魔王は天使に跪く

那野ユーリ

文字の大きさ
上 下
47 / 110

第47話

しおりを挟む
「ふぅ……気持ちいい」
 あれから一時間後、ようやくアリソンから解放され、動ける身体になった美風は湯船に身体を沈めている。少しアナルが沁みたが、それほど支障はない。
 一時はどうなるかと思われたが、美風の生気も吸われた感覚もない間にアリソンは回復した。セックスの偉大さってものを知った気がした。
 今しみじみと思うのは、アリソンのためとは言え、よくセックスが出来たなということ。あの時は必死だった事もあるが、途中からは自分が快楽を貪っていた。相手は悪魔で男だというのに、嫌悪感などまるで無かった。
 美風の性的指向は女性を恋愛対象と見ている。誰かを好きになった事はないが、友人らと男女が絡むアダルトビデオを見て、思春期ならではで盛り上がったものだ。
 それなのに男と出来たのは、性別や種族の違いなど関係なくアリソンだったからだ。生気を目的としないキスをされた時には、今までに感じたことがない程に、気持ちも高揚した。心が満たされた。
「それって……そういうこと……だよな」
 そう自覚した途端、心臓が早鐘を打つ。美風は湯船のお湯を両手で掬って、顔に勢いよくぶっかける。
「そっか……オレってアリソンの事が好き──」
「ミカ」
「はっ!?」
 心臓が口から飛び出る程にビックリした。逃げ場のない風呂場であたふたとする。
「な、なに?」
(落ち着け……今の聞かれてないよな?)
「やはり、一緒に入ってもいいか? 背中を流してやりたいし、中のものを掻き出す手伝いをさせてほしい」
 さっきの告白を聞かれなかったと安心したが、アリソンがまだ諦めていないことに美風は額を押さえた。
「何度も言ったけど、大丈夫だって。中のものはもう掻き出したし。それに一緒に入ってアリソン我慢出来るのか?」
 美風の全身を隅から隅まで触れたというのに、全く飽きる様子がなく、アリソンはさっきまでずっと美風に触れていた。やっと解放されて一息ついているのに、今の時間くらいは一人にしてほしい。
「我慢……出来る」
(めちゃくちゃ自信無さげだろ!)
「ムリ。今はゆっくり一人の時間を堪能したいの。まぁ、我慢が千%出来るってならいいけど?」
 我ながら意地悪いなと思いながらも、これくらい言わないと今のアリソンは引いてくれない。
 普段のアリソンなら直ぐに聞き分けてくれるのだが、どうも今のアリソンは美風をとことん甘やかしたいようで、少し頑固にもなっている。
「ミカ……」
「あと十分くらい我慢してくれよ……。直ぐに出るから」
「……分かった」
 磨りガラスの向こう、アリソンの姿が消えていくのを見届けた美風は湯船から出た。
「なんか大型犬みたいだな」
 一人小さく呟いて美風はたまらず笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません

ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。 俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。 舞台は、魔法学園。 悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。 なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…? ※旧タイトル『愛と死ね』

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

束縛系の騎士団長は、部下の僕を束縛する

天災
BL
 イケメン騎士団長の束縛…

処理中です...