東京PMC’s

青空鰹

文字の大きさ
上 下
122 / 130

紫音とお店で雑談

しおりを挟む
 「そう・・・・・・そんな事があったのねぇ」

 「はい。そうなんですよ」

 次の日の放課後、いつも通りに真理亜さんのお店にやって来て仕事を終えたら、 ちょっと昨日の事に付いてお話をしましょう。 と言われたのでカウンター席に座って話している。

 「真理亜さんには、心当たりがありませんか? 何処に行ったかもとか」

 「ゴメンなさい紫音ちゃぁん。正直言ってアタシも何処へ行ったのか見当がつかないのよぉ」

 「そう、ですかぁ」

 今回は真理亜さんを当てに出来ないかぁ。

 「でも情報が入ったら、紫音ちゃぁんに伝えるから心配しなくてもいいわよぉ。もちろん情報は無料だから心配しなくていいわよぉ」

 「ありがとうございます」

 「でも、本当にどうしてビョウインを出て行ったんですかねぇ?」

 「何か目的があるから出て行ったとしか思えないっス」

 うん確かに。その線しか考えられない。

 「きっとごリョウシンも彼の事を心配していると思います」

 「それはそうと、紫音ちゃぁんは車を手に入れたのよね?」

 「ああ、はい。父さんのお下がりと言うべきですか、マスタングを取りに行きました」

 今は近くのパーキングエリアにシートを被して停めてあって、現在は天野さんが工藤さんに頼んで月額の駐車場を探して貰っている。

 「そうなんスかぁ。乗り心地はどうなんスか?」

 「ターボが付いているから加速が早いし、何よりもカスタマイズをされているから走りに関しては文句はないみたい。ただ、車内が狭いってのが人によって気になるかも。って天野さんとリュークさんが言ってました」

 「あら。シオンの感想じゃないのですか?」

 「正直言って僕は車の事に関してはわからない事だらけなので、何てコメントをすればいいのか悩むんですよね」

 僕の言葉を聞いた真理亜さん達は、 ああ~、なるほど。 と言いたそうな顔をさせていた。

 「とにかく、シオンがクルマを手に入れたのだから、ワタシの送り迎えをお願いしようかしらぁ?」

 「コニーさん、日本では学校の前までの送り迎えは理由がない限り禁止っスよ。
 田舎とかなら例外っスけど」

 「ええ~そうなんですかぁ。日本は複雑ですねぇ」

 「まぁデートぐらいでしたら、使ってもいいんじゃないっスか? 紫音さんはPMCで免除されているところがあるっスから」

 確かにそうだけど、まだ運転に慣れていないところがあるから期待の眼差しを向けないで!

 そんな事を思っていたら出入口のベルが鳴った。

 「いらっしゃい・・・・・・ってあらぁ? またアナタ達来たのぉ?」

 そう、そこには下谷さんと舞ちゃんが立って居たのだけれども、彼女達は何処か疲れたような顔をさせているのだ。

 「どうも、お邪魔します」

 「失礼する」

 「どうしてここに来たのかわからないけどぉ。お疲れでしょうからそこに座ってちょうだぁい」

 「お言葉に甘えて失礼致します」

 「・・・・・・はい」

 下谷さん達はそう言ってカウンター席に座ると、こっちを向いて来た。

 「昨日は色々やってくれて感謝するよ。園田」

 「あ、いえ。大した事はやっていないので気にしないで下さい。ところでお疲れのご様子ですが、何かあったのですか?」

 「ああ、実はな。学び舎の方で色々あってな」

 「学び舎方ってぇ、もしかして連日マスコミが張っていて生徒達に迷惑を掛けているとかかしらぁ?」

 「そうだ。生徒達に迷惑が掛からないようにとマスコミに言っているんだが、一部の人間がそれを守らないから困っているし、何よりも何処から情報を手に入れたのかわからないが、入院していた実野妓が行方不明になったのを聞き付けて大騒ぎしている状態なんだ」

