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第28話 クラスメイトと創意工夫

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 バルゲル先生は授業が終わるのと同時に、そそくさと教室を出て行ってしまった。多分これ以上居たら、本を投げ付けられるって思ったのかもしれない。

 「このことを他のクラスにも伝えようか?」

 『うん、そうした方がよさそうだねっ!!』

 どうやらクラスメイト達も俺と同じことを考えているようだ。

 「っと、次の授業はぁ~・・・・・・実演魔法と武芸の時間か」

 時間割を見た感じだと2時間ぶっ続けで外で授業をやるみたいだな。

 「皆さん更衣室に行って服を着替えて下さいねぇ~!」

 ルコア先生が扉越しに教室を覗く。てか、戻って来たんですかアナタは。

 「あ、因みに実演魔法の授業も私が担当しますよ! 因みに武芸の方はウォーラー先生でぇ~す!」

 『イエ~イッ!! 着替えて来まぁ~っす!!』

 えっ!? 喜ぶところあったかぁ? しかもさっきと違って素直に言うことを聞くなぁ、お前らはっ!?

 元気よく更衣室へと向かうクラスメイト達と共に更衣室へと向かい、ジャージに着替えた後に廊下に並んだ。

 「皆さん廊下に並びましたね。あ、トイレに行きたい人はいますかぁ? 行きたい人は今の内に行って下さい」

 『大丈夫です!』

 「それでは出発しまぁ~すっ!!」

 先生はそう言うと廊下を歩き校庭へと出ると、藁人形と甲冑人形が並んでいる場所にやって来た。

 「今日はちょっと違ったことをやります!」

 「はい!」

 「はい、何ですかリタさん?」

 「違ったことって一体何なんですかぁ?」

 「それはねぇ~、魔法で動く的に魔法を当てて貰いまぁ~す!」

 『動く的に魔法を当てて貰う?』

 クラスメイト達は これが動くの? と言いたそうな顔で壁際に並んでいる人形を見つめてしまう。

 「あれは動きませんよ。ちょっと待っていて下さい。土よ我が身を護る化身となれ・・・・・・【マッドクリエイト】!」

 ルコア先生の足元の土が盛り上がって行き、最終的には4体の歪な人の形に変貌した。

 「先生、これって?」

 「【マッドクリエイト】で作り上げた泥人形です! 向こうの方に立たせるので、この子達を狙って魔法をバンバン放って当てて貰いますが、この子達も動くので気を付けて下さいねぇ!」

 「あのぉ~、ルコア先生」

 申し訳なさそうな顔で手を上げるセリアに、ルコア先生はニコニコ顔で見つめる。

 「はい、何でしょうかセリアさん?」

 「私、雷属性なので土とは相性がよくないのですがぁ・・・・・・」

 「ああ、大丈夫ですよ! 相性どうのこうのという授業ではなく、自分が扱かう魔法を当てられるようにする為の授業なので属性の相性は気にしないで下さい」

 「要は動く的に動く的を当てて下さいってことですね」

 「はい、ミヤマさんの仰る通り的当てです! 他に質問はありますか?」

 シーンとしているので誰1人質問はないようだ。

 「ないのでしたら並べますね! 皆さぁ~ん、向こうに並んで下さぁ~い」

 土人形達は頷くとルコア先生の指示通り、甲冑が並んでいる場所に行って横並びになった。

 「準備が出来た人からそこのラインに立って下さいね。どれに当ててもOKですよ」

「先ずは相性のいい僕からだ!」

 相性がいいってことは風の属性持ちなのか。

 そのクラスメイトは自信満々にラインの手前に立つと、片足が細い土人形に向かって手をかざした。どうやら見た目からして、その土人形が狙いやすいと判断したのかもしれない。

