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3章 闇の聖女
第18話 不審人物
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「ありがとうランス。買い物に付き合ってくれて」
「べつに、このくらい大したことじゃない。いつでも声をかけろ」
「うん、ありがとう」
グウェンさんから、聖女を探している貴族がいると聞いて以来、私が宿の外に出かける時は、ランスがついてきてくれるようになったいた。
ランスがなにか用事がある時は、従者のカイがついてきてくれる。
最初の頃は外に出かけるのに緊張していたけれど、ここ1か月ほど拍子抜けするほど平穏で穏やかな日々が続いていた。
毎日宿の仕事を手伝ったり、薬草を育ててポーションを作ったり。
そして適度に出かけてもいる。
今日は出来上がったポーションをグウェンのところに売りに行くのと、また魔法石の補充もしておきたい。
出かけるついでに、ベルさんからお使いも頼まれている。
ポーションは、これまた聖なる力を逃しにくい水晶を削って作った瓶に入れてある。
今日持っていくのは5本だけど、意外とずっしりとしていて重い。
「ねえ、ランス。グウェンさんが言っていた、聖女を探している貴族がいるっていう話本当かな? それにしたら、ここ1か月、全く話すら聞かないね」
「……いや、きたみたいだぞ。下がっていろ」
「え?」
ランスロートがそういうと同時に、前方から怪しい人影がフラフラと近づいてきた。
兵士の格好をしたそれなりにガタイの良い男性のようだけれど、生気が感じられないし、足取りがおぼつかない。
俯き加減で、前髪で隠れて、顔はよく見えない。
なぜか見ていたら不安になるような動きだった。
「あーれー。ニーナちゃんじゃーん。王都のこんな下町なんかにいたの。どおりで見つからないわけだ」
「……え?」
男の発したまるで知り合いかのようなセリフに違和感を覚える。
こんな知り合いはいないと思うんだけど……とよく観察してみる。
「……まさか、ブルーノ……さん?」
顔こそ、長く伸びた前髪に隠れて良く見えないけれど、髪の毛の色や、背の高さ、そして声が似ている人物を思い出して、つぶやいた。
それはシレジア子爵家に雇われていた、兵士のうちの一人、私が特に苦手だった3人組のうちの一人の名前だった。
名前を呼んでみたものの、実は本当にこの不審な動きをする人物がブルーノさんだと思ったわけじゃなかった。
だってブルーノさんはもっとガッチリとしていて、逞しく鍛えていて、威圧的だけど活力に満ちていた。
目の前の人物は生気が感じられないし、記憶にあるブルーノさんよりも大分細い。
さすがに最後に見た時から、半年もたたないうちに、これほど人が豹変することはそうそうないだろう。
「酷いなあ、今気が付いたの? ニーナちゃん。まだ退職してから半年も経っていないのに。俺の顔忘れたなんて」
「…………」
「へへへ。お前を見つけたら、クロリスちゃんに褒められるぜ」
――これは本当にあのブルーノさん……なの?
剣術大会の上位常連で、鍛えぬいた体躯が逞しくて、市民のヒーローだったブルーノさん……?
