東京PMC’s

青空鰹

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紫音とバイク集団

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 会議が始まってから30分。画面に映る人達と、あーでもない。こうでもない。と話し合い続けて、納得がいく形になったところで目の前にいる岡喜社長が話をまとめた。

 「・・・・・・と言う事で、今後は進めて行こうではないか。まぁ途中で何かあれば1人で悩まずに話しをする様にのぉ」

 『わかりました。それで社長。一つお聞きしたい事があるのですが、聞いてもよろしいでしょうか?』

「ん? 何じゃ?」

 『社長のご自宅に脅迫文らしき物が送られて来たと聞きましたが、会社にいらして大丈夫なのですか?』

 どうやら社員達も心配しているようで、画面に映ってしている他の社員達も頷いていた。

 「今のところは襲われておらぬから大丈夫じゃよ」

 『しかし社長! 我々は心配です!』

 「その点は心配せんでええぞ。PMCに依頼して護衛を就けて貰っておる」

『PMC・・・・・・ですか?』

 「ああ、画面には映っとらんがワシの近くにおるぞ」

 『そう、ですか。それでしたら安心してよさそうですね』

 「うむ、他の者もワシの事は気にせずに仕事をするようにの」

 『『『はい!』』』

 「それじゃあ今日の会議を終わるとするかい。お疲れ様」

 『『『『お疲れ様でした!』』』』

 岡喜社長はそう言うと、チャット切りノートパソコンの電源を落とした。

 「あの仕事が順調に進んでおってよかったわい」

 「あの仕事って、一体何なんですか?」

 「企業秘密の事案じゃから、教える事が出来んよ」

 「あ、そうなんですか」

 お爺さんはノートパソコンを元にあった場所に戻すと僕達のところまでやって来た。

 「さて、仕事も終わった事じゃし家に帰るとするかのぉ」

 「もう帰るのですか?」

 「そうじゃ。今日は会議だけじゃからな。後は家に帰るしかないんじゃよ」

「そうですかぁ。俺とリュークが先行するから、紫音とリトアは岡喜社長の護衛をするんだ」

 「「了解!」」

 天野さん先導の元で廊下を歩き、エレベーターの近くにやってくるとボタンを押して待つ。

 「エレベーターから離れていて下さい」

 「どうしてじゃ?」

 「エレベーターが開いたのと同時に襲ってくる可能性があるので」

 「そうか」

 岡喜社長はリトアさんの指示通りエレベーターから離れて、天野さんとリュークさんは先にくると思われる個所で、エレベーターの両脇に隠れて銃を身構える。

 「・・・・・・そろそろくるぞ」

 「うん!」

 エレベーターの扉が開いたのと同時に、天野さんとリュークさんは中を覗き込む。

 「クリア。中に入れ」

 天野さん達に続く様にしてエレベーターに乗り込み駐車場がある地下1階へとやって来た。その後に僕とリトアさんが社長のクラウン、天野さんとリュークさんがピックアップトラックと朝と同じ形で乗り込んだ。

 「先に彼らが出て外の状況を見るので、通信が入るまで待機していた下さい」

 「わかりました」

 リュークさんが運転するピックアップトラックが先に駐車場から出て行った。その少しした後に出て来ていいぞ。と連絡が入って来た。

 「大丈夫そうなので、出て構いません」

 「わかりました。出発します」

 運転手はそう言ってから、クラウンを発進させて地上で待っている天野さん達車の側に停める。

 「あの、朝の時のように先に先行して頂けると有り難いのですが」

 「あ、そうなんですか? てっきり彼らが先導してくれるのだとばかり思っていました。今、車を出しますね」

 「とりあえず、彼らが追えるような運転でお願いします」

 「かしこまりました」

 運転手はそう言うと車を発進させる。

 「今のところ何も起きませんね?」

 「そうね。このまま何も起きずに自宅まで行ければいいんだけど」

 「それは若者の間でよく言うフラグ、じゃったかのぉ? まぁ良きせぬ前兆の言葉じゃないかのぉ?」

 うん、その言葉をよくご存知ですね。誰から聞いたんだろう?

