次男は愛される

那野ユーリ

文字の大きさ
上 下
76 / 141

第76話

しおりを挟む
 それほどに佐奈にとっては、三國という男が認められなかったのだ。
「とりあえずマジでやめるわ。バイトで遅い日もあるのに、それ以外の日まで、こうやって飯の用意も遅くなるのは悪いし、一気に片付かねぇもんな。ごめん」
「それは……。でもほんとにいいのか?」
 そう望んでいるくせに、あたかも優作の意思を尊重している真似。
 いい子でいたい。そんな自分に佐奈は辟易としたが、今は仕方ないと自分を擁護した。
「ああ、俺は単に気晴らしをしたかっただけ。その時にちょうど三國が声を掛けてきただけだしさ」
「気晴らし……?」
 佐奈の問いに、優作は不意に表情を硬くした。
「佐奈」
「な、なに?」
 空気が少し張り詰める中、お互いの視線が絡み合う。外したいのに紺碧の目から逃れられない。
「この間言ってた、好きな奴のこと」
「好き……な奴?」
 これは優作が熱を出した翌日、佐奈が怒鳴った時の話だろう。おそらくあの日の夕方、優作が佐奈に問おうとしていたことはこの事だった。それをいま、再び持ち出してきた優作の真意とは一体何なのか。佐奈には全く見当もつかないことだった。
「まだそいつのことで悩んでるのか?」
「え?」
「佐奈がずっと元気なかったのは、そいつのことで悩んでたからだろ?」
 相談に乗ろうとしてくれているのか、そうでないのかが分からない程に、すっかり優作の顔は不満そうに眉間にシワが寄ってしまっている。
「ちょ、ちょっと待って! オレ好きな人で悩んでるなんて言った?」
「でも、否定しなかった」
「あれは……売り言葉に買い言葉じゃないけど、あの時はちょっと頭にきたからそう言っただけで……」
「じゃあ好きな奴はいないのか?」
 優作は佐奈から視線を外さす椅子から腰を上げると、佐奈の傍に立ち見下ろしてきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話

タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。 「優成、お前明樹のこと好きだろ」 高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。 メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

解せない王子のことなんか

ぱんなこった。
BL
昔から目付きが悪いと言われ喧嘩を売られることが多かったヤンキー男子高校生、日内詩乃也(ひうちしのや)18歳。 中学から高校まで喧嘩は日常茶飯事で、学校でも周りから不良扱いされ恐れられていた。 そんなある夜。路地裏のゴミ箱にハマっていたところを、同じ高校の1つ年下内石波璃(うちいしはり)に目撃される。 高校でも有名な一流企業の息子で優等生の波璃と、ヤンキーで問題児の詩乃也。全くタイプが違う接点の無かった2人だが…。 ゴミ箱にハマって抜け出せない上に他校のヤンキーと警官に追いかけられていた詩乃也に、波璃は怖がるどころか「助けてあげるから僕と付き合ってほしい」と申し出て… 表紙/フリーイラスト ヒゴロ様

貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話

タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。 叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……? エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

俺の彼氏

ゆきの(リンドウ)
BL
26歳、役所勤めの榊 哲太は、ある悩みに頭を抱えていた。それは、恋人である南沢 雪の存在そのものについてだった。 同じ男のはずなのに、どうして可愛いと思うのか。独り占めしたいのか、嫉妬してしまうのか。 挙げれば挙げるほど、悩みは尽きない。 リスク回避という名の先回りをする哲太だが、それを上回る雪に振り回されてー。 一方の雪も、無自覚にカッコよさを垂れ流す哲太が心配で心配で仕方がない。 「それでもやっぱり、俺はお前が愛しいみたいだ」 甘酸っぱくてもどかしい高校時代と大人リアルなエピソードを交互にお届けします!

処理中です...