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ブンゼの取り引き!

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 突然個室に入って来たブンゼは俺を見掛けるや否や、ニタリと気持ち悪い笑みを浮かべながら目の前にやって来た。

 「おい小娘! 金を用意して来た! これで満足だろうっ‼︎」

 そう言い切るとテーブルの上に袋を乱雑に置いたので、その態度にムカッと来た。

 「…要らないから帰ってくれ」

 「これでも足りないと言うのか! 強情な小娘めっ!」

 「だからお前話聞いてたぁ? ルル達を売るつもりは一切ないって!」

 「うるさい! 俺が売れと言っているのだから売れ!」

 「何さまのつもりだよ」

 「グルルルル……」

 ルルが「噛み付いてもいい?」と言いたそうに唸り声を上げる。

 「ルル、そんなことしたら返って面倒なことになるから止めてくれ」

 「……キャンッ⁉︎」

 ルルは「……わかった」と言いたそうな鳴き声を上げると、ミレイさんの下へと行った。

 「~~~♪」

 ファニーちゃんも「イヤな人!」と言いたそうな声を出し、ルルと同じようにミレイさんの下へ行ってしまった。

 「フンッ⁉︎ これだから礼儀も知らない小娘は……」

 「礼儀を知らないのはキミなんだなぁ」

 後ろから話し掛けられたブンゼは、ビックリした様子で振り返ってゼラフの顔を見つめる。

 「ゼラフ、何の用だ!」

 「何の用って言われても、キミがこのお店で好き勝手なことをしているから止めているだけなんだなぁ」

 「小娘と俺の問題だから、貴様は関係ないだろっ‼︎」

 「カイリくんはボクのお店に来ているお客様の1人だから、大切に扱ってお持て成しするのがボク達の役目なんだなぁ。
 だからお店に来ているお客様に迷惑を掛けているキミに対応するのは当たり前のことは、オーナーであるボクにとって当たり前ことなんだなぁ」

 ゼラフさん……かっこいい男になったね!

 カイリがそんなことを思っている中、ブンゼの方はゼラフの言葉が癇に障ったのか、拳を握りしめてブルブル震え出した。

 「食うしか脳のないデブが、この俺にものを言うかぁ……」

 「キミだって太ってるじゃないか。それに交渉する際は袋の中身を見せるのと金額を言わなきゃいけないって基本も忘れてるんだなぁ」

 プルンッ⁉︎

 プル太郎が「そんな基本があるの?」と言いたそうな感じで震えた。

 「うん…商人のゼラフさんが言うんだから、そうじゃないか」

 プルンッ⁉︎

 プル太郎が「そうなんだぁ~」と言った後、目の前に置いている食事を食べた。

 「くぅ~……金額は22万レザだ」

 「錬金術ギルドで提示された金額は26万レザだったよな? そのときよりも下がってんじゃん!」

 一体どういうことなんだ?

 「えっとぉ……それは…だな…………」

 カイリの疑問に対して、ブンゼの額から汗が流れ出て来て目が左右に泳いでいるし。

 「…………俺はそんなことを言ってない」

 「ハァ?」

 何言ってるんだコイツ?

 「オイオイ……こんなんじゃ話にすらならないよ」

 「う、うるさい! 俺はそんなことを言った覚えがない! 22万レザ! さっさと受け取れっ‼︎」

 そう言ってテーブルに置いた袋を再度持つと、袋を取れと言わんばかりに突き出して来た。

 コイツやっぱウゼェ!

 なんて思っていると、サニーさんが席から立ち上がった。

 「いいえ。私その時の話を聞いていて、26万レザを払うって言っていたわよ!」

 「なぁっ⁉︎ …そんな証拠は……」

 しどろもどろになっているブンゼに対して、サニーさんは目の前へと詰め寄る。

 「証拠? 証拠ならあの場にいた人を集めて聞けばいいんじゃないかしら?」

 「フ…フンッ⁉︎ キサマの圧力でそう言わせるつもりなんだろ」

 「最低なアナタと一緒にして貰わないで。それに……こんな金額しか出せないとなると、あの噂は本当のようねぇ」

 あの噂?

