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第一話 そんなことはしていないっ!

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 俺、海山みやま 洸夜こうや は今現在進行形で校長室にいて、校長先生と対面している。そして、怒りを表しにした校長が俺に向かって怒鳴ってくる。

 「何度も言わせるな! お前は退学だっ!!」

 と怒鳴ってくるのだ。

 「ま、待って下さい! 意味がわかりませんっ!!」

 今日朝、自分が通っている高校に着いたら、いきなり校長室に呼び出しを喰らって、何だろうな? と思いながら行ってみたら、俺を退学させるって言って来たのだっ!! そこから言い争って現在の状態である。
 そう、俺は別に俺はタバコ吸ったりお酒を飲んだりしてないし、ましてや暴力事件なんて起こしてないのに、理由もわからずに退学を言い渡されているのだ。

 「理由? この間の中間テストがあったろ」

 3日前の一学期の中間テストのことを言ってるのか? このカツラ頭は。

 「ありましたよ。それが何か?」

 「お前が自分の答案用紙と他の生徒の答案用紙を、すり替えて提出したんだろうっ!!」

 「はぁ?」

 校長のその一言に、バカバカしくて頭に登っていた血が一気に冷えた。

 意味がわからない。第一に他人の答案用紙と自分の答案用紙をすり替えるって、難しいことだよな?

 「あの・・・・・・言いがかりでは? 第一にどうやって答案用紙をすり替えたんですか?」

 「お前が後ろから回収した紙を、名前のところを消しゴムで消してから名前を書いた」

 意味がわからない。てかそんなことをやってたら、普通に目立って指摘するだろう。普通は。

 「・・・・・・誰か見ていたんですか?」

 「誰も見ていないが証拠がある。これだ!」

 そう言って俺に見せて来たのは、俺ともう1人の答案用紙だった。

 確かに名前だけ書き換えられている。でも、この名前に書かれている文字おかしくないか?

 「だから出て行け!」

 校長がそう言った途端、両脇にいた先生達が俺の両腕を掴んで引きずって行く。

 「えっ! ちょっと!? 待って! 納得いかないっ!!」

 「うるさいっ!! もうお前は退学なのだから、二度とここへは来るなっ!!」

 こうして俺は自分が通っていた高校を追い出されてしまった。俺は現状が信じられずにいたので、しばらくの間呆然と高校を見つめていた。

 「・・・・・・どうしよう」

 冤罪なのに高校を追い出されてしまった。

 「両親に頼んで教育委員会に訴えるべきなんだろうけど・・・・・・」

 今は父が海外で仕事していて、母も父と一緒に行ってしまったので戻って来るのは10日より先だ。

 「本当にどうしよう。他に頼れるとしたらぁ・・・・・・」

 「どうしましょぉ~~~・・・・・・」

 「ん?」

 顔を上げて見ると、目の前にクリアファイルを広げて、俺に向かって歩いている女の人がいた。

 「わ、ちょっ!?」

 「キャアッ!?」

 お互いにぶつかって転倒してまった。俺の不注意のせいもあるけれども、クリアファイルを広げて歩くのも褒めたものじゃないと思う。

 すぐに立ち上がり、ぶつかってしまった女性のようすを見る。

 目立った怪我はないけれども、スーツ姿ってことは何処かの会社に勤めている人なのか?

 「す、すみません、大丈夫ですか?」

 そう言って手を差し伸べると、その人は手に取り立ち上がった。

 「あ、はい。すみません私のぉ~・・・・・・」

 その人は何故か俺の手と顔を交互に見ると、今度は目を輝かせて両手で握りしめて来た。

 「あの、異世界に留学してみませんかぁ~?」

 「はぁ?」

 いきなり何を言っているんだ、この人は。もしかして頭がヤバイ人なのか?

 「お断りします」

 「えっ!?」

 「その手の話でしたら、ラノベとかアニメの世界だけでお願いします」

 手を振りほどくと、そそくさと逃げるようにして歩き出す。

 「ま、待って下さいぃ~! お話だけでも聞いて頂けませんかぁ~?」

 逃したくないのか、背中に引っ付いて来た。てかこの人見た目の割には胸が大きいな! 抱き付かれて気づいた!!

 「あのぉ俺、忙しいので帰らせて頂きます」

 「そんな! 平日にこんなところでウロウロしている不良学生が、忙しいわけがありませんよ! 暇ですね、絶対に!」

 勝手に不良認定したぞ、この人!