 「・・・・・・ん?」

 「どうしたのですか、リトアさん?」

 リトアさんがトランシーバーのボタンを押しながら真剣な顔付きで話し始めた。

 「左車線の後方からバイクの集団が来ているわ」

 『左車線後方? 了解、確認する』

 僕もそのバイクの集団が気になるが、リトアさんと反対側にいるので見れない。

 『・・・・・・確認した。数は6人。バイクも同じ数。お前達の車を見て何かを話しているから怪しいぞ。警戒しろ』

 「了解、天野。岡喜社長、戦闘になるかもしれないので、姿勢を低くしていてくれますか?」

 「わかった。言う通りにするわい」

 岡喜社長はそう返事をすると、頭を抱えて丸まった。

 「運転手の方は、なるべく信号に捕まらないようにして下さい」

 「わ、わかりました!」

 運転手さんはちょっと恐いのか、声が震えていた。

 「シオンくん、いつでも戦えるように準備をしていてね」

 「はい!」

 返事をしてからすぐにバイクの集団が僕達の乗るクラウンを逃さないように取り囲んだ。

 『2人共、仕掛けて来るぞ!』

 「わかっているわよ!」

 リトアさんがそう返事をした瞬間、傍にいるバイカーが上着に手を突っ込みGLOCK19らしき銃を取り出してこっちに向けて来たので、 H&K UMP45を窓越しに向けて先にフルオートを叩き込んで倒した。
 その様子を見ていた仲間は危機感を感じたのか、クラウンから距離を取るがられてしまった仲間のように拳銃を取り出して発砲して来た。

 「ヒッ!? ヒィイイイイイイッ!!?」

 「運転手さんアクセル踏んで!」

 「止まったら、こっちが殺されるわよ!」

 「言われた通りにするんじゃ!」

 「は、はいぃっ!」

 社長の一声のお陰か運転手はアクセルをベタ踏みして加速させる。急な加速のせいだったのか、前にいた1台のバイクが避け切れずに車と接触してしまい、横転してしまった。

 『よし、運転手のお陰で残りは後4台だ。ちょっと待っていろ』

 天野さんはそう言うと、クラウンの左側に来て並走を始めた。

 『左側のヤツらは俺がる!リトアは後! 紫音は右側だ』

 「了解! シオンくん、お願いね!」

 「了解です!」

 そうは言われたものの僕が任された方に敵がいないので何もする事がないが、けたたましい銃声中で男の叫び声と共に ガシャンッ!? ガシャンッ!? と音がしたので、恐らく天野さんかリトアさんが2台死止めたんだと思う。

 「ちょこまかと動くわね!」

 後を見つめて見ると、クラウンの真後ろにいる方がリトアさんに狙いを付けられないようにバイクが蛇行運転をしてしている。

 「ああ~もう!? 鬱陶しいわねぇっ!!」

 右に行くバイクを狙ったら今度は左に行き、また追い掛け狙ったら反対側に行くので、もどかしさの余りリトアさんがブチ切れてしまっている。

 「僕に任せて下さい!」

 紫音はそう言ってホルスターから S&W M327 R8 を抜き構えると、蛇行運転しているバイクの前輪に狙いを定めるが、相手も紫音の狙いに気付いたみたいで蛇行運転を続ける。

 タイミングは一つだけ!

 右端から体勢を戻そうとしたその瞬間、トリガーを引き弾頭を発射させる! その発射された弾頭はバイクの前輪タイヤにぶち当たり破裂させた!

 「うわっ!? マズッ・・・・・・うわぁっ!?」

 前輪のタイヤを失ってしまった運転手はバランスを崩してしまい、コンクリートに叩き付けられるようにして転倒してしまった。

 「やるわねシオンくん! 天野、残りは1っ匹よ!」

 『わかったが、相手は人間だから1っ匹じゃなくて1人だ!』

 そう言いつつも倒そうとしているのか銃声が聞こえて来た。

 「あっ!?」

 「運転手さん、どうしたんですか?」

 「赤信号なので、止まります!」

 「ええっ!?」

 こんな大変な時に止まるって!

 「ちょっとぉ!? そんな悠長な事ぉわっ!?」

 リトアさんが抗議している途中に急ブレーキ気味に止まったので、僕とリトアさんは前の座席にぶつかってしまった。
 ピックアップトラックを運転していたリュークさんも、クラウンがブレーキした事に気付いて止まったのだが、天野さんと交戦していたバイクの運転手だけが遅れて気付いたのでピックアップトラックの横を猛スピードで通り過ぎて交差点に突っ込んでしまった。

 「イタタタタ・・・・・・シオンくん大丈夫?」

 「僕は平気です。リトアさんは?」

 「平気よ。それよりも敵は?」

 あ、そうだった!

 警戒しつつ顔を上げて周囲を見て見ると、何と先程天野さんと交戦していたバイカーが横断途中と思われる大型トラックの荷台に思いっきりぶつかったのかコンテナに凹みを作り、その側でグッタリとしていた。

 「・・・・・・どうやらあの大型トラックに追突してしまったようじゃのぉ」

 「そう・・・・・・ですね」

 運転手がブレーキを踏んでいなかったら、もしかしたら僕達があのトラックに突っ込んでいたかもしれない。

 背筋をゾッとさせながらも、クラウンを運転する運転手の賢明な判断に感謝をする紫音であった。
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