上 下
35 / 101

ダンジョンに向かう為の寄り道

しおりを挟む
 2人が用意してくれたテレポートカードを仕舞った後は、サニーさん達の指導の下で迷宮での注意事項を説明された。その注意事項をざっくりまとめるとこうだ!

 1.迷宮に単独で入るのは止めておいた方がいいこと。
 2.装備を念入りに確認すること。
 3. 自分が所属しているギルドに何処のダンジョンに行くのか伝えること。
 4. 階層ごとのモンスターや罠などの情報を仕入れておくこと。
 5.帰って来たら、必ずギルドに報告すること。
 以上!

 「この5つの約束を守らないと、私達がお仕置きするわよぉ! ……対象はカイリだけだけど」

 「俺だけ理不尽な扱い!」

 1.の理由ついては分かるよ。危険な場所は人数が多ければ多いほどカバーしあえるからな。次の2.は遠出の基本だから中略。3.と5.に付いては各ギルドで行なっていることだから、ちゃんとやらなければダメ。
 4.は各所ギルドで集めた情報を共有して提示しているみたいだ。

 「……でも何で迷宮の情報を共有しているんですか? 薬学ギルドと商人ギルドとか迷宮と無関係な気がする」

 「無関係ってことはないわよ。むしろ各ギルドは率先して情報を共有しているわ」

 「何で?」

 「何でって、自分のところに加わってくれた人が迷宮に行って亡くなったら、困ると思わない?」

 まぁ確かに考えてみればそうだよな。

 「この先ギルドに貢献してくれそうな人が減った大変そうですね」

 「だから、街の周囲の状況や迷宮とかの情報を共有しようってことになってるの。
 ああ、もちろん隠し部屋とかの情報は開示していないわよ」

 あ……美味しいところは独り占めしているってことですね、はい。

 「サニー様、カイリ様の準備が出来ているのですから、ギルドに行きましょう。早めに行かなければ受付けが込みますよ」

 「あ、そうだったわね! 私はアナタ達とは別だからぁ……門の前で待ち合わせということでいいかしら?」

 「それがよさそうですね。それではカイリ様、冒険者ギルドへ向かいましょう」

 冒険者ギルドに向かうって……ちょっと待て!

 「俺なら錬金術ギルドで報告してもいいんじゃないか?」

 目の前に錬金術ギルドの長のサニーさんがいるし。

 「私の方は直接話を聞いているから報告に関しては大丈夫よ。でも冒険者ギルドの方は何にも聞いていないから、話を通さないとアンリーが怒っちゃうかもしれないわよ」

 あの人が怒る姿…………ダメだ! 想像出来ないっ‼︎  でも俺よりあの人の方が滅茶苦茶強いから、喧嘩にでもなったら瞬で倒されるに決まっている。

 「わ、分かりました。サシャさん、冒険者ギルドに行きましょうか」

 「はい、それではサニーさん。また後でお会い致しましょう」

 「了解。カイリが変な人に絡まれないように、ちゃんと見張るのよぉ!」

 「はい。もしもカイリ様にちょっかいを掛ける輩がいるようであれば、私の方で排j……対処致します」

 今排除って言おうとしたよね!

 「うんうん。メイド長を敵に回すヤツはバカか命知らずしかいないから、安心して外を歩けるよ、カイリ」

 「ああ、うん……そうだな」

 サシャさんに対して失礼なことをしないようにしよう。

 「さ、バルグ様に挨拶してから行きましょうか、ルル様達も私から離れないようにして下さいね」

 「キャンッ!」

 プルンッ!

