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父親が横領の罪で捕まらなかったIFバージョン
第13話 黄金のくじ
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新人対抗の御前試合が終わると、イルゼとユージーンは早速任務に就くことが許可された。
御前試合を見た貴族達からの希望で、あっちからもこっちからも警護を頼まれ大忙しだ。
団長のカミュには少し申し訳なさそうに、『これも第1騎士団の任務の一つなんだ。落ち着くまでしばらく大変だろうが頼む』と、頭を下げられてしまう。
これまで護衛任務はカミュやアマンダが大人気で大忙しだったらしく、アマンダには『楽になったわ』と感謝されてしまった。
他団からの救援依頼はめったにない。救援依頼があるということは、その団の手に負えないほどの緊急事態ということだからだ。
隣国からの侵入行為や、災害など。国家の危機と言っても良い。
しかし、護衛ばかりしていても経験が積めないので、演習として、他団の盗賊の取り締まりなどに混ざらせてもらうこともあった。
ユージーンとの約束の3か月の期限は、目前に迫っていた。
*****
その時はある日突然きた。
めったにないという、他団からの救援依頼。
救援依頼があると、まだ任務に混ざる許可を得ていない新人、外せない護衛任務に就いている者、完全休養日で連絡が付かない者以外は、全て、瞬時に現場へ向かう手はずになっている。
その日は、イルゼもユージーンも、訓練日だった。
何頭もの早馬を乗り継ぎ、その知らせは第1騎士団に届けられた。
イルゼは震えそうになる腕を、力で無理やり抑え込み、何度も訓練したとおりに、素早く準備を整える。
――――初の救援依頼は、地方で任務にあたっている、第4騎士団、ローガン団長からのものだった。
「行くぞ。」
「「「はい!!!」」」
既定の準備時間が過ぎた事を確認し、カミュが号令をかける。
準備が間に合わない者がいないかなど、確認しない。
そんな者がいても、出発を遅らせるわけもない。置いていくだけだ。
*****
時間は少し戻って、第4騎士団は、予め立てていた計画を変更し、ある貴族の領地に来ていた。
第4騎士団はいつも、治安の悪くなった地域へ赴いて、現地の治安維持をして回っている。
順番に長期休暇を取る以外は、常に地方にいると言って良い。
団長に就任したばかりのローガンは、団を完全に把握しきるまではと、この3か月間休みを取らず、常に地方を巡っていた。
・・・前任の団長は、団を副長に任せて、悠々と長期休暇を取っていたらしいが。
今回の領地は、特に治安が悪いという訳でもない。
しかし、国を跨いで活動している、大盗賊団の一味が潜伏していると言う情報が騎士団に寄せられたため、急遽近くにいた第4騎士団が駆け付けたのだ。
「団長。特に変わった様子はみられませんね。領民たちも、怯えた様子もなく和やかです。」
前団長に代わって指揮を執る事が多かったと言う副長は、子爵家の5男だか6男だからしいが、平民出身の新しい団長を歓迎してくれた。
言動は平民出身の騎士と見分けがつかないが、妙に可愛らしい顔をしているのだけが貴族らしいと言えば貴族らしかった。
本人曰く貧乏くじを引くタイプとのことで、『ああ、ついにまともな団長が来た』と、歓迎会では涙を流して喜んでいた。
長年第4騎士団に所属しているらしく、一目見ればその領地の荒れ具合、廃れ具合などをピタリと言い当てる。
ほぼ団長の仕事を請け負っていたのは、伊達ではない。
この人物がそのまま団長になっても良かったようなものだが、腕っぷしが・・・・大分、イマイチらしい。
「ああ、俺にもそう見える。でもな~んか引っかかるんだよな。」
目撃証言のあった山近くの村も、通ってきた街も、皆平和そのもの。
よく治められていると言っていい。
「違和感があるのは・・・・むしろタレコミの方・・・ですかね。」
副長の言う通り。
騎士団への情報提供に、慣れている者はそうそういない。
決まった形式などなく、いつも様々な形で、情報は入ってくる。
本人が直接駆け込んでくることもあれば、領主が代表して話にくることもある。身元がバレたくないのか、無記名の手紙でくるというのも珍しくはなく、今回のケースはこれにあたる。
この手紙というのも、いたずらなのか、大げさなのか、第4騎士団の慣れた者には、緊急度もなんとなく分かるのだそうだ。
今回の手紙に、副長は緊急性を感じた。
「『緊急性のある手紙』の、お手本のようでした。」
