次男は愛される

那野ユーリ

文字の大きさ
上 下
25 / 30

第25話

しおりを挟む
「ちょっと……いや、かなりビビった」
「え?」
 唐突にそう言う倉橋に、佐奈は意味が分からず僅かに首を傾げた。
「深山のお兄さん」
「優作がどうかしたのか?」
「いや……近くで見る迫力もそうだけどさ、最初俺の存在なんて全く眼中にない感じだったのに、さっきチラリと目が合ってさ。なんつーか迫力美形の一瞥の凄さを思い知ったというか……」
 初めて怖気立ったと倉橋は最後に溢していた──。

 慎二郎が風呂に入っている間、リビングでテレビを見ている優作の傍へ佐奈が行くと、優作は隣に座れと真っ白なソファを軽く叩いた。佐奈は素直に頷いて隣に腰を下ろす。
 組まれた長い足を見つめ、そして気付かれないよう佐奈は徐々に視線を上げていった。
 長くしなやかな指に、男らしく手の甲に浮いた血管。西洋の血が濃いだけに、少し鍛えただけで高校生ながらも完璧な肉体だ。
 佐奈の鼓動は次第に速くなる。そしてそっと優作の顔に視線を向けた瞬間、佐奈は声を上げそうになった。
「どうした? そんなに全身眺めたりして」
「あ……いや……その、優作の身体いいなぁって……っ!?」
 どぎまぎする佐奈の手が握られたかと思えば、優作の逞しい胸板に手を置かれる。驚くなんてものではなかった。
「ほら、中学ん時よりだいぶ厚みが増しただろ?」
「う、うん! す、すごい!」
 最後に優作の身体に触れたのは、優作が中学二年の時。あの時も中学生にしては出来上がりつつある身体だった。だが今の優作はその当時と比べ物にもならない。佐奈の貧弱な身体は、本当に男なのかと疑うものに反して、厚く男らしい強靭な肉体。素直に羨ましいと、佐奈は感嘆のため息を吐き出した。
 もっと触れていたが、これ以上優作に触れていると佐奈の心臓が限界を迎えそうだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

恋なし、風呂付き、2LDK

蒼衣梅
BL
星座占いワースト一位だった。 面接落ちたっぽい。 彼氏に二股をかけられてた。しかも相手は女。でき婚するんだって。 占い通りワーストワンな一日の終わり。 「恋人のフリをして欲しい」 と、イケメンに攫われた。痴話喧嘩の最中、トイレから颯爽と、さらわれた。 「女ったらしエリート男」と「フラれたばっかの捨てられネコ」が始める偽同棲生活のお話。

ド天然アルファの執着はちょっとおかしい

のは
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。 【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】

その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい

海野幻創
BL
「その溺愛は伝わりづらい」の続編です。 久世透(くぜとおる)は、国会議員の秘書官として働く御曹司。 ノンケの生田雅紀(いくたまさき)に出会って両想いになれたはずが、同棲して三ヶ月後に解消せざるを得なくなる。 時を同じくして、首相である祖父と、秘書官としてついている西園寺議員から、久世は政略結婚の話を持ちかけられた。 前作→【その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました】 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/33887994

侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます

muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。 仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。 成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。 何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。 汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

目撃者、モブ

みけねこ
BL
平凡で生きてきた一般人主人公、ところがある日学園の催し物で事件が起き……⁈

花婿候補は冴えないαでした

BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

魔性の男は純愛がしたい

ふじの
BL
子爵家の私生児であるマクシミリアンは、その美貌と言動から魔性の男と呼ばれていた。しかし本人自体は至って真面目なつもりであり、純愛主義の男である。そんなある日、第三王子殿下のアレクセイから突然呼び出され、とある令嬢からの執拗なアプローチを避けるため、自分と偽装の恋人になって欲しいと言われ​─────。 アルファポリス先行公開(のちに改訂版をムーンライトノベルズにも掲載予定)

処理中です...