上 下
106 / 111

無能な兵士がしつこい件について!

しおりを挟む
 ウンザリした表情を見た兵士は、何を思ったのか知らないが一歩前に出て来た。

 「もう一度聞こう。イレイラ第3王女様が何処にいるのか知っているか?」

 「知りません」

 俺の答えに不快感を覚えたのか、顔を近付けて来た。

 「本当に知らないのか?」

 「すまないが、本当に知らない」

 そう言ったら何故か胸ぐらを掴んで来た。

 「嘘を吐くなよクソガキィ! テメェが何処かに連れて行ったのはわかっているんだよ!」

 「ッ!?」

 勘付いているのか?

 「コウヤ!」

 心配したようすで俺に駆け寄るが、手を出して静止させる。

 「どういうことですか? 俺が連れて行ったって言うのは?」

 「お前がオルコス家に行ったと聞いているんだぞ!」

 「襲われたときにオルコス家に連れて行ったのは俺ですが、その後はオルコス家の人達に預けたので、その後はどうなったのか知らないです。
 その話を聞いていないのですか?」

 「・・・・・・」

 俺の言葉が癇に障ったのか、歯軋りを立てた。

 「いい加減手を離してくれませんか?」

 「・・・・・・チッ」

 舌打ちをした後、乱雑に手を離してくれた。

 「お前が攫ったのはわかっているんだ。絶対に捕まえてやる!」

 兵士は睨め付けながらそう言うと、学園から出て行ってしまった。

 「何で俺が誘拐したってことになっているんだ?」

 「うん。お母様が言うには陛下から説明を受けているって。それなのに・・・・・・・」

 「ミヤマくん!」

 その掛け声と共にアニス学園長とルコア先生が走ってやって来た。

 「コウヤくん、大丈夫か? 怪我はないか?」

 「はい、大丈夫です。胸ぐらを掴まれただけなので、怪我はないです」

 一応何か仕込まれていないか服を叩いたり、ズボンのポケットに手を突っ込んで変な物が入っていないか確認をする。

 「うん。何か仕込まれては無さそう」

 「アイツらはただの兵士だから、そこまで器用なことは出来ないさ。それよりも私に付いて来てくれ。
 セリアくんとリタくんもだ」

 「はい」

 「わかったよ!」

 そう返事する2人と共にアニス学園長の後に付いて行く。

 「入ってくれ」

 理事長室へと入って行く。

 「長い話になるかもしれないから、そこに座ってくれ」

 アニス学園長の言われた通り、椅子へと座った。

 「ルコア先生は教室の方に行ってくれ。授業の方は・・・・・・ルノアくんがノートを取ってくれるから心配しなくていいと思う」

 「わかりました。それじゃあ、また後でね」

 「さて、何故キミがあんなことをされたのか説明をしないといけないな」

 アニス学園長はそう言うと、資料を渡して来た。

 「これは?」

 「読んでみたらすぐにわかる」

 アニス学園に言われた通り、資料に目を通して行く。

 「・・・・・・ん? 陛下はイレイラ王女様は安全な場所に連れて行ったと説明されているが、我々にはその場所を教えてはくれなかったぁ?」

 「もしかしたら脅されている可能性があるので、真実なのかどうかわからないので、調査をして貰えないか・・・・・・ん?」

 この資料。何か違和感を感じるなぁ。

 「一応説明するんだが、兵士の1人に渡された手紙なんだ」

 「その手紙がどうしたんですか?」

 「うんうん」

 リタも同意した顔で頷いている。

 「誰もがそう思う筈だろう。しかし、その送り主に問題があるんだ」

 「送り主?」

 ルド・オーランド と名前が書かれているが・・・・・・。

 「この人、知ってるか?」

 「うん。陛下と仲がいい宰相なんだけど・・・・・・まさか?」

 「いや、ルノアくんが考えているような、宰相が黒幕ってことではない」

 ん? 宰相が黒幕じゃない?