「・・・・・罠かもな。」
「おーい、リアムとマルコとナットこーい!!」
「はい!」
ローガンの意図をくみ取った副長オーランドが、何人かの騎士を呼びつける。
隊の中で、そこそこ実力があり、そこそこ経験があり、判断力もある3人。
「今回のタレコミ、罠の可能性がある。お前らは隊から離れて、ばらけとけ。合図をしたら即、第1を呼べ。合図がなくても、状況がまずそうだったら呼べ。」
「「「はい!」」」
3人は特に質問をすることもなく、愛馬に乗ってあっという間に姿を消した。
まあもしこれが罠で、既に見張りがついていても、3人いれば誰かはなんとか連絡してくれるだろう。
オーランドと騎士たちの、長年の信頼関係を、ローガンは感じた。
「しっかし、第4なんておびき出して、何の得があるんすかねー。」
「おいおい。まだ罠だと決まったわけじゃないぞ。」
オーランドの発言を否定しつつも、ローガンもほぼ確信を持っていた。
罠じゃなくて、本当に盗賊団の本体だったとしても、危険なことには変わりないが。
まあわざわざ騎士団と正面衝突する盗賊団はいないだろう。
「なあ。『緊急性のある手紙』のお手本が書けるやつって、どんな奴だと思う?」
「・・・・・俺は書けますね。」
オーランドがハッっと気がついたような顔をする。
「あれ、意外と少ないかも。何年か第4に勤めてて、しかも直接手紙を見る立場。え、数えられるかも。ジョーイと、パウエルと、去年退団したラルフの旦那と。・・・・・俺が入団する前のOBはさすがに分からないすけど。前団長のハリー・ヘッツェンも書けるっちゃ書けるかな。」
「第4の関係者・・・・・か。」
「なんかヤバそうっすね。引き返しますか。」
「危なそうだからって騎士団が逃げてどうすんだ。」
「・・・・っすよねー。」
改めて地図を広げる。
今第4騎士団が展開している場所は、盗賊が出ると情報のあった山から結構距離がある。
襲撃を警戒して、村は避け、見通しの良い平野で食事を摂っているところだ。
「まずこれが罠だとして。情報のあった山に敵が律儀にいるなんてこと、ねーよな。」
「まあ、それじゃあ罠になりませんからね。」
タレコミのあった山にそのまま敵がいたら、それは罠ではなくただの正面衝突である。
「もし罠と気が付いていなかったら、いつもの第4ならどうやって行動する?」
「・・・・・・。」
オーランドは、しばらく地図を見つめて、考えている様だった。
ローガンは急かすでもなく、ゆったりと話し出すのを待つ。
「俺なら、盗賊に見つからないように、まず斥候を出します。この辺とこの辺に見張りがいそうだ・・・と思うだろうから・・・。」
説明しながら、地図に書き込んでいく。
「この3方向から行くように、指示しますね。」
「・・・・この道通れるか?」
「通れるかどうか、探らせます。」
「おう、続けてくれ。」
「盗賊を発見したら、その人数にもよりますけど、いくつか小隊を出して、敵に気づかれないように先行させて、背後を取る。」
「定石だな。」
「先遣隊が配置についたら、本隊が、最高速度でガーっと街道を走り抜けて・・・・。」
地図の道のどまんなかに、ガーっと勢いよく矢印を書き込んでいくオーランド。
「先遣隊が足止めしているうちに、一気に襲います。」
「それが山に盗賊がいた場合の、オーランドの行動か。」
「はい。」
「ハリー前団長ならどうする?」
「俺に作戦立てさせますね。」
まあ、自分で作戦立てたことにするだろうけど、というオーランドのつぶやきは、聞かなかったことにしておこう。
「・・・・・なるほど、この前提でいこう。じゃあ次に、この計画でやってくる第4騎士団を罠に嵌めるには、どうするか考えると・・・・・・・。」
様子を探る斥候は見逃されるだろう。盗賊がいたという情報を、本隊に持ち帰ってもらわないと困るからだ。しかし先遣隊は、配置について合図をするまでは見逃されるかもしれないが、その後囲まれて潰されるだろう。
と、いうのがローガンとオーランドの意見だった。
本隊が襲撃される場所は大体予想できる。相手が何者か分からないが、王国騎士団が1団まるごと来ているのだ。予想できていれば、遅れはとらない。
「かといって、勝っても騎士何人も死んでちゃあ、困るからな。相手の規模を見て、ある程度以上ならすぐ第1騎士団へ連絡。オーランド、本隊を任せた。」
育成に何年もの歳月と莫大な資金が掛かる騎士は、国の財産だ。壊滅寸前で勝っても負けのようなものだ。
「はい。・・・・・え?ローガン団長はどうするんですか?」
――――まさか高みの見物か・・・・?