 「あの噂って、一体何なんだ?」

 「ブンゼ商会は今までやって来たことが明るみになって来てるの。だからこのままだと被害に遭った人から訴訟される可能性があるらしいの」

 サニーさんの代わりにミレイさんが答えた。

 「そして売った相手からも粗悪品を渡していたのが発覚して、商品を買ってくれる人がグンと下がっちゃったみたいなんだよ」

 「粗悪品」

 そりゃ粗悪品を故意に渡したら問題になるだろうなぁ。

 「うっ……そんなのデタラメに決まってるだろう!」

 「現にこうやって押し売りしている時点でデタラメとは言いづらいんじゃないか?」

 ブンゼは図星なのか、一歩下がった。

 「そんなことよりも、早くお店を出た方がキミの為になるんだなぁ」

 「俺の為? 一体どういうことだ?」

 「ボクは兵士にお店で迷惑なことしている商人がいる。って伝えようとしているから、兵士が来たらキミは捕まると思うんだなぁ。
 それにこのまま引き下がらないと、錬金術ギルドの方も出禁になっちゃう可能性があるんだなぁ」

 ゼラフのその言葉にブンゼは顔を青ざめさせる!

 「いや、そのぉ……し、失礼する!」

 ブンゼはそう言うと袋を懐に入れ、お店を出て行ってしまった。

 …さっきまでの威勢は何処に行ったんだ?

 「ゼラフ、よくやったよ!」

 「ホント、アナタのおかげで気持ちが晴れました。カイトくんもそう思うよねぇ~?」

  「ホントにねぇ。……でもこのまま引き下がってくれる相手だと思う?」

 サニーさんの言葉にカイリを含めた唸り声を上げてしまう。

 ……プルンッ⁉︎

 「え? お泊まり? まさかまたバルグさんのところにお泊まりしよう。って考えてるのか?」

 プルンッ⁉︎

 プル太郎は「うん!」と言いたそうに身体を震わせた!

 「キャンッ⁉︎」

 今度はルルが「その通りだね!」と言いたそうな声を上げた。

 「イヤイヤイヤイヤ…バルグさん達に迷惑を掛ける訳にはいかないだろ」

 「~~~♪」

 しかもファニーちゃんが「お泊まり楽しみ」と言いたそうな感じではしゃいでいるし。

 「カイリちゃんなら、いつでもウェルカムよ」

 「うん! 私がカイリのお世話から護衛までちゃんとやるから、安心してね!」

 マナはそう言いながらカイリの身体に抱き付いた。

 「……まぁそれが安心ね。ノービス、私と一緒に商業ギルドに行ってくれるかしら?」

 「報告ならボクだけでも十分なんだなぁ」

 「彼錬金術ギルドでも問題を起こしてくれたから、その報告と抗議をしなきゃいけないのよ」

 「ああ~……ボクのお店に来る前に大変な目に遭ってたんだねぇ。彼のことだから、諦めてないと思うんだなぁ」

 「私も同じことを思っているわ。だから今から行きましょう」

 「わかったんだなぁ」

 サニーさんは立ち上がると懐から財布を出し、お金をテーブルの上に置いた。

 「全員の分はこれだけあれば十分でしょ。お釣りの方は後で来た時に貰うわ」

 全員の分って…ええっ⁉︎

 「かしこまりました。行ってらっしゃいませ。ゼラフ様」

 「バザンくん。お店の方を任せたんだなぁ~」

 「はい。ゼラフ様」

 待って⁉︎ 待って⁉︎

 「自分の分は自分で払うんで、大丈夫ですよ!」

 「カイリにはお世話になってるんだから、これぐらいの施しは受けなさい」

 「イヤイヤイヤイヤッ⁉︎ 施しを受けて貰ってるのは、むしろ俺の方だから!」

 「アナタのそういうところ…ブンゼ自身が持っていればよかったのにね。はいこれ。ルルにあげてね」

 ルル用の骨と歯ブラシを俺に渡して来た。

 「それじゃあ、また明日会いましょう」

 「カイリくん。困ったらいつでもボクの経営しているお店に来てね。ボクと従業員が力になってあげるんだなぁ」

 「あ…はい。……わかりました」

 その後、サニーさんはゼラフさんと共にお店を出て行った。

 「やったぁ! タダ無料飯食べれるぞぉ!」

 「マナちゃん。はしゃいだらはしたないわよ」

 能天気と言うか何と言うか……この人達に頼っても大丈夫なのか?

 「…キャンッ⁉︎」

 …ん?

 ルルが足元に来ていて、不安そうな顔で見つめていた。

 「大丈夫。きっと何とかなるよ」

 「……~~~♪」

 「ファニーちゃんもそんな不安そうな顔しなくても……ね?」

 そう言ってルルとファニーちゃんを安心させる為に、頭を撫でてあげた。
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