彼は不気味に、体を傾けて小刻みに震えてさえいた。
真っ直ぐ立っていることすらもできない様子だ。
一体彼に何があったんだろう。
この人からは罵声ともいえる文句を日々言われていたから、好きでも何でもない。
もしも下町の人たちと出会えなくて、自分の世界が狭かったことに気が付くことができずに、ただ田舎に逃げ帰っていたら、今頃まだ憎んでさえいたかもしれない。
――だけどこれは、さすがになんか変よ。
ブルーノさんに対する恐怖心や苦手意識よりも、疑問のほうが上回る。
――これは……私が回復魔法をかけなくなったせい? いいえ。それだけでここまでならない。私が回復魔法を掛ける前のブルーノさんはこんな人じゃなかった。例え体が楽を覚えてしまったとしても、それは一時的なもののはず。
いやそんなことよりも、これはもっと根本的ななにかが変だと、分かる。
ランスロートが、剣に手を掛けるのが、横目に見えた。
ブルーノさんは、私の方だけを気にしていて、その前にいるランスの事が目に入っていない様子だ。
判断力までなくなっている。
「ほら、ニーナちゃん。大人しくついておいで!」
そう叫ぶと同時に、ブルーノさんが私に向かって駆け寄ろうとした。
だけど動きが、以前と比べるまでもなく鈍い。
ランスが、横をすり抜けようとするブルーノさんを、余裕で軽く足払いして、流れるように地面に取り押さえた。
ランスの動きはどこにも力が入っていないように見えるほど、滑らかで自然な動きだった。
「ぐ…………??」
取り押さえられたブルーノさんは、何が起きたのか分からないかのように、目を白黒させている。
私はそのブルーノさんの方に、恐る恐る近づいていった。
「ニーナ、どうした?近づくと危険だぞ。今縛るから」
「あ、うん。気を付ける。試してみたいことがあって。すぐ終わるから」
ふと思いついたことがあって、持っていた鞄からポーションの瓶を一つ取り出す。
そしてランスが取り押さえているブルーノさんの頭に、その中身をぶちまけた。
「うおっ! 冷てーな!! 何しやが……る……」
最高級の魔石を使用して作った、しかも出来立てのポーションだ。
私の普段の回復魔法よりも、効果は上かもしれない。
「ニーナ? なんだ今のは」
「うーん。なんとなく?」
ランスが眉を寄せて私の行動を訝しがっているけれど、私にだって、自分の行動が正解だと確信があるわけではない。
ただ、ブルーノさんの状態が、彼の正常な状態ではなくて、なにか異常なのだとしたら、なんとなくこのポーションをかけることで、元に戻るような気がしたのだ。
だから本当に、なんとなくとしか答えられない。
もしくは実験?
大人しくなってしまったブルーノさんを観察する。
ブルーノさんはパチパチと目を開いたり閉じたり、目玉をキョロキョロと動かして、何かを確認しようとしているようだった。
「俺は……何をしていたんだ。ここは? いやまて。覚えているぞ」
――あ。なにかが正常に戻った。
「ブルーノさん、大丈夫ですか? なにか体におかしいところはあります?」
「ニーナさん? ああ! いってーー!」
私の顔を見ると同時に、反射的に起き上がろうとしたブルーノさんは、ランスにきつく取り押さえられて、再び地面に倒される。
とても痛そうだ。
「ランス。少し話していい?」
「いいけど。解放する気はないからな」
「もちろん」
さっき私の顔を見たブルーノさんが、なにか言いたげだったように見えたのだ。
そして表情も、私が退職した時のような威圧感もなくなり、先ほどまでの異様な雰囲気も消えている。
まるで普通の好青年というような表情に戻っている。
「ブルーノさん、先ほどなにか言いかけましたか?」
「……ああ。すまないニーナさん」
「……いえ。まあいきなり飛び掛かられそうになって驚きましたけど。なにか事情がおありのようでしたから」
「いや……そうじゃなくて。いや、もちろん襲い掛かったのも、もちろん申し訳ない。えー……あれ、ゴメン。頭が混乱していて」
「ゆっくりどうぞ」
話し方まで変わっている。
なんだか優しそうな、普通の青年の話し方だ。
そういえば出会ったばかりの頃のブルーノさんはこんな感じだったなと思い出した。
シレジア子爵家の兵団が有名になってきた頃に、腕に覚えがあるから雇ってくれと頼んで入ってきたと、キラキラとした目で語っていた頃のブルーノさん。
確かあれは、私が辞める1年とちょっと前だっただろうか。徐々に頭角を現して自信をつけていくのと同じくして、少しずつ言動が威圧的になっていった。
「今、頭の中にぶわーっと記憶が思い浮かんできて。ニーナちゃんがシレジア子爵家のお抱え聖女を辞める前。俺が酷い文句の言葉を投げつけていた記憶が。……忘れてたわけじゃないんだけど。ゴメン。たくさんお世話になったのに……なんであんなにカーッとなって、不満や怒りを感じたのか、自分でも分からない。急に目が覚めた気分だよ」
そう言って謝るブルーノさんの様子は、とても演技だとは思えないほど反省した様子だった。
「はい、分かりました。気にしないで下さい」
「え、あれほどのことをしたのに、そんなあっさり……」
「もうどうでもいいんです。ほぼ忘れかけていたくらいですから」
これは半分本当で、半分強がりだ。
実は今でも思い出すと、少し心が痛む。
でもこうしてブルーノさんに会いでもしなければ、もうほとんど思い出すこともない。
そんなことよりも、毎日が忙しくて、楽しくて、当時のことを思い出しているヒマなんてない。
私がそう言うと、ブルーノさんは安心したのか、それとも傷ついているのか分からない、複雑な表情で「手厳しいな……」と呟いたのだった。
「べつに、このくらい大したことじゃない。いつでも声をかけろ」
「うん、ありがとう」
グウェンさんから、聖女を探している貴族がいると聞いて以来、私が宿の外に出かける時は、ランスがついてきてくれるようになったいた。
ランスがなにか用事がある時は、従者のカイがついてきてくれる。
最初の頃は外に出かけるのに緊張していたけれど、ここ1か月ほど拍子抜けするほど平穏で穏やかな日々が続いていた。
毎日宿の仕事を手伝ったり、薬草を育ててポーションを作ったり。
そして適度に出かけてもいる。
今日は出来上がったポーションをグウェンのところに売りに行くのと、また魔法石の補充もしておきたい。
出かけるついでに、ベルさんからお使いも頼まれている。
ポーションは、これまた聖なる力を逃しにくい水晶を削って作った瓶に入れてある。
今日持っていくのは5本だけど、意外とずっしりとしていて重い。
「ねえ、ランス。グウェンさんが言っていた、聖女を探している貴族がいるっていう話本当かな? それにしたら、ここ1か月、全く話すら聞かないね」
「……いや、きたみたいだぞ。下がっていろ」
「え?」
ランスロートがそういうと同時に、前方から怪しい人影がフラフラと近づいてきた。
兵士の格好をしたそれなりにガタイの良い男性のようだけれど、生気が感じられないし、足取りがおぼつかない。
俯き加減で、前髪で隠れて、顔はよく見えない。
なぜか見ていたら不安になるような動きだった。
「あーれー。ニーナちゃんじゃーん。王都のこんな下町なんかにいたの。どおりで見つからないわけだ」
「……え?」
男の発したまるで知り合いかのようなセリフに違和感を覚える。
こんな知り合いはいないと思うんだけど……とよく観察してみる。
「……まさか、ブルーノ……さん?」
顔こそ、長く伸びた前髪に隠れて良く見えないけれど、髪の毛の色や、背の高さ、そして声が似ている人物を思い出して、つぶやいた。
それはシレジア子爵家に雇われていた、兵士のうちの一人、私が特に苦手だった3人組のうちの一人の名前だった。
名前を呼んでみたものの、実は本当にこの不審な動きをする人物がブルーノさんだと思ったわけじゃなかった。
だってブルーノさんはもっとガッチリとしていて、逞しく鍛えていて、威圧的だけど活力に満ちていた。
目の前の人物は生気が感じられないし、記憶にあるブルーノさんよりも大分細い。
さすがに最後に見た時から、半年もたたないうちに、これほど人が豹変することはそうそうないだろう。
「酷いなあ、今気が付いたの? ニーナちゃん。まだ退職してから半年も経っていないのに。俺の顔忘れたなんて」
「…………」
「へへへ。お前を見つけたら、クロリスちゃんに褒められるぜ」
――これは本当にあのブルーノさん……なの?
剣術大会の上位常連で、鍛えぬいた体躯が逞しくて、市民のヒーローだったブルーノさん……?
彼は不気味に、体を傾けて小刻みに震えてさえいた。
真っ直ぐ立っていることすらもできない様子だ。
一体彼に何があったんだろう。
この人からは罵声ともいえる文句を日々言われていたから、好きでも何でもない。
もしも下町の人たちと出会えなくて、自分の世界が狭かったことに気が付くことができずに、ただ田舎に逃げ帰っていたら、今頃まだ憎んでさえいたかもしれない。
――だけどこれは、さすがになんか変よ。
ブルーノさんに対する恐怖心や苦手意識よりも、疑問のほうが上回る。
――これは……私が回復魔法をかけなくなったせい? いいえ。それだけでここまでならない。私が回復魔法を掛ける前のブルーノさんはこんな人じゃなかった。例え体が楽を覚えてしまったとしても、それは一時的なもののはず。
いやそんなことよりも、これはもっと根本的ななにかが変だと、分かる。
ランスロートが、剣に手を掛けるのが、横目に見えた。
ブルーノさんは、私の方だけを気にしていて、その前にいるランスの事が目に入っていない様子だ。