 「風よ、刃となりて我が敵を切り裂け! 【エアロエッジ】ッ!!」

 風の刃が土人形に真っ直ぐ向かって行くのだが、土人形は危ないと感じたのかヒョイと横っ跳びして避けてしまった。

 「えっ!?」

 「マジ?」

 「今避けた?」

 「あ、言っていませんでしたが土人形さん達は避けるので気を付けて下さい」

 「それを最初に言いましょうよ!」

 「こんのぉっ!!」

 避けられたのが悔しいのか、男子学生がエアロエッジの連射をするのだが土人形にヒョイヒョイ避けられてしまう。

 「う~ん・・・・・・」

 「どうしたの、コウヤくん」

 「きっと避ける土人形をどうやって攻略しようか考えているんだよぉ!」

 「それもあるが、彼のやり方にちょっとな」

 土人形に向かってムキになって魔法を放ち続ける姿を見て、自然と眉間にシワが出来ていた。

 「どういうことなの? もしかして風魔法の威力とか?」

 「いや、そこじゃない。魔法を放つのが一定リズムだな。と思ってな」

 「「「一定リズム?」」」

 「ああ、ああやってがむしゃらに魔法を放つのも1つの手だけど、見てわかる通り魔法に間があるから、避ける準備が出来てしまうんだ」

 1発放ってから何たらかんたらと呪文を唱えている間に、的はもう何処から来てもいいように身構えているのだ。

 「だからあのまま続けても自分の魔力を消耗するだけで意味がないな」

 「言われてみればぁ~・・・・・・」

 「確かにそうかもしれないわね」

 魔法を放ち続けているクラスメイトに対して、ルコア先生は近づき肩に手を置いた。

 「はい、ストップ。アナタの番は終わりですよ」

 「え、でも先生。僕はまだ魔法を使えます」

 「お気持ちはわかりますが時間があるので交代です」

 「わかりました」

 彼は余程自身があったのか、肩を落としたまま背ろへと下がってしまった。

「さて、次はどなたが行きますか?」

 ルコア先生はそう言うと行けと言わんばかりに俺を見つめて来る。

 「えっ!? 何で俺を見つめるんですか?」

 「いえいえ、何でもありませんよ。ねぇ皆さん」

 『はい、先生の言う通りです!』

 「いや待て、お前が行けよ。って目を向けていないか?」

 そう言ったらリタとセリアとルノア以外の全員目を背けた。図星なのが丸わかりだ。

 「ハァ~・・・・・・わかった。やればいいんだろう、やれば」

 そう言った後にラインに立って土人形を見据えた。

 さて、そうは言ったものの策がないんだよなぁ~。このまま普通に投げたら避けられるのは目に見えている。投げるモーションをした後にまた投げる? いや相手は人じゃないからフェイントに引っかかる筈がない。
 だったら先ずは無難な方法で試すまでだ。

 そう思った後に両手の手のひらに魔力の塊りを作り出した。

 「先ずは1投目!」

 1番近い土人形に向かって放ったら予想通り避けられてしまった。しかしこれは想定内の行動。相手が避けるその瞬間に向かう方向に魔力の塊りを放つと、土人形は避ける術がなく当たってしまう。

 「オオ~ッ!?」

 「流石コウヤァ! このまま一気に畳み掛けちゃえ!」

 「いや、壊したら大変だからこれ以上やらないぞ」

 「ええ~っ!?」

 いや、そんな顔をしないでくれよ。壊したら壊したで 使い回しするつもりだったのにぃ~! ってルコア先生が言うだろう。

 「それに当てるだけならともかく、魔法で倒すっていう授業だったら無理だ」

 流石にあの改良したクリスタルブレードを投げナイフの形にすればって最初は考えたが、電源ONにしたグラインダーの刃や回っているドリルの先端を手で掴んでいる状態と同じ危険行為をしているようなものだから、絶対にやらん。

 「やっぱり俺は近距離戦闘型かもしれないな」

 「戦闘スタイルはともかくとして、課題の土人形に魔法を当てるというのはクリアしたので立派ですよ。皆さんもミヤマさんのやり方を参考にして土人形を狙って魔法を放って下さい!」

 『はぁ~い!』

俺が土人形に当てたのを見たクラスメイト達は、一番最初の男子とは違ってがむしゃらに魔法を放つことはなかった。

 「ああ、また避けられた!」

 「2発目をすぐに放てないよっ!?」

 「ああ惜しい! もう少しだったのに!!」

 クラスメイト達はそれぞれ考えながら魔法は放って土人形に当てようとしている。

 「いやぁ~、ミヤマさんがいてくれてよかったですよ」

 「え? 急にどうしたんですか、ルコア先生」

 「この授業を始めると大抵の子は土人形に当てようとして、魔法を連射するんですよ」

 「そうなんですか?」

 「はい、ですがミヤマさんのお陰で、どうすれば土人形に当てられるのか考えるようになって貰えました。ありがとうございます」

 「いえ、俺は・・・・・・ん?」

 今のは一体?

 「どうしたのですか、ミヤマさん?」

 「今向こうの塀に人がいて、俺と目が合った瞬間降りたんですが・・・・・・」

 「ほ、本当ですか?」

 「あ、はい」

 「・・・・・・きっと、学園長の使者かもしれないですね。気にしないで下さい」

 アニス学園長の使者かぁ~。あの人なら使者とかいそうだな。

 「わかりました。もう一回やってみてもいいですか?」

 「はい、どうぞ挑戦して下さい」

 ルコア先生の許可を取ってから、また動く・・・・・・ではなく避ける土人形に挑戦するのであった。
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