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イレイラ様がやって来る!

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 ノートを写し終えた俺達は、ルノアに借りたノートを返す。と言うよりも、気絶しているので、黙ってルノアの鞄に突っ込んだ。

 「さて、ノートも写し終えたし。何をするかぁ」

 「先ずはルノアを起こさないと、ダメじゃないの?」

 ああ、確かにそうだなぁ。って!

 「リタ。いつの間に帰って来たんだ?」

 「ついさっきだよ。それよりも、こっちに彼女が来たよ」

 「彼女?」

 彼女って、一体誰だ?

 「失礼するよコウヤくん」

 そう言って入って来たのは、何とイレイラ王女様だった。

 「えっ!?」

 どうしてここにいるんだ? 俺は向こうの世界に行ってないのに。

 そんなことを思っていると、リタが俺の耳元で話かけて来る。

 「ティアラ様達が、そろそろ帰った方がよさそう。 ってことで彼女を連れて来たの」

 ああ、女神様達の判断で連れて来たのか。しかし、何で今なんだ? まだ主犯格を捕まえられてないこの状態だぞ。

 「危険だから、戻って貰おうか」

 「う~ん。イレイラも これ以上迷惑を掛けられない。 って言っているの。もちろん私だって説得をしたよ。でも・・・・・・」

 「イレイラ? まさか、、こちらにイレイラ王女様がいらっしゃるのですか?」

 「「あっ!?」」

 マズイ、今の会話を聞かれたかも。

 「イレイラ? ここにいるの?」

 「いや、そのぉ~・・・・・・ねぇ?」

 「ここには、いませんよ」

 セリアがそう言ってフォローをしてくれるが、カーシャさんが疑いの眼差しを向けてくる。

 「リタ様が本人と話したようなことを、仰っていたような気がしますが。私の聞き間違いでしょうか?」

 「あ。そうですね」

 「本当にですか?」

 「ほ、本当ですから。顔を近付けないで下さい」

 つーか、目が怖い。

 「コウヤくん。もう私のことを匿わなくていい」

 「イレイラ様!」

 そう言って部屋に入って来るイレイラ王女様を、驚いた顔をして見つめているアンリネットさんに対して、カーシャさんは やっぱり。と言いたそうな顔で納得してようすを見せてる。

 「ご無事で何よりです。イレイラ王女様」

 「ああ、コウヤとオルコス家の者達が、私のことを匿ってくれていたからな」

 「・・・・・・そうですか」

 うわ。何で正直に言わなかったんですか? って顔で見つめて来てる。気まずい。

 「コウヤくんを責めないでやってくれ。匿って欲しいと2人に頼んだのは、私自身だからな」

 「しかし、我々に内密に教えて下さっても、よかったのではないでしょうか?」

 「そう思いたいのだが、何処で情報が流出するのかわからなかったからな。本当にすまなかった」

 「いいえ。アナタ様が謝ることはありませんよ」

 カーシャさんはそう言うと、部屋の隅へと移動した。

 「アンリネット。久しぶりだな」

 「久しぶり。ここで何をしてたの?」

 「普通にお世話なっていただけさ」

 「・・・・・・ホント?」

 嘘を言っているんじゃないの? と言いたそうな顔で、アンリネットはイレイラ王女様の顔を見つめる。

 「まぁ、コウヤくんにも世話になったのは事実だ。もしかしたら、お前よりも親しくしているかもな」

 イレイラ王女様はそう言うと、俺の腕に手を回して身体をピッタリ付けた。

 「ムゥッ!?」

 これにはアンリネット様も反応したらしく、すぐに立ち上がった。

 「そんなんだから、父親に困らせるんだ。淑女らしく我慢してみるんだ」

 「我慢してる」

 「反射的に立ち上がって怒る淑女は、お前しかいないぞ」

 「ムゥ~・・・・・・」

 痛いところを突かれた。と言いたそうな顔で席に座るが、俺としてはセリアの方が気になる。

 「そうですね。アナタ様の仰る通りですが、コウヤくんが困っているので離れて下さい」

 何だろう。セリアの言葉に棘を感じるのは、俺だけだろうか?

