32 / 130
エピローグ 真実の行方
しおりを挟む
羽田空港のPMC本部のデスクでサラは数枚の資料を読んでいるが、とても辛そうな顔をしていた。
「サラ、お前またその資料を見ているのか?」
「主任! これはその・・・・・・」
「何も言わなくてもいいぞ。俺もそれに目を通しているから、大体の事情はわかっている」
「そうですか・・・・・・」
彼女は悲しそうな顔をさせながら目を伏せた。工藤はその肩にポンッと手を乗せた。
「お前が気にする事じゃないから、仕事に戻るんだ」
「ですが主任、もっと他にやりようがあったのではないでしょうか? あのヤマと名乗る男が、孤児院にいたシロちゃんの父親で、それで、そのぉ・・・・・・」
「ハァ~・・・・・・」
工藤は頭を掻くと、真剣な顔つきでサラに話し始めた。
「いいか、紫音にも言った事なんだが、この事が世間に知られたらどうなると思うんだ? 恐らくそのシロと言う子がとても辛い思いをするだろう?
それに自分の実の父親が殺し屋と知ったら、どうなると思う?」
その言葉を聞いたサラは考えてもなかったのか、暗い顔をして目を左右に動かした。その隙を突いて工藤は手に持っている資料を奪い取った。
「だから、こうしておけば安心だ」
そう言うと、資料をシュレッターに掛けた。
「しゅ、主任っ!?」
「彼は冷酷な殺し屋だった。それだけ書けばいい。それで丸く納まる。それに・・・・・・紫音と彼の望みでもあるからな」
真剣は顔をさせながら言う工藤に対して、サラは何も言えなかった。
「・・・・・・わかりました」
サラはそう言うと、デスクトップに向かい作業を再開させた。その姿を見た工藤は フッ と笑った後にその場を後にした。
「よぉ主任」
やる気のない顔をさせながら、仕事以外ダメ人間な男がこっちの向かって来た。
「天野か」
「これから煙草を吸いに行くんだが、一緒に行くか?」
「そうだなぁ。煙草は吸わないが付き合ってやる」
工藤自身も、 天野は俺に何か話したい事がありそうだからな。 と感じ取っていたので、そのまま喫煙所へと向かう。
「紫音の方はどうだった?」
「紫音? ああ、肋骨の2本に軽くヒビが入っていたが、大人しくしていれば治るから安心していい」
天野はそう言ってから、煙草に火を付けた。
「違う、俺が気にしているのは紫音のようすだ。変わりないか?」
「ん、ああそっちか。最初の内は落ち込んでいたが、今は大丈夫だ。むしろ逆にやる気になっている」
「やる気になっている」
どういう事なんだ? と言いたそうな顔をしていると、天野は自分で吹かした煙を見つめながら語り始めた。
「アイツに何を言われたのか知らないが、 もう後悔をしたくない。 って言って訓練をしようとしていたな。
まぁ、身体がヤバイ状態だから止めたけどな」
「そうかぁ、紫音がねぇ・・・・・・昔のお前のようだな」
「バカを言うな。昔の俺の方がマシだった」
工藤は、 コイツ、自分の事を持ち上げようとしているな。 と呆れた。
「でもまぁ、引き篭もっているよりはマシか。紫音が治ったらに色々と教えなきゃいけないから、めんどくせぇな」
「そう言う割には嬉しそうじゃないか」
「・・・・・・嬉しくねぇ。そろそろ帰るとするか」
「そうか、気を付けて帰れよ」
背を向けて手を振る姿を見つめながら、 照れやがって。 と思うのであった。
「主任、ここにいたのですか! 探しましたよ!」
そう言いながら、一人の男が走って近づいて来る。
「あ、どうしたんだ中田」
「私が担当していた例の人探しの依頼なんですけど、不審な事がわかりまして」
「不審な事? 一体何だ?」
眉を潜めながらそう言うと、中田は3枚の画像をプリントした物を差し出して来た。
「この資料を見て下さい」
「これか?」
プリントされた物を見てみると、コンビニで買い物をしている行方不明者、と言うよりも依頼主の旦那だ。
「これがどうした?」
「なくなったと思われる当日の夜に、コンビニに入って買い物をしていたんですよ。防犯カメラでも確認したので間違いないです。その次の写真を見て下さい」
2枚目を見ると、画像が少し荒いがレジ袋を持ってコンビニの脇道へ行こうとする姿が写っていた。
「コンビニの向かい側にある民家が捕らえた映像をプリントしたものです。少し画像が荒いですがコンビニの画像と照らし合わせて見ても、本人に間違いないでしょう。
重要なのは3枚目です」
3枚目のプリントを見て、工藤は顔色が変わった。
「おいおい、まさかこれって」
「私も見たときは驚きました。不倫とかを想定していましたが、まさかこんな事になっていたとは」
驚くのも当然、何とそこには何者かに拉致される寸前の画像がそこにあったのだ。
「どうしますか、主任」
「警察にも連絡を入れて、独自でも捜査する。そして人員を増やして対策チームを作る。お前が士気を取れ」
「はい」
「彼の命が危ないな。出来るだけ早く見つけ出すんだ。いいな?」
「わかりました。それでは!」
彼はそう言うと、本部に向かって走り出したのだった。
「サラ、お前またその資料を見ているのか?」
「主任! これはその・・・・・・」
「何も言わなくてもいいぞ。俺もそれに目を通しているから、大体の事情はわかっている」
「そうですか・・・・・・」
彼女は悲しそうな顔をさせながら目を伏せた。工藤はその肩にポンッと手を乗せた。
「お前が気にする事じゃないから、仕事に戻るんだ」
「ですが主任、もっと他にやりようがあったのではないでしょうか? あのヤマと名乗る男が、孤児院にいたシロちゃんの父親で、それで、そのぉ・・・・・・」
「ハァ~・・・・・・」
工藤は頭を掻くと、真剣な顔つきでサラに話し始めた。
「いいか、紫音にも言った事なんだが、この事が世間に知られたらどうなると思うんだ? 恐らくそのシロと言う子がとても辛い思いをするだろう?
