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洸夜の師匠

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 あの魔法の技名が決まってから数日後、遂にセリア達を師範の道場に連れて行く日がやって来た。

 「正直言って、今でも気が進まないなぁ~」

 そう言いつつ階段を上がって行く。

 「ねぇコウヤ。前々から思っていたけど、どうしてコウヤの師匠にセリア達を会わせるのが気が進まないの?」

 「ん? ああ、理由は簡単。師範の修行が厳しいからだよ」

 「修行が厳しい? 修行が厳しいのはセリア達だって理解してると思うよ」

 「そうだがぁ・・・・・・」

 「それよりも、早くセリア達を迎えに行こう!」

 「あ、ああ」

 不安に思いつつもリタと共に転移をすると、 キアャッ!? と言う声が聞こえた。

 え? 俺の家に誰か居たのか?

 そんなことを思いながら目を開いてみると、驚いた顔をしているルノアがそこにいた。

 「おはようコウヤくん」

 「おはようセリア。どうして家の中にいるんだ? 鍵は掛けていた筈なんだか」

 「アニス学園長が私達の為に鍵を空けてくれたの」

 アニス学園長が鍵を空けてくれたってことは。

 「アニス学園長がここに来たのか?」

 「うん、アニス学園長も私達が向こうの世界で修行をすることを知っていたみたいで、 頑張ってくれ。 と言って去って行ったの」

 多分だけど、アニス学園長はゼウス様かティアラ様に話を聞いたんだと思う。

 「・・・・・・そっか。わかった。ここで話すのも何だから、向こうの世界に行こうか」

 「あ、ちょっと待って。玄関の鍵を開いたままだから閉めてないと」

 アニス学園長、玄関開きっぱなしで出て行ったのか。

 仕方ないと思いつつも玄関の鍵を閉めて戻って来る。

 「窓とかの戸締りの方は大丈夫?」

 「アタシ達は窓の方は触ってないから、大丈夫だと思うを」

 「そうか。それじゃあ行こうか」

 取られる物なんてここには置いていないから、開いていても大丈夫だろう。

 「それじゃあ2人共、俺の手に触れてくれ」

 ルノアは向こうの世界に行けるのが楽しみなのかウキウキした顔で俺の手を取り、セリアに関しては頬を染めながら俺の手を握り締めた。
 リタに関しては 早く行こうよ。 と言わんばかりに俺の肩の上でスタンバっていた。

