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第17話 契約の種類について学ぼう。

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 昨日のように教室に入ると一番前の席に座り、ノートとペンを取り出して机に置いたら、誰も入って来る筈もない出入口の扉が開いた。

 ん? 誰だあの女の子は?

 そう思っていると、その小学生と思えるぐらい身長が低い女の子は無表情で俺のことをジィーっと見つめて来た。

 「えっとぉ・・・・・・俺に何の用かな?」

 「学園で見掛けない人。アナタ誰?」

 いやいやいやいや、初対面の人に名前を聞くのはいいけど、先に自分の名を名乗ってからが普通だよな。

 「アンリネット。私の授業を邪魔しに来たのか?」

 「アンリネット? もしかして、この子の名前がアンリネット?」

 「うん」

 本人が頷きながらそう言うが、そのまま黙ったまま見つめて来るのでちょっと困る。

 「えっとね。彼女はこの学園の中等部に通っている アンリネット・スペード・グランドル って名前で、候爵家の令嬢なの」

 「そうなんだ」

 このロリっ子が侯爵家なのかぁ。

 「あの、15歳に見えないんですけどぉ」

 「彼女は飛び級しているの。年齢は確か、えっとぉ~・・・・・・」

 「12歳」

 「じゅ、12歳っ!?」

 俺が15歳だから3歳差か。

「・・・・・・誰?」

 指をさして言って来るので、自分の名を語ることにした。

 「俺の名前は、 海山 洸夜 って言うんだ。隣にいるのが妖精族のリタ」

 「コウヤと妖精契約をしている妖精族のリタだよ。よろしくね」

 「妖精契約」

 アンリネットはそう言うと、また俺のことをジーッと見つめて来た。今度は顔が近いから困る。

 「まぁ、何はともあれだ。新学期には同学年になるから、2人共仲良くするように」

 「はい」

 「・・・・・・ん」

 この子と仲良くかぁ。ボロが出ないように注意して接してあげなきゃな。

 「コイツに授業をするから、アンリネットは教室から出るように」

 「わかった」

 彼女はそう返事をすると、教室から出て行った。

 「えぇ~っと。色々と聞きたいことがあるけど、妖精契約するのは何か特別なことなんですか?」

 「まぁそうだなぁ。珍しいといえば珍しいことだ」

 あの顔を見て大体予想は付いていたけど。

 「まぁ、これも授業の一環か。説明するからちゃんと聞くように」

 「はい」

 そう返事をしてから、新しいノートを出して表紙に魔法学と書く。

 「契約には様々な種類がある。代表的なのは【従魔契約】【精霊契約】【奴隷契約】の3つだ。魔獣契約は読んでわかると思うが、モンスターと契約をして従わせることが出来る」

 ほうほう、ゲームで言うところのモンスターテイマーみたいな感じで戦わせることが出来るのか?

 「精霊契約は自分の魔力と相性のいい精霊と契約をすれば、精霊が手助けしてくれる契約だ」

 あれか? エレメンタル系の魔道士って感じで戦闘をやる感じ? だったら俺も色んな精霊と契約してみたいな。

 そんなことを考えていたら、何故かアニス学園長は少し嫌そうな顔をして話始めた。

 「で、最後の契約。奴隷契約についてだが、これが一番の厄介物でな。帝国では使用制限されていて、下手したら犯罪で捕まる可能性がある。それに他の2つと違って手順を踏まなければならないから、使う人が少ない契約だ」

 やっぱり、異世界もののラノベを読んでいる俺からしてみれば、奴隷のイメージはよくないが聞いておいて損はないだろう。

 「犯罪の可能性? どういうことですか?」

 「ああ、奴隷契約は使用した本人の命令を何でも聞かなければならない上に、逆らおうとも出来ない。もし仮に命令無視や逆らおうとしたら、全身に電流が走るような痛みを感じる。争い続ければ続けるほど、その痛みは強くなっていくから場合によっては死に至る」

 何それ恐い。絶対に奴隷契約したくない。

 「でもね。奴隷契約は悪いことばかりに使われているわけじゃないんだよ。例えば、裁判で嘘の証言をしているのかどうか見分ける為に使ったり、犯罪者が街で奉仕活動している途中で逃げ出せないように使ったりもしているの。本当に契約の手順が面倒臭いけれど」

