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第35話 家族での話し合いと哀れな人

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 河川敷で修行を終えた俺は家に帰って来た。

 「お帰り洸夜。修行どうだった?」

 「うん、バッチリだ。だけどぉ・・・・・・」

 「ん? 何かあったの?」

 「うん、さっき真吾と会って話をしたんだ」

 「それで?」

 「無乃が少年院から脱走したみたいだって」

 「えっ!? それはホントなの?」

 母さんが驚いている中、父さんが服の袖を引っ張って来た。

 「ん? どうしたの、父さん?」

 父さんはテーブルに置いてあるパソコンに向かって指をさしたので、何が言いたいのか理解出来た。

 「パソコンの画面を観て欲しいの?」

 そう言ったら頷いたのでパソコンの画面を覗いて観て見ると、何と少年院から少年1人が脱走をした事が書かれていた。

 「これって、俺が今話したことじゃないか。もしかしてニュースになってるの?」

 俺がそう聞くと、コクリッと父さんが頷いた。

 「ねぇコウヤ。ショウネンインを脱走したのは記事になっているけど、肝心の名前が書かれてないよ」

 「確かにそうだな。でも、真吾が言っていたことと一致する」

 『少年保護法って言うのがあるから、起きたことは報道しても名前までは報道出来ないんだと思う。現に彼と父親はとんでもないことをしているのだから、尚更報道出来ないと思うよ』

 父さんの言う通りかもしれないけど、今はネットの時代だから探そうと思えばいくらでも探せると俺は思う。

 「後、真吾の話によると無乃は俺達家族に対して恨みを持っているみたいだから、注意して欲しいって言われた」

 「ええっ!? 恨みぃ? 私達無乃くんに対して何か悪いことをやったっけ?」

 「向こうからすれば、やった。と認知してるみたい」

 「嘘ぉっ!?」

 いや、嘘ぉっ!? じゃないよ母さん。

 「俺が冤罪退学することになってから次々と自分の悪事が露呈してったよなぁ?」

 「そうよ。それがどうしたの?」

 「恐らく無乃は俺達が黙っていればこんな風にならなかった。って恨んでるんじゃないか?」

 「でもでも、隠していた悪いことが今になって出て来ただけなんだから、あの子と校長のせいでしょ!?」

 手をブンブン振って否定するのはいいが、危ないから手に持っている包丁を置いてくれ!

 「無乃からして見ると、そうは思わないって言っているだろ」

 『洸夜くんの言う通り親子揃って自己中心的なんだから、自分のいいように物事を捉えると思うよ』

 「う~ん、私もそう思う。だって襲撃する程の酷い人達だったもん!」

 母さんはリタの言葉に思い当たるところがあったのか、顔を青ざめさせて受話器を手に取った。

  「洸夜とアナタが危ない! 警察に連絡をしないとぉおおおおおおおおおおおおっ!?」

 「落ち着いて母さん。今警察に連絡をしても意味がないって!」

 『そうだよ。実際に被害に会ってないし、被害に遭いそうにもなってないんだから、まともに取り合ってくれないと思うよ』

 「でもでもでもでもでもでもぉぉおおおおおおおおおおおおっ!?」

 「それに、こっちの世界の兵士じゃなかった。ケイサツも行方を捜索していると思うし、あのとき私達の安全を考慮して、地方の方のショウネンインに入れたって言ってたじゃん! 忘れたの?」

 確か場所はぁ~・・・・・・鹿児島辺りって言っていたよな。

 『鹿児島辺りだったら安心していいと思うよ。ほら、飛行機は難しいと思うけど、新幹線に乗るか夜行バスに乗るかをしないとこっちに来れないし。どのルートでもそれなりにお金が掛かると思うよ』

 「言われてみれば確かにそうねぇ~」

 「とにかく、俺達の身に危険が迫って来たら真吾が連絡をしてくれると思うから、それまでは安心して暮らしていていいと俺は思う」

 つーか、少年院でお金が出る訳がないだろう。

 「・・・・・・そうね。お母さんが心配症になっていたわ。無乃くんに襲われてもいいように、これを持って行こうかしら?」

 母さんがそう言って台所の引き出しから取り出したのは、何と催涙スプレー。

 「ああ、うん。母さんがそう思うのなら、持ってていいんじゃないか?」

 催涙スプレーぐらいなら、護身用と言い訳が出来るからな。しかし父親の無蔵同様、無乃のヤツは今どうしているんだろうか?