 「【転移】」

 ルノアが驚きの声を上げる中、俺の部屋へとやって来た。

 「何度見ても転移の瞬間がスゴイわぁ~」

 「だよねぇ~! こうキラキラッと輝きに包まれた後に景色が変わるからねぇ~」

 何それ。俺もその光景を見てみたいんですけど。

 「とりあえず2人共、靴を脱いでくれないか?」

 「おっと、そうだったわね」

 「コウヤくんの国では家の中では靴を脱ぐんだったよね。何か変な感じがするけど、床が汚れなくていいかも」

 ルノアとセリアは楽しそうな顔をさせながら靴を脱いだ。

 『洸夜、帰って来たのぉ?』

 「ああ、2人を連れて帰って来た!」

 ドアを開いてそう言うと、何故か母さんが2階に上がって来たのだ。

 「お久しぶり、セリアちゃん。ルノアちゃん!」

 「「お久しぶりです」」

 2人はそう言うと

 「これから道場の方に行くのよね?」

 「はい」

 「礼儀にはうるさい人だから、礼儀に気を付けてね」

 「「はい!」」

 セリア達は元気に返事をしたので、母さんは うんうん。 と頷いた。

 「4人共、怪我をしないよう気を付けてね」

 4人共って何だ、4人共って! 俺とリタは師範に修行をして貰う予定は無いぞ。

 「とにかく、師範のところに行こうか」

 「う、うん」

 「そうね」

 母さんの話を聞いた2人は、ちょっとビビり気味になっている。

 「【透過】」

 リタに関してはいつも通りの顔をしている。まぁ師範に修行をして貰う訳じゃないから、当たり前か。

 リタが透過したのを確認すると、3人を連れて師範が待つ道場へと向かう。

 「コウヤの国ってホント不思議よねぇ~。上には変な線が張り巡らされているし、石の棒が立っているし」

 「電線と電柱のことか」

 前にリタが興味本意で触ろうとしていたから、慌てながら止めさせたことがあった。

 「あれが俺達の生活を支えるからな。リタみたいにイタズラをするなよ」

 「イタズラなんかしてないもん! ちょっと触ろうとしただけだもん!」

 イヤイヤ、高圧電流だから洒落にならない事態になるぞ。

 「ところでコウヤくん、道場まで後どれぐらい?」

 「あの角を左に曲がったところだ」

 「あ、そうなんだ。意外と近いね」

 両親は近くの道場を場所を選んだからな。

 角を左に曲がった途端、3人の顔が驚いた表情に変わる。

 「キャアッ!?」

 「魔物の石像がこっちを向いている!」

 『コウヤ、ウルフよりも恐いよ!』

 「その2体の石像はシーサーと言って、守り神なんだ」

 沖縄のとか言っても通じないと思うから、あえて省略をした。

 「え? これが守り神?」

 「何か、睨んでいるように見える」

 『私には笑っているように見えるよ』

 実際はどっちも合っているからなぁ。

 「お~お~。よく来たなぁ~」

 道場着を着た背の低い老人が歩いて来るのを、彼女達は怪訝そうに見つめていた。

 「あ、師範。ご無沙汰しております」

 「お~、洸夜坊。久しぶりじゃなぁ~」

 「「『師範!?』」」

 みんな信じられないと言わんばかりの顔で師範を見つめる。

 「ああ、紹介するよ。俺に沖縄空手を教えてくれた・・・・・・」

 「スキ有りぃいいいいいいいっ!?」

 「ウワッと!?」

 師範はそう言いながら飛び回し蹴りを俺に噛まそうとして来たので、後に飛んで躱す。

 「何をするんですか師範!?」

 「流石この 英城えいじょう 信一しんいち が認めた3番弟子!」

 「自己紹介の途中で、攻撃をするのは非常識です!」

 「馬鹿者ぉ! 敵はお前の都合ではなく、自分の都合で動くと何度も言った筈じゃ!」

 「都合も何も、アンタは礼儀を弁えろや! って、うわぁ!?」

 今度は手裏剣を投げて来たので、慌てながら避けた。

 「刺さったら警察沙汰になるレベルだぞ、おい!?」

 「安心しろ、先は尖っているが刃は潰しているんじゃ」

 「尖っていれば刺さるわ!!」

 全く、だからここには来たくなかったんだ。

 「あのぉ~・・・・・・コウヤくんの師匠さん?」

 「ん? 何じゃ?」

 「コウヤくんの母親から聞いていると思うのですけど、私達アナタ様に稽古をつけて貰おうと来ました。セリアと、ルノアです」

 「ど、どうも」

 「ああ~、そうじゃった! ワシ名は 英城 信一 この道場の主人じゃ。よろしくのぉ~」

 このクソジジイ。やっと自分で自己紹介したか。

 「話は全部聞いておる。セリア嬢ちゃんがレイピアの腕を上げたくて、ルノアの嬢ちゃんが弓の腕を上げたかったんじゃな?」

 「はい、合っています」

 「伝えた通り道具はこっちで用意しておるから、それを使いなさい」

 「「はい!」」

 「とりあえずワシに付いて来なさい。更衣室へ案内しよう」

 「あ、はい」

 「ありがとうございます」

 「洸夜、お前さんは道場の方に行っているんじゃ」

 「わかった。2人共後で会おう」

 そう言ってセリア達とは別方向に向かう。

 全く、相変わらず破天荒なことをやってくれるな、あのクソジジイは。

 「あ、洸夜くん。久しぶり、元気にしていた?」

 「由美子さん、ご無沙汰しておりました」

 目の前にいる女性は、 英城 由美子ゆみこ 。師範の1人娘で結婚をしている。

 「ニュースで観たわ。辛い思いをしたわね」

 「ええ、まさか自分があんな目に会うとは思っても見ませんでした。でも問題はほぼ解決しているので、気にすることはありませんよ」

息子は893に連れて行かれたし、ハゲ校長は無一文で海外にいる状態だから、むしろ今はハゲ校長と無乃が心配しているぐらいだ。

 「そう、何かあったときは頼っていいからね。お姉さん力になるから」

 「はい」

 「ところで、電話で話していた2人は何処にいるの?」

 「ああ、さっき師範が更衣室の方に連れて行きましたよ。着替え終わったら、ここに連れて来ると思いますが・・・・・・由美子さん、どうして道着を着ているのですか?」

 由美子さんは毎日家事をしているので、道着を着ているところをあんまり見たことはない。

 「お父さんからね。その2人の稽古をするように言われたの」

 「ええ!?」

 由美子さんがセリアとルノアの稽古をする?

 俺は信じられないような顔で由美子さんを見つめていた。
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