東京PMC’s

青空鰹

文字の大きさ
上 下
38 / 130

紫音と体力測定

しおりを挟む
 着替え終わった人から順番にクラスメイト出て来て、廊下に全員出たところで筒城先生が声を掛けて来た。

 「名前を言うから、言われた順番に男子女子1列に並んで!」

 そう言ってから苗字を言って行くが、僕の名前を言う時だけこちらを睨んで来たが、正直言って前に死ぬような思いをしてからは睨まれたぐらいじゃ動じなくなった。

 「先生、僕を睨まないで貰えませんか? 何も悪い事をしてないので」

 「・・・・・・ゴメンなさい。気を付けるわ。みんな、私に付いて来て下さい」

 筒城先生はそう言い、歩き出すが不機嫌そうなのが丸わかりだ。

 どうして僕にあんな態度を取るんだろう?

 「アナタ、PMCなんだって?」

 「ん、そうだよ」

 僕の隣にいた女子が話し掛けて来たので、そう言った。

 「もしかして、人を殺したの?」

 「それは・・・・・・撃たれた事はあるけど、まだ殺した事はない」

 僕は嘘を吐いた。だって正直に言ったら、どう思われるか恐い。

 「へぇ~、そうなんだぁ。その持っている銃も本物?」

 「本物だよ」

 そう言ったら、興味深そうにUMP45を見つめて来た。

 「何か、オモチャみたいな銃」

 「この銃は外装が樹脂だから、そう見えても仕方ないね」

 「ふぅ~ん、樹脂を・・・・・・」

 そう言って触ろうとして来たので、スゥッと下げる。

 「その、PMCの規定上、緊急時以外一般の人に銃を触らせないように。ってのがあるから触らないで欲しい」

 「あ、ゴメン」

 「今度からは気を付けてね」

 あのまま触らせていたら、僕が工藤さんに怒られる可能性がある。だってスマートウォッチを通して、全部聞かれているんだもん。

 「そこの2人、静かにしなさい」

 筒城先生に怒られたので、 はい、すみません! と言って、そのまま校庭まで出た後に、準備体操をした。

 「まず最初に、走り幅跳びをします順番に飛んで」

 この装備のまま飛ぶのかぁ・・・・・・。

 記録が伸びないのが丸わかりだったので、飛んでみたら65cmしか飛べなかった。何でかって? 銃に砂が付くのを避ける為に、着地しても立ったままの状態をキープ出来るような飛び方をしたからである。

 「次、このボールを投げて!」

 遠投の方は装備が邪魔して上手く投げられないので、記録を伸ばす為に砲丸投げのような投げ方。つまりグレネードの投げ方をして記録を伸ばした。
 短距離走でも装備がウエイトになってしまい、下から数えた方が早いぐらいの記録になってしまった。反復横跳びも、同じような感じになってしまった。

 『シオン、お前さんの記録散々結果だな』

 「仕方ないですよ! こっちは装備を付けたままやっているんですから!」

 無線を使って話して来るオズマさんにそう言ったら、周りにいたクラスメイト達がビックリした様子でこっちを見ていた。

 『ところでシオン。校門の向かい側に黒いセダンが停まっている』

 黒いセダン?