 「・・・・・・まぁ、あの親子を気にしていても仕方ないか。お風呂に入りたいんだけど、お湯沸いているか?」

 「うん、沸かしておいたから入って構わないわよ!」

 「それじゃ、お先に」

 こうして風呂に入った後に明日の準備をしてから就寝準備に入った。

 「リタ、今日はどうするんだ?」

 「今日は自分のお家で寝ようと思っているの!」

 と言うことは、リタの勧誘を諦めたか一時撤退をしたかの2つだな。

 「そうか。またしつこく付き纏われているのなら、こっちに来てもいいからな」

 「うん、そうする。ところでコウヤ」

 「ん?」

 「今度はそのムノって人の夢を見るんじゃない?」

 「気になりはするけど、見たくねぇよ」

 ハゲ校長のときもそうだったけど、夢を見てて面白いと感じたことはなかった。

 「それじゃあ、おやすみコウヤ!」

 「おやすみ、リタ」

 リタが消えたことを確認すると、布団に潜り込み眠りに着いた。

 あれ? ここは・・・・・・俺の部屋じゃないな。それに何か古めかしい感じって言うか、そもそも部屋が日本のような作りをしていない。

 リビングと思わしき部屋を見渡していると、見知った顔が部屋の中へ入って来る。

 『クックックッ、遂に・・・・・・遂に俺はやり遂げたんだぁ!』

 「ハゲ校長!?」

 ラフな格好をしているってことは、ここは潜伏先なのか?

 『日本にもう帰ることは出来ないが、こんないい部屋が見つかるとはな。思っても見なかった』

 そう言うと椅子に座りノートパソコンを開いて何かをし始めた。気になったので画面を覗いてみると日本のニュースを検索しているようだ。

 『やはり私のことを指名手配しているようだな。あのときに逃げてよかったが・・・・・・』

 いきなり怒りの形相でテーブルをブッ叩いたので、思わず身体をビクッとさせてしまった。

 『あの生意気なクソガキが、怪我一つなくのうのうと暮らしやがって!!』

 それはそれで残念だったな。アンタの目論見はお見通しだったよ。

 『しかしここは海外。あの家族を始末するヤツを探そうと思えば探せる筈だ』

 「オイオイオイ、マジかよ」

 あ、でも。いくら殺し屋でも海外に出張する人はいないんじゃないか?

 『それに金ならまだある。ゆっくり探せばいい』

 そう言ってボストンバッグの中を見つめてニヤリとしているので、いくらあるのか気になったので覗いて見てみたら、日本の札束たくさん入っていた。
 どれだけ脱税をしていたんだよコイツは。

 「・・・・・・いや、殺し屋を雇うよりも、その金で仕事を探した方がいいんじゃないか?」

 『復讐してやる。私をここまでコケにしたあの家族を絶対に許さん! 先ずはあの家族を始末してくれる殺し屋を探さねばっ!!』

 ハゲ校長はそう言うとパソコンを使ってネット検索を始めるが、そんなネットで見つかるものなのか? と呆れてしまう。

 「中国の方がネット検索に規制が掛かっているんだから、そんな都合よくぅ・・・・・・ん?」

 窓の方から物音がしたのでそちらに顔を向けて見ると、何と覆面を被った男が部屋の中を見つめていたので俺はギョッとしてしまった。一方でハゲ校長の方は検索に夢中になっているようで、その覆面達に気付いていない。

 「外っ!? 外外ぉっ!? 外を見ろっ!!」

 しかし、夢の中なのでその声が聞こえる筈もなく、外にいる男は横を向いて頷くと持っていたハンマーで窓ガラスをブチ破り、2人の仲間と共に部屋の中へと入って来た!

 「なっ、何だぁ!?」

 ハゲ校長も窓ガラスが破られる音でやっと気付いたが時既に遅く、押さえ付けられてしまい、ビニール紐で椅子ごと縛られてしまった。後、関係ないかもしれないがカツラも衝撃で床に落ちてしまった。

 「な、何なんだお前達はっ!?」

 ハゲ校長がそう言っている間に男達はボストンバッグの中身を確認すると、そのまま背負い、検索途中のパソコンも次いでと言わんばかりに持った。

 「そ、それを持って行くなぁっ!? 俺の全財産なんだぞっ!!」

 そう言って暴れるハゲ校長にカツラを乗っけた後、何も言わず去ってしまった。ハゲ校長はその後も 金を返せぇええええええっ!!? と、もがきながら叫んでいた。
 その光景を見ていた俺はと言うと、あの泥棒達はカツラを乗っける優しさがあるんだんなぁ~。 と思っていたのであった。
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