それに自分の実の父親が殺し屋と知ったら、どうなると思う?」
その言葉を聞いたサラは考えてもなかったのか、暗い顔をして目を左右に動かした。その隙を突いて工藤は手に持っている資料を奪い取った。
「だから、こうしておけば安心だ」
そう言うと、資料をシュレッターに掛けた。
「しゅ、主任っ!?」
「彼は冷酷な殺し屋だった。それだけ書けばいい。それで丸く納まる。それに・・・・・・紫音と彼の望みでもあるからな」
真剣は顔をさせながら言う工藤に対して、サラは何も言えなかった。
「・・・・・・わかりました」
サラはそう言うと、デスクトップに向かい作業を再開させた。その姿を見た工藤は フッ と笑った後にその場を後にした。
「よぉ主任」
やる気のない顔をさせながら、仕事以外ダメ人間な男がこっちの向かって来た。
「天野か」
「これから煙草を吸いに行くんだが、一緒に行くか?」
「そうだなぁ。煙草は吸わないが付き合ってやる」
工藤自身も、 天野は俺に何か話したい事がありそうだからな。 と感じ取っていたので、そのまま喫煙所へと向かう。
「紫音の方はどうだった?」
「紫音? ああ、肋骨の2本に軽くヒビが入っていたが、大人しくしていれば治るから安心していい」
天野はそう言ってから、煙草に火を付けた。
「違う、俺が気にしているのは紫音のようすだ。変わりないか?」
「ん、ああそっちか。最初の内は落ち込んでいたが、今は大丈夫だ。むしろ逆にやる気になっている」
「やる気になっている」
どういう事なんだ? と言いたそうな顔をしていると、天野は自分で吹かした煙を見つめながら語り始めた。
「アイツに何を言われたのか知らないが、 もう後悔をしたくない。 って言って訓練をしようとしていたな。
まぁ、身体がヤバイ状態だから止めたけどな」
「そうかぁ、紫音がねぇ・・・・・・昔のお前のようだな」
「バカを言うな。昔の俺の方がマシだった」
工藤は、 コイツ、自分の事を持ち上げようとしているな。 と呆れた。
「でもまぁ、引き篭もっているよりはマシか。紫音が治ったらに色々と教えなきゃいけないから、めんどくせぇな」
「そう言う割には嬉しそうじゃないか」
「・・・・・・嬉しくねぇ。そろそろ帰るとするか」
「そうか、気を付けて帰れよ」
背を向けて手を振る姿を見つめながら、 照れやがって。 と思うのであった。
「主任、ここにいたのですか! 探しましたよ!」
そう言いながら、一人の男が走って近づいて来る。
「あ、どうしたんだ中田」
「私が担当していた例の人探しの依頼なんですけど、不審な事がわかりまして」
「不審な事? 一体何だ?」
眉を潜めながらそう言うと、中田は3枚の画像をプリントした物を差し出して来た。
「この資料を見て下さい」
「これか?」
プリントされた物を見てみると、コンビニで買い物をしている行方不明者、と言うよりも依頼主の旦那だ。
「これがどうした?」
「なくなったと思われる当日の夜に、コンビニに入って買い物をしていたんですよ。防犯カメラでも確認したので間違いないです。その次の写真を見て下さい」
2枚目を見ると、画像が少し荒いがレジ袋を持ってコンビニの脇道へ行こうとする姿が写っていた。
「コンビニの向かい側にある民家が捕らえた映像をプリントしたものです。少し画像が荒いですがコンビニの画像と照らし合わせて見ても、本人に間違いないでしょう。
重要なのは3枚目です」
3枚目のプリントを見て、工藤は顔色が変わった。
「おいおい、まさかこれって」
「私も見たときは驚きました。不倫とかを想定していましたが、まさかこんな事になっていたとは」
驚くのも当然、何とそこには何者かに拉致される寸前の画像がそこにあったのだ。
「どうしますか、主任」
「警察にも連絡を入れて、独自でも捜査する。そして人員を増やして対策チームを作る。お前が士気を取れ」
「はい」
「彼の命が危ないな。出来るだけ早く見つけ出すんだ。いいな?」
「わかりました。それでは!」
彼はそう言うと、本部に向かって走り出したのだった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
己等は犬の冒険者
和蔵(わくら)
ファンタジー
己等は冒険探索犬の葉月だ!
己等の犬種は秋田犬!ご主人様と世界中を飛び回り
冒険の旅をしてる途中に、不幸な事故に会ってしまた。
そのまま、あの世行きと思っていたのだが、どうも
違うようである。何故ならば.....己等は.....
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる