そう、だ……終わっていい筈が、ない」

 青年には成すべき事があった。この刀を遺してくれた父の不可解な死。その真実を見つけ出す事。その為に青年は鉄を叩くのではなく刀を振るう事を決めたのだ。

「ゼェ……ゼェ……」

 震えた手で刀を握り、裏切り者が落としていった布切れを使い刀と手を縛りつける。

「死ぬつもりでこい、犬っころ」

 青年は、魔獣にも劣らない野生じみた鋭く黒い眼光を穿つ。宿したそれは生き抜く為の渇望ではない。紛れもなく、青年の瞳に宿るそれは、生への執着・・だった。
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