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第93話
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ヘンリーとエイダンが素早くミカエルとアリソンの前に出るが、すぐに四人ともが驚くことになった。ライカン全員が突然跪いたからだ。
ミカエルは思わずアリソンを窺い見るが、アリソンの目は真っ直ぐにライカンに据えられていた。
「王妃様、我々は貴方がとても気に入りました。貴方の為ならどんな時でも力となり、馳せ参じます」
頭を垂れるライカンらに、ミカエルは驚きながらも喜びで興奮した。ミカエルの何処が気に入ったのかは知らないが、味方が少しでも増える事はとても嬉しいことだからだ。
「ありがとうございます! あなた方のお力をお借り出来る事は、とても心強いです」
アリソンが何も口を挟まないと言うことは、彼も容認してくれたという事だろう。王が目の前にいながら、王妃にのみ敬意を表することは問題ではあるが、ヘンリーらも口を挟むことはしなかった。
「私はミカエルと言います。ミカと呼んでください。貴方のお名前を伺っても?」
「王妃様に先に名乗って頂くなど……恐縮です。僭越ながら、我々もミカ様とお呼びさせて頂きます。私の名はアルベルトと申します。また何かございましたら、いつでもお呼びください。空を旋回している鳥獣が教えてくれますので。では、失礼致します」
アルベルトは名乗ると腰をゆっくりと上げた。後方にいるライカンらも腰を上げ、一斉に頭を下げると瞬時に狼男の姿となり、駆け出して行った。最後にアルベルトもミカエルとアリソンに深く頭を下げ、去って行った。
ミカエルは暫く呆然と彼らが消えた方角を眺める。そして溜めていた肺の空気をゆっくりと吐き出した。
「あのライカンスロープが、ミカ様につくと……」
エイダンの声には心からの驚きが現れていた。ヘンリーも呪縛から解き放たれたように、エイダンへと頷いた。
「陛下……あのアルベルトという男」
「あぁ。初めは我もライカンの賊だと思っていたが……」
「思ってたけど?」
ミカエルはたまらず話に割って入った。
「あの男は、全てのライカンを束ねる長だ」
「えぇ! それって……」
「ライカンスロープ一族が、こちら側についたという事だな。と言うより、ミカについたが正解だ。ヴァンパイアや、ライカンは魔界に拠点はあるが、独自の種族というスタイルをとっている。だから奴らは王族に敬意を持つことがないし、関わってくる事もない。そのライカンの長がミカに敬意を表した……」
ミカエルは驚きやら何やらで、たくさん言いたい事があるのに言葉に出来ず、口をパクパクさせている。
アリソンにそっと「落ち着け」と背中を摩られ、ミカエルはようやく少し落ち着くことが出来た。
「い、一体オレの何が気に入ってくれたんだろ……」
「そういう所ですよ」
エイダンが優しい笑みを向けて言う。
「そういう所?」
「はい。驕り高ぶらない対等な姿勢。奴らに頭を下げる王族なんていませんしね」
「あ……」
王族の品位を落としたかとミカエルは青くなるが、エイダンはそうではないと笑って首を振った。
ミカエルは思わずアリソンを窺い見るが、アリソンの目は真っ直ぐにライカンに据えられていた。
「王妃様、我々は貴方がとても気に入りました。貴方の為ならどんな時でも力となり、馳せ参じます」
頭を垂れるライカンらに、ミカエルは驚きながらも喜びで興奮した。ミカエルの何処が気に入ったのかは知らないが、味方が少しでも増える事はとても嬉しいことだからだ。
「ありがとうございます! あなた方のお力をお借り出来る事は、とても心強いです」
アリソンが何も口を挟まないと言うことは、彼も容認してくれたという事だろう。王が目の前にいながら、王妃にのみ敬意を表することは問題ではあるが、ヘンリーらも口を挟むことはしなかった。
「私はミカエルと言います。ミカと呼んでください。貴方のお名前を伺っても?」
「王妃様に先に名乗って頂くなど……恐縮です。僭越ながら、我々もミカ様とお呼びさせて頂きます。私の名はアルベルトと申します。また何かございましたら、いつでもお呼びください。空を旋回している鳥獣が教えてくれますので。では、失礼致します」
アルベルトは名乗ると腰をゆっくりと上げた。後方にいるライカンらも腰を上げ、一斉に頭を下げると瞬時に狼男の姿となり、駆け出して行った。最後にアルベルトもミカエルとアリソンに深く頭を下げ、去って行った。
ミカエルは暫く呆然と彼らが消えた方角を眺める。そして溜めていた肺の空気をゆっくりと吐き出した。
「あのライカンスロープが、ミカ様につくと……」
エイダンの声には心からの驚きが現れていた。ヘンリーも呪縛から解き放たれたように、エイダンへと頷いた。
「陛下……あのアルベルトという男」
「あぁ。初めは我もライカンの賊だと思っていたが……」
「思ってたけど?」
ミカエルはたまらず話に割って入った。
「あの男は、全てのライカンを束ねる長だ」
「えぇ! それって……」
「ライカンスロープ一族が、こちら側についたという事だな。と言うより、ミカについたが正解だ。ヴァンパイアや、ライカンは魔界に拠点はあるが、独自の種族というスタイルをとっている。だから奴らは王族に敬意を持つことがないし、関わってくる事もない。そのライカンの長がミカに敬意を表した……」
ミカエルは驚きやら何やらで、たくさん言いたい事があるのに言葉に出来ず、口をパクパクさせている。
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「い、一体オレの何が気に入ってくれたんだろ……」
「そういう所ですよ」
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「そういう所?」
「はい。驕り高ぶらない対等な姿勢。奴らに頭を下げる王族なんていませんしね」
「あ……」
王族の品位を落としたかとミカエルは青くなるが、エイダンはそうではないと笑って首を振った。
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