前任のハリーに散々な目に合わされたオーランドは、少々疑心暗鬼気味だった。
「あん?先遣隊で、潰されねーように踏ん張るに決まってんだろ。」
「・・・・・。」
オーランドは、しばらく言葉が出なかった。
「・・・・先遣隊は、危険です。」
一応合図をすると同時に逃げ出す手はずになっているが、犠牲は覚悟する必要がある。
そんな役割を、団長にやらせるわけにはいけない。
「危険だから俺が行く。俺がなんで平民出身で、今こんな地位にいるか、知らねーわけねーよな?」
貴族出身者も多くいる騎士団の中で、頭が悪いわけではないが、特別に切れるわけでもないローガンが団長になった理由。
圧倒的な、武力。
「『猛獣のローガン』。」
「そういうこった。・・・・・・ああ、そうだオーランド。お前いっつも貧乏くじ貧乏くじ言ってるけど、とんでもねーぞ。」
「・・・・??」
なぜここでいきなり貧乏くじの話が出てくるのだろう。
そりゃあ子爵家の6男なんかに生まれて、いつも貧乏くじを引かされて生きてきたが。
「お前誰も持ってない、黄金のくじ握り締めて生まれてきてるぜ。親御さん達に感謝するんだな。」
御前試合を見た貴族達からの希望で、あっちからもこっちからも警護を頼まれ大忙しだ。
団長のカミュには少し申し訳なさそうに、『これも第1騎士団の任務の一つなんだ。落ち着くまでしばらく大変だろうが頼む』と、頭を下げられてしまう。
これまで護衛任務はカミュやアマンダが大人気で大忙しだったらしく、アマンダには『楽になったわ』と感謝されてしまった。
他団からの救援依頼はめったにない。救援依頼があるということは、その団の手に負えないほどの緊急事態ということだからだ。
隣国からの侵入行為や、災害など。国家の危機と言っても良い。
しかし、護衛ばかりしていても経験が積めないので、演習として、他団の盗賊の取り締まりなどに混ざらせてもらうこともあった。
ユージーンとの約束の3か月の期限は、目前に迫っていた。
*****
その時はある日突然きた。
めったにないという、他団からの救援依頼。
救援依頼があると、まだ任務に混ざる許可を得ていない新人、外せない護衛任務に就いている者、完全休養日で連絡が付かない者以外は、全て、瞬時に現場へ向かう手はずになっている。
その日は、イルゼもユージーンも、訓練日だった。
何頭もの早馬を乗り継ぎ、その知らせは第1騎士団に届けられた。
イルゼは震えそうになる腕を、力で無理やり抑え込み、何度も訓練したとおりに、素早く準備を整える。
――――初の救援依頼は、地方で任務にあたっている、第4騎士団、ローガン団長からのものだった。
「行くぞ。」
「「「はい!!!」」」
既定の準備時間が過ぎた事を確認し、カミュが号令をかける。
準備が間に合わない者がいないかなど、確認しない。
そんな者がいても、出発を遅らせるわけもない。置いていくだけだ。
*****
時間は少し戻って、第4騎士団は、予め立てていた計画を変更し、ある貴族の領地に来ていた。
第4騎士団はいつも、治安の悪くなった地域へ赴いて、現地の治安維持をして回っている。
順番に長期休暇を取る以外は、常に地方にいると言って良い。
団長に就任したばかりのローガンは、団を完全に把握しきるまではと、この3か月間休みを取らず、常に地方を巡っていた。
・・・前任の団長は、団を副長に任せて、悠々と長期休暇を取っていたらしいが。
今回の領地は、特に治安が悪いという訳でもない。
しかし、国を跨いで活動している、大盗賊団の一味が潜伏していると言う情報が騎士団に寄せられたため、急遽近くにいた第4騎士団が駆け付けたのだ。
「団長。特に変わった様子はみられませんね。領民たちも、怯えた様子もなく和やかです。」