 「おっと失敬。すまないなコウヤくん」

 「いえ、俺は気にしていませんが、大丈夫なんですか? 出て来ても?」

 「ああ。アンリネット家は王族側の人間だから、大丈夫だろう」

 「そうですか」

 それなら何も言うことはないな。

 「コウヤくんがノートを写している間に、父上のところに手紙を出したから、恐らくもう少し経ったら、護衛が来るんじゃないか?」

 あ、そんなことまでしてたのか。それよりも。

 「今回は大丈夫なんですか?」

 「ああ、恐らくこの前よりも厳重な警備をしてくれると思うから、心配しなくていいだろう」

 本当にそうなのか?

 「そんなに心配だったら、コウヤがイレイラを送って行ってあげればいいじゃん」

 「それは名案だな。頼めるか?」

 「ああ~。それはぁ~・・・・・・」

 セリアとアンリネット様が、行っちゃダメと言いたそうな顔で見つめて来ている。
 そのようすに気付いたイレイラ王女様は、可笑しいのか口元を緩めた。

 「気が変わった。やはりここは、信用出来るコウヤくんに護衛の1人を頼もう。
 コウヤくんを父上に紹介したいしな」

 「父上に?」

 「紹介?」

 2人はその言葉を言った後、ぎこちない動きで俺の方を見つめて来る。

 「・・・・・・コウヤくん」

 「・・・・・・コウヤ」

 絶対に断ってくれ。って言いたいんですね。でも立場上言えないんだよな。

 「う~~~ん・・・・・・あれ? アタシ何で寝てるの? てか、あれ? 何でここにイレイラ王女様がここにいるの? 向こうの、ッ!?」

 ルノアはセリアの手によって、口を塞がれた。

 「ルノア!」

 ルノアは周りを見て、誰がこの場にいるのかを思い出したか、セリアの顔を見つめながら頷いた。

 危なかったぁ。俺自身もヒヤッとしたぞ。

 「向こう? やはりイレイラ王女様は、このお屋敷で匿われてた訳ではないのですね。一体どちらにいらっしゃられてたのですか?」

 カーシャさんのその言葉に、俺とセリア。それにリタにイレイラ王女様はジト目でルノアを見つめる。見つめられている本人は、申し訳なさそうな顔で俺達に頭をさせる。

 何とか誤魔化すしかなさそうだ。

 「この家とは別に買っている家で、匿っていたんですよ」

 「そうそう。俺達はイレイラ王女様のようすを気にして、ちょこちょこ行っていたんだよな?」

 「そうだね! そこで一緒に遊んだりしてたもんね!」

 「アタシも、最初案内されたときはビックリしてたわ!」

 おい元凶。もう少しまともに演技が出来ないのか?

 「イレイラ。本当?」

 「ああ、彼らにはお世話になったよ」

 「・・・・・・そう?」

 うっ!? まだ疑っているよ。

 「それよりも、キミ達に話しておかないといけないことがあるから、聞いてくれないか?」

 「あ、はい! わかりました!」

 必殺の話題逸らし。

 「改めて。キミ達本当にお世話になった。心から感謝をするよ」

 「いえいえ、とんでもないです」

 「そうですよ。我々は当然のことをしたまでですから、気にしないで下さい」

 「そう言ってくれると有り難いな。主犯格の方がようやくわかったようで、明日辺りに捕まえに行くそうなんだ」

 おお、それはよかった。って、ちょっと待ってくれ!

 「何で主犯格が捕まるって、知っているんですか?」

 ずっと俺の家に泊まっていた筈だし、何よりも手紙とかを渡されてもない。

 「オルコス家で預かっていた手紙を、読ませて貰ったんだ。ほら、これが父上の文だ」

 そう言って渡して来た手紙の内容を確認する。

 「セリア。王印は間違いない?」

 「うん。間違いなく帝王しか使えない印を使っているから、この手紙を本物だと思うよ」

 「王印はたった一つしかないし、使ったら使ったで重罪だから、偽物を作って使用する人先ずいないと思うわ」

 「そうか。それならいいけど」

 2人がそう言うのなら、この手紙は信じてよさそうだな。

 そう思っていると、マーガレットさんが部屋に入って来た。

 「イレイラ様。迎えの者がやって来ました」

 「うむ、そうか。今から向かう」

 「あ、俺も見送りに付いて行きます」

 「わ、私も!」

 「アタシも!」

 俺に便乗している気がするが、気にしないでおこう。

 「わかった。付いて来ていいぞ」

 こうしてイレイラ王女様と共に、護衛が待っている外へと向かうのであった。
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