上 下
71 / 111

第38話第一待ち人発見(?)

しおりを挟む
 オルコシスさんが交渉を始めてから3分後に俺達は動き出した。

 「そろそろ動きましょう。馬車の速度はさっき言った通り、ゆっくり目でお願いします」

 「わかりましたが、本当に裏手で停めなくていいんですか?」

 「ええ、もし停めているところを見られたら、不審に思われますから停めない方がいいです。時間が勿体無いので出して下さい」

 「わかりました。では出発します」

 馭者はそう言うと、馬車を出した。

 「・・・・・・そろそろ裏手です。降りる準備をして下さい」

「はい、じゃあ皆さん。ここからはスムーズに動きましょう」

 「ああ」

 「わかったわ」

 『了解!』

 リタが出て行くのと同時に馬車を降りてすぐに壁の裏に隠れた後は、透過しているリタに校舎のようすを見て貰う。

 『今のところ敵も罠もないから、進んでも大丈夫だよ』

 「わかった。リタが進んでも大丈夫だと言っているので進みましょう」

 2人の頷くようすを見た後に塀を登って校庭へと入るとドアに近付き、ピッキングツールを取り出す。

 「コウヤさん、それは?」

 「鍵を開ける為の工具です。開けている間に周囲の警戒をお願いします」

 「あ、ああ。わかった」

 そう言うと鍵穴にピッキングツールを突っ込み、どうやったら鍵が開くのか探る。

 もう少しここをこうすれば・・・・・・よし、行ける!

 鍵を解除して中へと侵入する姿を騎士団達は驚いた表情で見つめていた。

 「右よし、左よし。さぁ行きましょうか。リタ、先行を頼んだ」

 『任せて!』

 リタはそう返事をすると周囲を飛び回って相手がいないか確認している間にドアを閉めて鍵を掛ける。

 「ミヤマ殿、どうしてドアを閉めるのですか?」

 「こうしておかないと見張りに不審に思われると思ったので」

 俺がドアが開きっぱなしの状態を見たら、閉め忘れなんて言わないしな。

 『ん? コウヤ、トイレの前に人がいるよぉ!』

 「トイレの前に人がいる?」

 「なん、ッ!?」

 素早くユークさんの口元を手で塞いで、余った方の手で自分の口元に人差し指を当てる。

 「潜入しているんですから、大声を出さないで下さい」

 「そうよ、バレたら終わりなのよ」

 俺とルシアさんが睨むと、コクコクと頷いたので口を塞いでいる手を離す。

 「すまない、軽率だった」

 「じゃあ、リタのいるところに行きましょうか」

 「ええ」

 「わかったわ」

 2人と共に廊下の突き当たりまでやって来て、角から覗くと女子トイレに向かって何かを語り掛けているようすが見えた。

 「何を言っているんだアイツ?」

 『話によると まだ出て来ないのか? 長いぞぉ! って言ってるの。トイレの中に入っているのは、人質っぽい』

 「人質のトイレに入っている時間が長いから、苛立っているのか。だけど、絶好のチャンスかもしれない」

 「どうしてですか?」

 「その人を助け出して、色々と聞き出せばいいから」

 「「なるほど」」

 「犯人は仲間を叫ぶと思うので、尋問は諦めましょう」

 でもどうやって気を失わせるかだよな。ここからトイレまで距離はあるし、何よりも隠れる場所が少ない。

 『それなら私に任せて!』

 「任せて。って、アイツを何とか出来るのか?」

 『うん、出来るよ!』

 「そう、それなら任せた」

 リタはニッコリと笑顔を見せた後に犯人の背後に回わり、何か呪文を唱えたら犯人バタリと倒れてしまった。

 『もう大丈夫だよ!』

 「もう大丈夫みたいなので、行きましょうか」

 まさかお前、犯人を毒殺してないよな?

 「あ、ああ」

 「そうね」

 2人と共に犯人に近づき犯人のようすを確認してみると、イビキを掻いて眠っていた。

 「魔法で眠らせたのか」

 『そうだよ。【スリープ】って言う魔法を使って眠らせたんだ!』

 「でかしたぞリタ」

 そう言った後に身体中を探り、武器をという武器を外した後に持ってきたビニールテープで口と身体を素早く縛り上げる。

 「リタ。嫌かもしれないけど、トイレの中に入って誰が入っているのか確認して来てくれるか?」

 『え? 何で私? 嫌だよ』

 「そうか、嫌ならルシアさんに行って貰おう。いいですか?」

 「え? もしかしてアナタの妖精はトイレに入るのを拒んでいるの?」

 「ええ、なので頼めますか?」

 「まぁ、ここまでで何もしていないから、仕方ないわよね」

 「お手数掛けます。リタはこの先の状況を見て来て。ユークさんは後の警戒を。俺はこの犯人の1人が何をしてもいいように見張る」

 『了解』

 「わかった」

 「それじゃあ行って来るわね」

 みんな俺の指示した通りに動き出したのだが、その女子トイレの中から声がここまで聞こえて来る。

『あら? ねぇここに誰か入っているの?』

 『ヒャアッ!? すみません!もうすぐで用が済むので、待っていてくれますか?』

 ん? この声ってもしかして?