前団長に代わって指揮を執る事が多かったと言う副長は、子爵家の5男だか6男だからしいが、平民出身の新しい団長を歓迎してくれた。
言動は平民出身の騎士と見分けがつかないが、妙に可愛らしい顔をしているのだけが貴族らしいと言えば貴族らしかった。
本人曰く貧乏くじを引くタイプとのことで、『ああ、ついにまともな団長が来た』と、歓迎会では涙を流して喜んでいた。
長年第4騎士団に所属しているらしく、一目見ればその領地の荒れ具合、廃れ具合などをピタリと言い当てる。
ほぼ団長の仕事を請け負っていたのは、伊達ではない。
この人物がそのまま団長になっても良かったようなものだが、腕っぷしが・・・・大分、イマイチらしい。
「ああ、俺にもそう見える。でもな~んか引っかかるんだよな。」
目撃証言のあった山近くの村も、通ってきた街も、皆平和そのもの。
よく治められていると言っていい。
「違和感があるのは・・・・むしろタレコミの方・・・ですかね。」
副長の言う通り。
騎士団への情報提供に、慣れている者はそうそういない。
決まった形式などなく、いつも様々な形で、情報は入ってくる。
本人が直接駆け込んでくることもあれば、領主が代表して話にくることもある。身元がバレたくないのか、無記名の手紙でくるというのも珍しくはなく、今回のケースはこれにあたる。
この手紙というのも、いたずらなのか、大げさなのか、第4騎士団の慣れた者には、緊急度もなんとなく分かるのだそうだ。
今回の手紙に、副長は緊急性を感じた。
「『緊急性のある手紙』の、お手本のようでした。」
「・・・・・罠かもな。」
「おーい、リアムとマルコとナットこーい!!」
「はい!」
ローガンの意図をくみ取った副長オーランドが、何人かの騎士を呼びつける。
隊の中で、そこそこ実力があり、そこそこ経験があり、判断力もある3人。
「今回のタレコミ、罠の可能性がある。お前らは隊から離れて、ばらけとけ。合図をしたら即、第1を呼べ。合図がなくても、状況がまずそうだったら呼べ。」
「「「はい!」」」
3人は特に質問をすることもなく、愛馬に乗ってあっという間に姿を消した。
まあもしこれが罠で、既に見張りがついていても、3人いれば誰かはなんとか連絡してくれるだろう。
オーランドと騎士たちの、長年の信頼関係を、ローガンは感じた。
「しっかし、第4なんておびき出して、何の得があるんすかねー。」
「おいおい。まだ罠だと決まったわけじゃないぞ。」
オーランドの発言を否定しつつも、ローガンもほぼ確信を持っていた。
罠じゃなくて、本当に盗賊団の本体だったとしても、危険なことには変わりないが。
まあわざわざ騎士団と正面衝突する盗賊団はいないだろう。
「なあ。『緊急性のある手紙』のお手本が書けるやつって、どんな奴だと思う?」
「・・・・・俺は書けますね。」
オーランドがハッっと気がついたような顔をする。
「あれ、意外と少ないかも。何年か第4に勤めてて、しかも直接手紙を見る立場。え、数えられるかも。ジョーイと、パウエルと、去年退団したラルフの旦那と。・・・・・俺が入団する前のOBはさすがに分からないすけど。前団長のハリー・ヘッツェンも書けるっちゃ書けるかな。」
「第4の関係者・・・・・か。」
「なんかヤバそうっすね。引き返しますか。」
「危なそうだからって騎士団が逃げてどうすんだ。」
「・・・・っすよねー。」
改めて地図を広げる。
今第4騎士団が展開している場所は、盗賊が出ると情報のあった山から結構距離がある。
襲撃を警戒して、村は避け、見通しの良い平野で食事を摂っているところだ。
「まずこれが罠だとして。情報のあった山に敵が律儀にいるなんてこと、ねーよな。」