 「つまり、どういうことなの?」

 「宰相の名を偽って、コウヤくん達に差し向けた者がいた。ってことさ」

 「「「ッ!?」」」

 まさか、そんなことをするとは。

 「一体どうして?」

 「どうしてもイレイラ王女様を探し出したいって人がいる訳だ。しかも手紙を受け取った兵士は何を勘違いしたのかわからないが・・・・・・」

 「イレイラ王女様を見つけ出せば、手柄になるって考えた」

 「しかも、それに同調するように他の兵士達も動いたって訳か」

 出世を考えて動いていたのか。

 「そういうことだ。一応手紙の内容については調査をしているらしいよ」

 「えっとぉ~。自分の身の心配の方は?」

 「無論、今まで以上に心配をしてくれ。もしかしたら直接キミ達に何か仕掛ける可能性があるから」

 そっかぁ。それはヤバイなぁ。

 「私からの話は以上だ。話がなければ教室へ向かってくれ」

 「・・・・・・はい」

 「お邪魔しました」

 「またね!」

 それぞれ挨拶をしてから部屋を出た。

 さて、どうするべきかなぁ。

 「コウヤくん」

 彼女は心配していそうな顔で、俺の顔を見つめて来る。

 「そんな顔をしなくても大丈夫だって。心配をするなよ」

 セリアの頭に手を置いて撫でたら、目を細めた。

 「だからセリアは自分の心配をしてればいいさ」

 「・・・・・・うん」

 よかった。不安を取れたようで。

 「ムゥ~!」

 むっ!? この声は!

 「アンリネットさん!」

 しかも不満そうな顔させながら、洸夜達の元へやって来る。

 「ムッ!」

 アンリネットさんはそう言いながら、頭を突き出した。

 「えっとぉ。どうしたんだ?」

 「お嬢様はミヤマ様に頭を撫でて貰いたいのですよ」

  いつものことながら、何の前触れも無く来ますね。

 「う~ん」

 もしこの場で撫でたら、誰かに何か言われないか?

 「ああ~・・・・・・また今度ってことで」

 「ダメ、今がいいの」

 やらなきゃイヤ! と言わんばかりに、アンリネットさんが左腕に抱き付いて来た 。

 「ッ!?」

 そして何故か反対側の腕にセリアが抱き付いて来て、アンリネットさんを見つめる。

 「その手を離して」

 「イヤです。アンリネット様が離して下さい。私達は教室へと向かわなければなりませんから」

 「・・・・・・そっちが先に離す」

 「アナタ様の方が先です」

 2人はそう言った後、俺を挟んで睨み合いを始めた。

 「とっ、ところで、何でカーシャさん達はここにいるのですか?」

 「そうだよ。ホームルームが続いている筈だよ」

 「私達は学園長に用事があったので、途中で抜けさせて頂きました」

 「そうなんですかぁ」

 用が何なのか気になるが、余計な詮索はいない方がいい。何せ他人事に首を突っ込むのはよくないと俺は思っている。

 「お嬢様、学園長の元へ行きましょう」

 「まだ撫でて貰ってない」

 「それは今度の機会にして貰えればいいじゃないですか。そんなことよりも、ミヤマ様のご実家が何処にあるのか知りたくないのですか?」

 「「「えっ!?」」」

 俺の実家の場所だって?

 「イヤイヤイヤイヤ! 何で俺の実家の場所を聞こうとしているんですか?」

 「ミヤマ様本人に確認をしたいところなのですが、聞いても答えて貰えないと思ったので学園長に確認を取ることにしました」

 うっ!? 確かに俺に聞かれても困るな。

 「ミヤマ様、アナタのご両親はお元気ですか?」

 「元気にしていますよ」

 無論、その実家にいるのだから知っていて当たり前だ。

 「・・・・・・そうですか。ミヤマ様のご両親に是非とも会ってみたいと、アンリネット様が仰るんですよ」

 「そうなのか」

 「うん」

 そんなに俺の両親が気になるのかよ。

 「どうしてコウヤくんの両親に会うのですか?」

 「コウヤの両親に会って、気に入って貰う」

 「気に入って貰う? 何の為に?」

 「コウヤと仲良くなる為に」

 俺と仲良くなる為に?

 何を言っているんだ? と言いたそうな顔をしていると、セリアが青ざめた表情をさせる。

 「もしかして、アンリネットさんは・・・・・・」

 「お、おい。大丈夫か?」

 「長話になってしまいましたね。行きましょうかアンリネット様」

 「・・・・・・うん」

 アンリネットさんは名残惜しそうな顔をさせながら、カーシャさんと共に歩き出したのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

アレキサンドライトの憂鬱。

雪月海桜
ファンタジー
桜木愛、二十五歳。王道のトラック事故により転生した先は、剣と魔法のこれまた王道の異世界だった。 アレキサンドライト帝国の公爵令嬢ミア・モルガナイトとして生まれたわたしは、五歳にして自身の属性が限りなく悪役令嬢に近いことを悟ってしまう。 どうせ生まれ変わったなら、悪役令嬢にありがちな処刑や追放バッドエンドは回避したい! 更正生活を送る中、ただひとつ、王道から異なるのが……『悪役令嬢』のライバルポジション『光の聖女』は、わたしの前世のお母さんだった……!? これは双子の皇子や聖女と共に、皇帝陛下の憂鬱を晴らすべく、各地の異変を解決しに向かうことになったわたしたちの、いろんな形の家族や愛の物語。 ★表紙イラスト……rin.rin様より。

海岸でタコ助けたらスーパーヒーローになっていた。 ~正義の味方活動日記~

はらくろ
ファンタジー
時は二十一世紀。心優しい少年八重寺一八(やえでらかずや)は、潮だまりで難儀しているタコをみつけ、『きみたち、うちくる?』的に助けたわけだが、そのタコがなんと、異星人だったのだ。ひょんなことから異星人の眷属となり、強大な力を手に入れた一八、正義の味方になるべく頑張る、彼の成長をタコ星人の夫妻が見守る。青春ハートフルタコストーリー。 こちらの作品は、他のプラットフォームでも公開されています。

目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星
ファンタジー
十年という年月が、彼の中から奪われた。 目覚めた少年、達志が目にしたのは、自分が今までに見たことのない世界。見知らぬ景色、人ならざる者……まるで、ファンタジーの中の異世界のような世界が、あった。 今流行りの『異世界召喚』!? そう予想するが、衝撃の真実が明かされる! なんと達志は十年もの間眠り続け、その間に世界は魔法ありきのファンタジー世界になっていた!? 非日常が日常となった世界で、現実を生きていくことに。 大人になった幼なじみ、新しい仲間、そして…… 十年もの時間が流れた世界で、世界に取り残された達志。しかし彼は、それでも動き出した時間を手に、己の足を進めていく。 エブリスタで投稿していたものを、中身を手直しして投稿しなおしていきます! エブリスタ、小説家になろう、ノベルピア、カクヨムでも、投稿してます!

妻は異世界人で異世界一位のギルドマスターで世紀末覇王!~けど、ドキドキするのは何故だろう~

udonlevel2
ファンタジー
ブラック会社を辞めて親と一緒に田舎に引っ越して生きたカズマ! そこには異世界への鏡が納屋の中にあって……異世界に憧れたけど封印することにする!! しかし、異世界の扉はあちらの世界にもあって!? 突如現れた世紀末王者の風貌の筋肉女子マリリン!! マリリンの一途な愛情にカズマは――!? 他サイトにも掲載しています。

心の交差。

ゆーり。
ライト文芸
―――どうしてお前は・・・結黄賊でもないのに、そんなに俺の味方をするようになったんだろうな。 ―――お前が俺の味方をしてくれるって言うんなら・・・俺も、伊達の味方でいなくちゃいけなくなるじゃんよ。 ある一人の少女に恋心を抱いていた少年、結人は、少女を追いかけ立川の高校へと進学した。 ここから桃色の生活が始まることにドキドキしていた主人公だったが、高校生になった途端に様々な事件が結人の周りに襲いかかる。 恋のライバルとも言える一見普通の優しそうな少年が現れたり、中学時代に遊びで作ったカラーセクト“結黄賊”が悪い噂を流され最悪なことに巻き込まれたり、 大切なチームである仲間が内部でも外部でも抗争を起こし、仲間の心がバラバラになりチーム崩壊へと陥ったり―――― そこから生まれる裏切りや別れ、涙や絆を描く少年たちの熱い青春物語がここに始まる。

アサの旅。竜の母親をさがして〜

アッシュ
ファンタジー
 辺境の村エルモに住む至って普通の17歳の少女アサ。  村には古くから伝わる伝承により、幻の存在と言われる竜(ドラゴン)が実在すると信じられてきた。  そしてアサと一匹の子供の竜との出会いが、彼女の旅を決意させる。  ※この物語は60話前後で終わると思います。完結まで完成してるため、未完のまま終わることはありませんので安心して下さい。1日2回投稿します。時間は色々試してから決めます。  ※表紙提供者kiroさん

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...