 昨日の今日でもう知られているなんて。

 「それだけじゃなくて、その人達の中には生徒をしつこく追い回しているのもいたから、警察沙汰にもなったの」

 「舞ちゃんは大丈夫だったの?」

 「私も聞かれたよ。でも警察官の前だったから、そんなにしつこくされなかったよ」

 その時の事を思い出しているのか、顔をげんなりさせる。

 「もしかしたら園田の方にもマスコミが行くかもしれないから、用心しておくようにな」

 「あ、はい。わかりました」

 多分その辺の事なら、工藤さんが抱えている職員さん達が何とかしてくれていると思うから大丈夫だと思う。

 「そう言えば、密輸をしていた輩の動向に付いてキミ達は何か聞いていないのか?」

 「僕は現在調査中としか聞いていません」

 「ワタシもおネエちゃんから、探しているサイチュウで何も答えられない。と言われました」

 「そう、なんですかぁ」

 何か情報を掴んでいると思っていたのか、凄くションボリしている。

 「ところでアナタ達は、何をしにここに来たのかしらぁ? アナタのボーイフレンドの事を聞いても、アタシは何処でどうしているのか知らないわよぉ」

 「あ、いえ。私達は紫音くんに話があってここに来たんです」

 「ああ~。来たにしても、ここはお店の中だから何か頼まなきゃダメだと思うよ」

 そうしないとただ冷やかしに来たと言われてしまう。

 「そうだなぁ。グレープジュースを1つくれ」

 「私はシィくんと同じのを下さい」

 「了解よぉ~」

 真理亜さんが準備をしている中、舞ちゃんが俺の方を向いて話し掛けて来る。

 「ねぇシィくん。私と別れた後に理事長先生と会わなかった?」

 「いや、会わなかったけどぉ・・・・・・何かあったの?」

 「うん。理事長先生がね。シィくんに対して何かしようとしているの」

 「何かしようとしている?」

 首を捻っている紫音に対して、コニーさんはヤレヤレといった感じの顔をしている。

 「オソらくシオンにどうやって責任を擦り付けようか考えているんじゃないかと、ワタシは思います」

  「あのクソババアの考えている事は大抵ロクでもないからな。その考え方は間違いじゃないかもな」

 下谷さんが遂に自分の上司をクソババア呼ばわりした。

 「紫音さんに責任を擦り付けるぐらいなら、自分の部下に擦り付けた方が早いと思わないんスか?」

 「そうしたら自分がやって来た事を暴露されると思っているから、立場上弱いと思っている紫音ちゃぁんに責任を擦り付けようとしているのかもしれないわねぇ。
 はい、頼んだ飲み物よぉ」

 「立場上って、僕の上司に当たる人達はリトアさんや天野さん。それに工藤さんとかPMCの人達だから、責任どうのこうのって話は無理があると思いますよ」

 「そうっスね。例えるなら自分の企業で犯したミスを 他社のせいだ。 って言ってるぐらい無理があるっスね」

 う~ん。わかるようでわからない例えだなぁ~・・・・・・。

 「とにかく、阿佐間理事長がお前の目の前に現れる可能性があるから、用心深くしていろ。アイツには常識って言葉が通用しないからな」

 「あ、はい。わかりました」

 確かに、あの理事長に話の通じないところを感じていた。

 「まさかとはオモいますが、アサマがここに来てシオンに話をしたりしませんよね?」

 「わからないわよぉ。あの阿佐間って理事長は裏ではとんでもない事をやっているって噂だからねぇ~」

 「裏でとんでもない事?」

 「そうよぉ。あくまでも噂程度の話なんだけれどもぉ。阿佐間理事長はお金を横領しているって噂があるからねぇ~」

 その言葉を聞いた下谷さんは、何か考えるような素振りを見せる。

 「下谷さん。どうしたんですか?」

 「あっ! いや何。ちょっと考え事をしていただけだ。気にしないでくれ」

 下谷さんはそう言うと、頼んだグレープジュースを飲んだ。

 「私からの話は以上だ。園田は私に対して何か聞きたい事があるか?」

 「僕からは何もないですよ」

 「そうか。私は仕事が残っているから失礼するよ」

 下谷さんはそう言うと、会計を済ませてお店を出て行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

僕のおつかい

麻竹
ファンタジー
魔女が世界を統べる世界。 東の大地ウェストブレイ。赤の魔女のお膝元であるこの森に、足早に森を抜けようとする一人の少年の姿があった。 少年の名はマクレーンといって黒い髪に黒い瞳、腰まである髪を後ろで一つに束ねた少年は、真っ赤なマントのフードを目深に被り、明るいこの森を早く抜けようと必死だった。 彼は、母親から頼まれた『おつかい』を無事にやり遂げるべく、今まさに旅に出たばかりであった。 そして、その旅の途中で森で倒れていた人を助けたのだが・・・・・・。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ※一話約1000文字前後に修正しました。 他サイト様にも投稿しています。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...