判断力までなくなっている。
「ほら、ニーナちゃん。大人しくついておいで!」
そう叫ぶと同時に、ブルーノさんが私に向かって駆け寄ろうとした。
だけど動きが、以前と比べるまでもなく鈍い。
ランスが、横をすり抜けようとするブルーノさんを、余裕で軽く足払いして、流れるように地面に取り押さえた。
ランスの動きはどこにも力が入っていないように見えるほど、滑らかで自然な動きだった。
「ぐ…………??」
取り押さえられたブルーノさんは、何が起きたのか分からないかのように、目を白黒させている。
私はそのブルーノさんの方に、恐る恐る近づいていった。
「ニーナ、どうした?近づくと危険だぞ。今縛るから」
「あ、うん。気を付ける。試してみたいことがあって。すぐ終わるから」
ふと思いついたことがあって、持っていた鞄からポーションの瓶を一つ取り出す。
そしてランスが取り押さえているブルーノさんの頭に、その中身をぶちまけた。
「うおっ! 冷てーな!! 何しやが……る……」
最高級の魔石を使用して作った、しかも出来立てのポーションだ。
私の普段の回復魔法よりも、効果は上かもしれない。
「ニーナ? なんだ今のは」
「うーん。なんとなく?」
ランスが眉を寄せて私の行動を訝しがっているけれど、私にだって、自分の行動が正解だと確信があるわけではない。
ただ、ブルーノさんの状態が、彼の正常な状態ではなくて、なにか異常なのだとしたら、なんとなくこのポーションをかけることで、元に戻るような気がしたのだ。
だから本当に、なんとなくとしか答えられない。
もしくは実験?
大人しくなってしまったブルーノさんを観察する。
ブルーノさんはパチパチと目を開いたり閉じたり、目玉をキョロキョロと動かして、何かを確認しようとしているようだった。
「俺は……何をしていたんだ。ここは? いやまて。覚えているぞ」
――あ。なにかが正常に戻った。
「ブルーノさん、大丈夫ですか? なにか体におかしいところはあります?」
「ニーナさん? ああ! いってーー!」
私の顔を見ると同時に、反射的に起き上がろうとしたブルーノさんは、ランスにきつく取り押さえられて、再び地面に倒される。
とても痛そうだ。
「ランス。少し話していい?」
「いいけど。解放する気はないからな」
「もちろん」
さっき私の顔を見たブルーノさんが、なにか言いたげだったように見えたのだ。
そして表情も、私が退職した時のような威圧感もなくなり、先ほどまでの異様な雰囲気も消えている。
まるで普通の好青年というような表情に戻っている。
「ブルーノさん、先ほどなにか言いかけましたか?」
「……ああ。すまないニーナさん」
「……いえ。まあいきなり飛び掛かられそうになって驚きましたけど。なにか事情がおありのようでしたから」
「いや……そうじゃなくて。いや、もちろん襲い掛かったのも、もちろん申し訳ない。えー……あれ、ゴメン。頭が混乱していて」
「ゆっくりどうぞ」
話し方まで変わっている。
なんだか優しそうな、普通の青年の話し方だ。
そういえば出会ったばかりの頃のブルーノさんはこんな感じだったなと思い出した。
シレジア子爵家の兵団が有名になってきた頃に、腕に覚えがあるから雇ってくれと頼んで入ってきたと、キラキラとした目で語っていた頃のブルーノさん。
確かあれは、私が辞める1年とちょっと前だっただろうか。徐々に頭角を現して自信をつけていくのと同じくして、少しずつ言動が威圧的になっていった。
「今、頭の中にぶわーっと記憶が思い浮かんできて。ニーナちゃんがシレジア子爵家のお抱え聖女を辞める前。俺が酷い文句の言葉を投げつけていた記憶が。……忘れてたわけじゃないんだけど。ゴメン。たくさんお世話になったのに……なんであんなにカーッとなって、不満や怒りを感じたのか、自分でも分からない。急に目が覚めた気分だよ」
そう言って謝るブルーノさんの様子は、とても演技だとは思えないほど反省した様子だった。
「はい、分かりました。気にしないで下さい」
「え、あれほどのことをしたのに、そんなあっさり……」
「もうどうでもいいんです。ほぼ忘れかけていたくらいですから」
これは半分本当で、半分強がりだ。
実は今でも思い出すと、少し心が痛む。
でもこうしてブルーノさんに会いでもしなければ、もうほとんど思い出すこともない。
そんなことよりも、毎日が忙しくて、楽しくて、当時のことを思い出しているヒマなんてない。
私がそう言うと、ブルーノさんは安心したのか、それとも傷ついているのか分からない、複雑な表情で「手厳しいな……」と呟いたのだった。
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