 「ワケありで、今から両親と連絡を取らなきゃいけないんです!」

 「ワケありですか・・・・・・ちなみにどんなワケなんですか? よかったら聞かせて下さい。私は女神なので、大抵のことなら何とかなりますよぉ~」

 ・・・・・・うん、今ので確信した。この人は頭のおかしい人だ。だから逃げよう。

 「・・・・・・わかりました。ワケを話ますから、離して頂けませんか?」

 「あ、はい。このままだと話づらいですもんねぇ~」

 自称女神様がウキウキしているようすなのは置いといて、俺を掴んでいる手が離れた瞬間、全速力で逃げた!!

 「ちょぉっ!? ま、待ってぇ~~~~~~!!?」

 待てと言われて待つか!

 ふり返りもせず、追いかけていると思しき自称女神を振り切る為に街中を全力疾走していると、待ってぇ~~~!? 待ってぇぇぇええええええええええええっ!!? って言う声が聞こえなくなった。
 家の前に着く頃には疲れ切ってしまっていて、膝に手を乗せて息を切らせていた。

 「ゼェ~・・・・・・ゼェ~・・・・・・なんとかふり切ったかぁ~。早く父さんと母さんに、今日のことを伝えないと」

 念の為に家の周囲を見てみても自称女神と思わしき姿がないので、ホッとした顔で家へ入ろうとした時だった。

 「もぉ~、どうして逃げるんですかぁ?」

 「うわぁっ!?」

 ふり切ったはずの自称女神が、目の前にいたのだった。

 「な、なんで? ふり切ったはずなのに!」

 「女神様に不可能はないのです! それよりも、ここがアナタのお家ですか? いいお家ですねぇ~」

 「ムゥ~・・・・・」

 俺はその人のことを無視して家へと入って行き、入って来れないようにドアのカギを閉めた。

 「ここまで来れば・・・・・・」

 「ここなら安心してお話が出来ますねぇ~」

 「なっ!?」

 自称女神様が家のリビングからドアを開けて出て来たのだ。しかも靴を手で持っている。

 「何で? まさか窓を割って侵入したのか!?」

 そう言ってリビングの窓を見て見るが、割られた形跡がなかった。

 「だぁ~かぁ~らぁ~、私は女神様ですから、これぐらいのこと出来ますよぉ~」

 「え、あ・・・・・・証拠がない」

 「証拠? この姿を見れば信じると思います」

 自称女神の身体が光った途端、スーツが白い布状の服へと変わり、頭にはティアラが乗っていた。

 「そして光の魔法、ライトとファイヤボール」

 自称女神の右の手のひらに光の玉がフヨフヨと浮かんでいて、左の手のひらには火の玉がフヨフヨと浮かんでいる。どう考えても、CGとか大道芸で出来ることじゃない。そして、思っていた通り胸がデカイ!!

 「え、じゃあ、もしかして・・・・・・本当に女神様?」

 「そうです。私が光を司る女神様、 ティアラ ですよぉ~」

 「うわぁ~・・・・・・」

 俺は目の前で起きている状況が飲み込めずにいていたら、女神様が顔を目の前まで近づけて来た。

 「それで、何やら悩んでいたようですが、アナタはどうされたのですか? 私に正直に話して下さいねぇ~」

 自称女神様がそう言った瞬間、口が勝手に動き出して、今日学校であったことを全て話してしまった。後、自分の自己紹介も。

 「・・・・・・なるほど、そういうことですかぁ~」

 「り、理解して頂けましたか?」

 「そうなってしまった理解はしましたけどぉ~・・・・・・校長先生の行動に、理解出来ないところがあるんですよねぇ~」

 ヅラ校長の理解出来ないところ?

 「あのどういうところが、歩に落ちないんですか?」

 「その校長先生は、洸夜さんを無理矢理追い出したんですよね?」

 「はい」

 「ゴリ押し状態で学校を生徒を追い出してしまって、いいのでしょうかぁ~? いくら何でも、本人が非を認めていないのに退学なのは、ダメなんじゃないんでしょうかぁ~。
 私の記憶が正しければ、生徒の退学を決めるのにも手順があったはずですよぉ~」

 「・・・・・・あ」

 確かにそうだ。あの校長はいきなり証拠を突きつけて、俺を無理矢理退学させたんだ。このことが学校に知れ渡ったら、おかしいと思う人が必ずいるがはずだ。

 「まぁ私達の方でも、調べてみますねぇ~。アナタはご両親に連絡して下さい~」

 「あ、はい」

 「それと、こちらの書類にサインをお願いしまぁ~す。あっ!それと、シャチハタはご遠慮願いまぁ~す」

 「あ、はい・・・・・・」

 渡された書類にサインを書いて、印鑑を押した。

 「おめでとうございまぁ~す! これでアナタは、異世界へ留学が決まりましたぁ~! パチパチパチパチィ~~~」

 「・・・・・・ん? えっ!?」

 どうして俺は、書類に名前を書いてしまったんだろう?

 自称女神様が拍手している中、自分がしたことを後悔したのであった。
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