 「あ、そうなんだ。因みにその手順のやり方は?」

 「先ず、紙に主人と書いてから自分と、奴隷と書いて相手の名前を書くの。そして何故相手を奴隷の契約をするのか理由を書いた後に、お互いの血を紙に垂らすの」

 契約に痛い思いをするのは嫌だなぁ。

 「そして、契約を司る女神様に契約書を捧げれば終わり。手の甲や胸元やおデコとか目立つところに奴隷紋が出来たら成功。失敗すれば何も起きないで終わりなの」

 何か嘆願書の受理みたいな感じ。

 「じゃあつまり、奴隷契約は女神様の判断次第ってこと?」

 「平べったく言えばそんな感じだな。それと、用が済んだら契約満了ってことで消える」

 「そうなんですか」

 つまり奴隷契約も万能じゃないってことらしい。

 「私とコウヤの妖精契約も、コウヤが思っているほど万能じゃないよ」

 「万能じゃない。どう言う意味で?」

 「私とコウヤはお互いが同等の立場で契約しているの。だから、あれをやってこれをやって! ってコウヤが命令を出しても拒否することを私には出来るの」

 つまり、会社で言うところの上司と部下の立場じゃなく。同じ立場で働くパートナーと考えればいいのか。そうすると・・・・・・。

 「つまり、リタにお願いされたら聞かなきゃいけないってことか?」

 「そういうことです。まぁでも、無理だったら無理と断ってもいいよ」

「うん、俺も無理難題をリタにお願いするつもりがないから、安心してくれ。と言いたいところなんだけど、一つ約束してくれ」

 「ん? 何?」

 「両親や姉さんとお酒を飲むときは、自分のコップを持参して欲しい」

 また酔っ払って絡んで来られると面倒だから。

 「アハハハハ・・・・・・今度からはそうするよ」

 今朝のことを思い出したのか、恥ずかしそうに顔を逸らして言った。

 「それに、残り2つの従魔契約と精霊契約も万能じゃないぞ」

 「と、言いますと?」

 「精霊契約と従魔契約の場合は定期的に自分の魔力を精霊にあげたり、遊んだりするのが条件だったり、場合によっては食事を渡したりしないといけない。そして相手に愛想を尽かされたら、そこで契約終了になる。簡単に言えばギブ&テイクか、その精霊に忠誠心があるかだ」

 なるほど、精霊は交換条件か忠誠心で契約しているのか。

 「従魔契約の方が大変かも」

 「どうして? 常にパートナーとして一緒にいて、戦っているイメージがあるんだけど」

 「従魔契約の場合は精霊契約にに通った点があるんだけれども、約束を破ったら契約破棄どころか襲われる可能性があるの」

 「自分の従魔襲われるのっ!?」

 俺がそう言うと、セリアは うん。 と頷いた。

 「従魔契約の基本的な契約方法は、従魔したい魔物に対して力を示して服従させるか、それか食事の提供とかを交換条件にするの。稀に助けたお礼に従魔になるってこともあるの」

 「そうだね。一番わだかまりがない方法は交換条件で契約して貰うことで、一番やらない方がいいのは力で示すこと。
 力の場合は従魔が相手に勝てると思ったら、契約を解除して襲って来る可能性があって、自分が常に上の立場だ。と魔物に示さないといけないから大変みたい」

 「従魔契約って大変だなぁ」

 従魔契約だけはしないことにしようか。

 「いや、そうでもないさ。良質な毛が取れるスリープシープや美味しいミルクが取れるスローカウとかを、遊牧民が従魔契約して世話をしているぞ。契約を破ってもまた再契約しやすいし、その2匹はほとんど襲われる心配がないからな」

 「羊と牛を家畜として飼い慣らしだけじゃないんですか?」

 「平べったく言えばそうなるな。でもその2匹から取れた毛とミルクは一部じゃ高級品扱いされているからな、生活必需品になるモンスターだから馬鹿には出来ないぞ」

 ほうほう、そうなのか。ん? ちょっと待てよ。

 「俺とリタの契約の場合はどうなるんだ?」

 ティアラ様を介してその場で契約をしたから、リタの契約条件を聞いてない。

 「女神様に頼まれたから契約しただけで、前にも話したと思うんだけど、私はしつこく勧誘して来る騎士団から、断る理由があればそれでよかったの」

 ですよねぇー。言ってたもんねぇー。

 「でもそれはコウヤと出会ったときの話」

 「え?」

 「今はコウヤと一緒にいると充実した日々を過ごせるから、条件としては充分だと思っているから安心してね」

 「そうなのか?」

 俺がそう聞くと、リタは うん! と言いながら首を縦に振った。

 「だからどっかの校長みたく裏切らないから安心してちょうだい!」

 「あれは別格だから比べ物にしない方がいいぞ」

 「確かにそうかもね!」

 リタと俺はお互いの顔を向けながら、 アハハハハッ! ウフフフフッ! 笑い合っていたのだった。
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