 視線だけ移して確認して見ると、確かに校門の向かい側に黒いセダンが停まっていた。

 昨日の朝に僕が見たセダンに似ている。

 『あのセダンは、犯人が乗っていたものと似ておる。もしかしたら犯人の車かもしれないから、そっちに神崎を向かわせるから、2人で様子を窺って来て貰えんか?』

 「わかりました。確認して来ます」

 僕はそう言うとUMP45のコッキングハンドルを引いてから、筒城先生を見つめる。

 「ちょっと同僚の方に呼ばれたので行って来ます」

 「え、ちょっと・・・・・・」

 「仕事なので」

 先生にそう言ってから、黒いセダンへと向かう。

 「こちら紫音、セダンに動きがありません」

 『了解。校門の前で待機しろ。俺が来るまでそこにいろ』

「了解、校門の前で待機します」

 オズマさんにそう伝えたら、校門の前まで行きそこで待機する。

 『こちら神崎、紫音から見て9時方向から接近している』

 左を見ると神崎さんがこっちに向かって走って来るのが見えた

 「了解。こちらからも神崎さんの姿を確認しました。合流したら取り掛かりましょう」

 『了解』

 セダン型の車の警戒をしていると、神崎さんが側まで来た。

 「紫音、首尾は?」

 「中に人がいるようなのですが、動きがありません」

 「そうか、紫音くん。注意しながら近づくぞ」

 「はい」

 そう返事をしてから目標へと近づくが、途中で気が付いた。

 う~ん? あの車から独特の臭いがしない。

 「あの、神崎さん。多分違うと思います」

 「ん? どうしてだ?」

 「あの車から、犯人の臭いがしません」

 そう、車にはドアとかに隙間があるので、そこから臭いが漏れ出すだ。あの強烈な臭いなら、絶対に気付かないわけがない。

 「そうか。お前鼻がいいもんな。でも警戒は解くなよ。共犯者の可能性があるからな」

 神崎さんはそう言うと車に近づき、運転手側の窓ガラスを手で軽く叩く。するとこっちを中にいた人が向いた。

 「すみません。PMCの者なのですが、ちょっとお話をいいですか?」

 『あ、はい!』

 中にいた人はそう言うと、ドアミラーを下げて顔を出す。

 うん。臭いどころか体型自体違うから、この人は犯人じゃない。 神崎さんが職質をしている間、そう思うのであった。

 「・・・・・・そうですか、ここ昨日ここ周辺で家を襲った犯人が目撃されているので、注意して下さいね」

 「あ、わかりました。気を付けます」

 彼はそう言うと車を出して、何処かへ行ってしまう。

 「紫音くん。さっきも言ったけど、臭いが違う理由で気を緩めたりしてはいけないよ。下手したらあの人が、犯人の協力者の可能性もあるかもしれないから」

 確かにその可能性もあった。それに付いては僕の反省点である。

 「ご、ゴメンなさい! ファッ!?」

 神崎さんが耳を触って来た。

 「えっとぉ・・・・・・神崎さん?」

「今度やったら、もっと激しく揉むからね」

 それは困る。

 「それじゃあ、学校に戻って授業を受けて来なさい」

 「はい!」

 マガジンを抜いて、銃本体に入っている弾をコッキングして取り出してから空撃ちをする。そして銃本体から出て来た弾をマガジンへ装入したら、マガジンを差し込んでから校庭へ戻って身体測定の続きを受けた。
 その後も警戒していたのだが一行に現れなく、放課後になってしまった。

