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6.シロクマぐらい大きく育て

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「ご飯は小盛りでいいんだったな」

 目の前に、ほかほかしたご飯が置かれる。さっと炒った胡麻が混ぜ込んであるやつだ。ついでに野菜の素揚げとハーブ塩(そのハーブは依田さんが水耕栽培したものだ)、漬物、肉じゃが。ちょっとハイソなお母さんですか?

 私たちが座っているこのテーブルと椅子にしたところで、依田さんのお手製だ。敷いてあるランチョンマットには一枚ずつ異なる刺繍が入っている。

 足元には毛糸を縫い込んだ分厚いカーペット。毎日洞窟が削られて、いつの間にか増えていく新たな部屋。今では水路と魔導具を完備した立派なお風呂とシャワールームまであるのだ。

「恐ろしい……最強って恐ろしい」
「何がだ。とにかくお前は、余計なことを考えていないで、療養と体力作りに努めなさい。少食なのは仕方がないが、少しずつ食べられる量を増やさないとな」
「依田さん、私、全然運動してないんで太りそうなんですが……」
「むしろ太るべきだろう。シロクマぐらい大きく育て」
「それは無理なんじゃないですかね?」

 依田さんはとにかく私に食べさせようとするのだ。そして、私に働かせようとしない。その結果、私は一日中シロクマの腹に埋もれてダラダラと過ごし、依田さんが作るご飯をひたすら食べ、たまに白猫と遊んでいる。

(人をダメにする四天王だ……)

「いいか、四天王最弱のお前は、弱いのだから私に世話を焼かれろ。それがお前の役割だ」
「そういうものでしたっけ……?」

 頼りない声で疑問をのぼせかけて、私はハッとした。

 なんで依田さんがこんなに変わってしまったのか、定められた道から堂々とドロップアウトしてしまったのか。私と何か関係がありそうなことを仄めかしていたから、ずっと不思議に思っていたのだけれど。

(ひょっとして、私が「四天王最弱」だから?)

 私が弱すぎて、世話を焼く甲斐がありすぎたから。依田さんの「尽くしたい欲」のスイッチを入れてしまったのでは。その結果、依田さんが大きく道を踏み外すことになってしまった?

(依田さんが幸せになるなら、それでいいんだけども)

 依田さんが「四天王最弱」に食い付き過ぎなのは薄々感じている。ひょっとして私、「最強ホイホイ」なのでは?

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