「まあ、それじゃあ罠になりませんからね。」
タレコミのあった山にそのまま敵がいたら、それは罠ではなくただの正面衝突である。
「もし罠と気が付いていなかったら、いつもの第4ならどうやって行動する?」
「・・・・・・。」
オーランドは、しばらく地図を見つめて、考えている様だった。
ローガンは急かすでもなく、ゆったりと話し出すのを待つ。
「俺なら、盗賊に見つからないように、まず斥候を出します。この辺とこの辺に見張りがいそうだ・・・と思うだろうから・・・。」
説明しながら、地図に書き込んでいく。
「この3方向から行くように、指示しますね。」
「・・・・この道通れるか?」
「通れるかどうか、探らせます。」
「おう、続けてくれ。」
「盗賊を発見したら、その人数にもよりますけど、いくつか小隊を出して、敵に気づかれないように先行させて、背後を取る。」
「定石だな。」
「先遣隊が配置についたら、本隊が、最高速度でガーっと街道を走り抜けて・・・・。」
地図の道のどまんなかに、ガーっと勢いよく矢印を書き込んでいくオーランド。
「先遣隊が足止めしているうちに、一気に襲います。」
「それが山に盗賊がいた場合の、オーランドの行動か。」
「はい。」
「ハリー前団長ならどうする?」
「俺に作戦立てさせますね。」
まあ、自分で作戦立てたことにするだろうけど、というオーランドのつぶやきは、聞かなかったことにしておこう。
「・・・・・なるほど、この前提でいこう。じゃあ次に、この計画でやってくる第4騎士団を罠に嵌めるには、どうするか考えると・・・・・・・。」
様子を探る斥候は見逃されるだろう。盗賊がいたという情報を、本隊に持ち帰ってもらわないと困るからだ。しかし先遣隊は、配置について合図をするまでは見逃されるかもしれないが、その後囲まれて潰されるだろう。
と、いうのがローガンとオーランドの意見だった。
本隊が襲撃される場所は大体予想できる。相手が何者か分からないが、王国騎士団が1団まるごと来ているのだ。予想できていれば、遅れはとらない。
「かといって、勝っても騎士何人も死んでちゃあ、困るからな。相手の規模を見て、ある程度以上ならすぐ第1騎士団へ連絡。オーランド、本隊を任せた。」
育成に何年もの歳月と莫大な資金が掛かる騎士は、国の財産だ。壊滅寸前で勝っても負けのようなものだ。
「はい。・・・・・え?ローガン団長はどうするんですか?」
――――まさか高みの見物か・・・・?
前任のハリーに散々な目に合わされたオーランドは、少々疑心暗鬼気味だった。
「あん?先遣隊で、潰されねーように踏ん張るに決まってんだろ。」
「・・・・・。」
オーランドは、しばらく言葉が出なかった。
「・・・・先遣隊は、危険です。」
一応合図をすると同時に逃げ出す手はずになっているが、犠牲は覚悟する必要がある。
そんな役割を、団長にやらせるわけにはいけない。
「危険だから俺が行く。俺がなんで平民出身で、今こんな地位にいるか、知らねーわけねーよな?」
貴族出身者も多くいる騎士団の中で、頭が悪いわけではないが、特別に切れるわけでもないローガンが団長になった理由。
圧倒的な、武力。
「『猛獣のローガン』。」
「そういうこった。・・・・・・ああ、そうだオーランド。お前いっつも貧乏くじ貧乏くじ言ってるけど、とんでもねーぞ。」
「・・・・??」
なぜここでいきなり貧乏くじの話が出てくるのだろう。
そりゃあ子爵家の6男なんかに生まれて、いつも貧乏くじを引かされて生きてきたが。
「お前誰も持ってない、黄金のくじ握り締めて生まれてきてるぜ。親御さん達に感謝するんだな。」
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