 「結局、犯人現れませんでしたね」

 『“今日は” だ。明日来る可能性もあるからな、気を引き締めてろよ』

 「はい」

 確かにリガードさんの言う通り犯人は犯行声明を出してないのだから、いつ襲ってくるのかわからない。

 『一応言っておくが帰り道に犯人とバッタリ合う可能性もあるからな、周囲に警戒しつつ帰れよ』

 「あ、はい。わかりました」

 その後も 寄り道がどうのこうの。 とか言って来たので、 はい。わかりました。 と言う姿を真奈美さんが見て笑っていた。

 「フゥ~・・・・・・やっと終わった」

 神崎さんとリガードさんは何で説教がましく言って来たんだろう? と思っていると、真奈美さんがチョンチョンと僕の背中を突いて来た。

 「話はもう終わりましたか?」

 「はい、終わりました」

 「紫音さんはもう帰るのですか?」

 「はい。あ、でも。帰ってから、天野さん達と仕事に出ますけどね」

 出没した場所を中心に犯人の探索と警戒の仕事。それが僕の仕事である。

 「そう、紫音さんも大変ですね。応援しています」

 「ありがとう。そう言って貰えると助かるよ」

 それと、尻尾を掴んでいる手を離して欲しい。背筋がゾクゾクするから。

 「ちょっと待ちなさい、大園くん」

 「ん? 何ですか筒城先生?」

 「「私をアナタのお宅へ連れて行って貰います」」

 「・・・・・・はい?」

 僕どころか真奈美さんも 何で? と聞きたそうな顔で筒城さんを見つめる。

 「アナタの保護者と個人面談を行おうと思います」

 「それは無理です!」

 担任なのに、もしかしてこの人は僕の事情を知らないの?

 「えっとぉ、僕に保護者がいない事を、他の方から聞いてませんでした?」

 「でも、同居をしているのでしょう? だったらその人と話をしたいです。だから連れて行って下さい」

 「その人に迷惑を掛けるわけにはいかないので、すみませんが諦めて下さい」

 そんな事をしたら、本当に追い出されちゃうから! って言いたいんだけど、ヒートアップしそうだし・・・・・・。

 「連れて行きなさい」

 「あのぉ~、後日お伺いするという形に」

 「今日がいいです」

 その後も行く。無理です。と言い争うが、工藤さんからスマートウォッチ通達で、 ラチが明かないから、連れて行ってやれ。 と言われたので渋々連れて帰る事になった。

 学園生活2日目にして、帰り道の足取りが重いのは何でだろう。答え、筒城先生が天野さんの事務所に付いて来るから。

 「あの、どうしても会うのですか?」

 「ええ、教師として見過ごせませんから!」

 「先生は他の教員の人から、僕の事を聞いたんですか?」

 事情を知っているのなら、こんな事はせずにやんわりと 辞めた方がいいんじゃないの? と言って来るんじゃないのかな?

 「知ってるからこそ、アナタを救いたいと思っているのです! だから先ずはアナタがPMCとして活動させないよう、その人達に頼もうと思います」

 この人頭大丈夫なのかなぁ? 僕からして見ればお門違いの考え方をしている気がする。

 「あのですねぇ・・・・・・ん?」

 この臭いは!

 言葉の途中で周囲を気にしながら鼻をスンスンと動かし始めたので、 筒城先生が 何をしているんですか? と言って来るが気にせず周囲を見渡す。

 「ッ!?」

 いた。あの特徴的な体型に黒いパーカー、昨日のままの姿でいた。そしてその人はバックの中身を取り出そうとしているのか、手を突っ込みながらこっちに向かって歩いて来る。

 「筒城先生」

 「何?」

 「隠れて!」

 「えっ!?」

 筒城先生の手を引っ張って十字路の塀の裏へ隠れた瞬間、激しい発砲音が聴こえるのと同時にブロック塀から土煙が上がる。そうフルオートで撃ち込まれている状態だ。

 「きゃああああああああああああっっっ!!?」

 「こちら紫音。緊急事態発生! 犯人が発砲をして来た! 繰り返します! 犯人が発砲をして来た!」

どうして犯人が僕の目の前に、まさか僕が狙い? と思いながらUMP45を構え、反撃のチャンスを窺う。

 「見つけたぞぉぉぉおおおおおお、クソアマァァァアアアアアアアアアアアアッッッ!!?」

 「クソアマ?」

 クソアマって事は、ひょっとして犯人のターゲットって筒城先生なの?

 怯えた表情させながら、丸まっている筒城先生を見つめた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

王妃の手習い

桃井すもも
恋愛
オフィーリアは王太子の婚約者候補である。しかしそれは、国内貴族の勢力バランスを鑑みて、解消が前提の予定調和のものであった。 真の婚約者は既に内定している。 近い将来、オフィーリアは候補から外される。 ❇妄想の産物につき史実と100%異なります。 ❇知らない事は書けないをモットーに完結まで頑張ります。 ❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

処理中です...