 『あの、先ほど居た人はどうしてんですか? って言うか、女性の声? 確か女性がいなかった筈ですが?』

 「ルノア? もしかしてトイレに入っているのはルノアなのか?」

 『って、ワァッ!? 何を覗いて・・・・・・ってあれ? アナタは誰ですか?』

 『騎士団に所属しているルシアって言うの。よろしくね』

 おいおい、あの人トイレを覗いてんのかよ。

 『騎士団ッ!? 私達を助けに来たんですかぁ!?』

 『ええ、でも声が大きいわ。もうちょっと静かに話してちょうだい』

 『す、すみません』

 『ところで、用が済んでいないって言うけどぉ~・・・・・・パンツを下ろしていないのは何でなの?』

 『ゴメンなさい。私、お腹が痛い。って言って1階のトイレに逃げ込んだんです』

 『ああ~、なるほどね』

 つまり嘘を吐いてトイレに入ったことが功を奏したって訳だな。

 「俺達がラッキーなのかルノアがラッキーなのか、わからないな」

 『両方言えるんじゃない?』

 「お! 戻って来たか。どうだった?」

 『う~ん・・・・・・何か2階の方で固まっているって感じだったよ』

 「そうか? 人のようすは?」

 『何かルノア達が戻って来ないから、ようすを見に行こうか。って話し合っているよ』

 「そうか」

 ルノアがトイレに入ってから、それなりに時間が経っているんだな。だとしたらちょっとマズイかもしれない。

 「とりあえず、ちゃちゃっとルノアに話を聞いた方がよさそうだな」

 『そうね。ちょっと呼んで来るわ』

 リタは俺にそう言うと女子トイレへと入って行く。

 『うわぁ!? リ、リタ? 何でここにいるのよ?』

 『詳しい説明は後にして、外に出てちょうだい』

 いきなり目の前に現れたんか、アイツは。

 『え? 何でですか?』

 『犯人達がルノアと仲間が戻って来ないから、長いからようすを見に来ようって考えているの』

 『そうなのですか?』

 『うん。いつまでもここにいると危ないから、早くここを出て』

 『そうね。一緒に付いて来て』

 『あ、はい』

 ようやく出て来たルノアは、俺の顔を見て驚いた表情をさせていた。

 「ルノア、無事でよかった」

 「コウヤ、どうしてここに?」

 「オルコシスさんに頼まれて救出任務に就いているんだ。それで出て来たところ悪いけど、俺の質問に答えてくれ」

 「え? 質問?」

 「ああ、人質がいる場所は何処だ?」

 「2階の2年生の教室に集められているわ」

 なるほど、侵入されても教室で籠城出来るようにしているんだな。

 「それで、その教室の中に人質が何人いた?」

 「アタシを含めて6人の人質がいたわ」

 「たった6人?」

 「ええ、アタシは教室に向かっている途中で捕まっちゃって・・・・・・でも、何でほとんどの人達を逃したのは何でなのかしら?」

 「少ない方が人質を管理しやすいからな。必要以上に取らなかったんだろう」

 大人数なんていたら反抗される危険性があるから、少人数に絞ったんだろう。

 「部屋の中には何人いた?」

 「3人。外には2人だけどぉ~・・・・・・」

 「その2人の内の1人がこの人なんだな」

 「うん」

  俺の横で転がっている犯人を見つめる。

 「よしわかった。ルノア、俺達と共に来るんだ」

 「えっ!?」

 「ちょっとぉ!?」

 「何を言っているんだキミは!」

 「彼女の力じゃこのまま外へと出るのは難しいかも。なら連れて行った方がいいかもしれない」

 戦力にはならないのはわかっている。でもこのまま放置していたら逆に危ない気がする。

 「私はそれを容認出来ない」

 「僕も、容認出来ない」

 「私も出来ないよ!」

 「う~ん・・・・・・」

 ここまで否定されると何とも言えないなぁ~・・・・・・仕方ない。

 「じゃあルノアをこのままトイレの中で待機させようか。そうすれば誤魔化しが効く筈だ」

 「そうですね。そうしましょう」

 「さんせぇ~い!」

 「一応、俺自身中の安全を確認しておきたいから、この中入っていいかな?」

 「ええ、こんなときだから仕方ないわね」

 「コウヤのえっちぃ~!」

 えっちぃ~! って言うなよ!

 「さて、敵がやって来る前に入ろうか」

 「え、ええ」

 戸惑うルノアの手を取り、女子トイレへと入って行く。

 「中は安全だな」

 「うん、て言うかさっk・・・・・・」

 「【転移】」

 「え?」

 一瞬で景色が変わり、自室へと戻って来たのだ。

 「え? ええっ!? ここ何処ぉ!?」

 「俺の家だ」

 「い、家?」

 「一応ここなら安全だ。あ! 後、詳しい話は母さん達から聞いてくれ。他の生徒達の救助が終わったら迎えに来るから。」

 「ちょっ!? アンタ何を言ってるの?」

 「それと土足厳禁だから靴は脱いでくれ。【転移】」

 こうして、ルノアを俺の自宅へと置いて学園へと戻るのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

心の交差。

ゆーり。
ライト文芸
―――どうしてお前は・・・結黄賊でもないのに、そんなに俺の味方をするようになったんだろうな。 ―――お前が俺の味方をしてくれるって言うんなら・・・俺も、伊達の味方でいなくちゃいけなくなるじゃんよ。 ある一人の少女に恋心を抱いていた少年、結人は、少女を追いかけ立川の高校へと進学した。 ここから桃色の生活が始まることにドキドキしていた主人公だったが、高校生になった途端に様々な事件が結人の周りに襲いかかる。 恋のライバルとも言える一見普通の優しそうな少年が現れたり、中学時代に遊びで作ったカラーセクト“結黄賊”が悪い噂を流され最悪なことに巻き込まれたり、 大切なチームである仲間が内部でも外部でも抗争を起こし、仲間の心がバラバラになりチーム崩壊へと陥ったり―――― そこから生まれる裏切りや別れ、涙や絆を描く少年たちの熱い青春物語がここに始まる。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

やり直し令嬢の備忘録

西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。 これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい…… 王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。 また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

処理中です...