 2人共「はぁ~い!」と言いたそうな返事をした後、俺の側へとやって来た。

 あ、やっぱり俺の側にいた方が安心するんだ。

 ちょっとだけ胸がキュンとなった後、サシャさんに付いて行くようにしてバルグさん達の下へ行くのだが、行って来ますの挨拶をした途端ミレイさんが俺に抱き付いて来たのだ。

 「迷宮で怪我しないようにね! 後変な人に付いて行っちゃダメだからね!」

 「母親みたいなセリフ言うなぁ!」

 「実際に後5才ぐらい若かったら、養子にしていたかもね」

 あ、そうなんだ。

 「そうねぇ~……毎日お風呂一緒に入っちゃうかもしれないわぁ~。それに絵本を読み聞かせするのもぉ~…………悪くないかもしれないわぁ!」

 それはお腹にいる子にやってあげて下さい。

 そんなこともあったが、サシャさん達と共にバルグさんの邸宅を出た。マナさんが名残惜しそうにしていた気がするけどぉ……まぁそこらへんのことは気にしないでおこう!
 そんなこんなで錬金術ギルドに行くサニーさんと途中で別れて、冒険者ギルドにやって来たのはいいけれどもぉ……。

 「あの……サシャさん。本当にその格好でダンジョンに行くのですか?」

 「ええ、そうですよ」

 「それがどうかしましたか?」と言いたそうな顔をしているけど、メイド服で迷宮に入る人はアナタぐらいしかいない気がするんですけどぉ‼︎

 「ああ、なるほど……心配には及びませんよ。この服には防汚スキルが付いているので汚れたり致しません。
 万が一汚れたりしたらプル太郎様に綺麗にして頂くので、その時はよろしくお願い致します」

 プルンッ!

 プル太郎は「任せて!」と言いたそうな感じで震えた。

 いや……俺が言いたいのはそこじゃなくて、防御的な面で心配しているんだけどぉ~……サシャさん強いから気にしないでいた方がいいのかなぁ?

 「ここに立っていると邪魔になるので、入りますよカイリ様」

 「あ、はい! 行こうルル!」

 「キャンッ!」

 冒険者ギルドに入って行くサシャさんをルルと共に追うようにして入って行く。因みにプル太郎は頭の上に乗っているので安心して下さい。

 「ふ~む……混んでると思っていたのですが、そんなでもなさそうですね」

 ああ~確かに、3~4人クエストの受託待ちしている程度だから、そんなには……。

 「……サシャ?」

 「サシャって……あのサシャ?」

 「いや……まさかな。でも特長が似ているから、本物か?」

 ……ん? 何だ? 何か分からないけど、サシャさんのことを見ている冒険者がいる気がするな。

 列に並びながら周りを見渡してみると、こっちを見ながらヒソヒソ話をしている冒険者がチラホラ見受けられる。

 「あのぉ……サシャさん」

 「はい、何でしょうか?」

 「サシャさんって、冒険者ギルドで活動されていた頃があるんですか?」

 「ええ、レベル上げをする為に少しの間だけに、冒険者ギルドで活動していた時期がありましたよ」

 少しの間だけ……その少しの間だけでこんな風になるか?

 「カイリ様。私はそこまで有名ではないので気にしないで下さい」

 サシャさんは俺の足元にいたルルを抱き上げると、ニッコリとした顔で俺の顔を見つめて来た。しかもその笑顔を見ていると背筋が凍るような感覚になる。

 「あ、はい……分かりました」

 こ、これは……今聞かない方が身の為だと思う。ルルだって怯えてるし。

 そんなことを思いながら待っていると、すぐに俺達の番がやって来た。

 「お待たせ致しました! どのようなご用件でしょうか?」

 「これから街の近くにある無名のダンジョンに入りに行くので、その報告に来ました」

 「迷宮ですか。冒険者ギルドカードを確認させて頂いても、よろしいでしょうか?」

 「大丈夫です。カイリ様、職員にギルドカードを渡して下さい」

 「あ、はい!」

 サシャさんに促されるようにして、ギルドカードを受付嬢に渡した。俺とサシャさんのギルドカードを渡された受付嬢は、そのギルドカードに目を通していく。

 「Fランクのカイリ様とBランクのサシャ様ですね。サシャ様が引率になるということでしょうか?」

 「はい、カイリ様のレベル上げの為なので、1階から2階程度までしか潜りません」

 「そうですか。1階から2階でしたら罠も少なく、魔物も弱いので大丈夫そうですね」

 受付嬢はそう言うと、紙に何かを明記した。多分あれがダンジョンに行ったって記録用のやつだろう。

 「他にご用件はありますか?」

 「いえ、ありません。用も済んだので、行きましょうか」

 「あ、はい!」

 サシャさんって、Bランクの冒険者だったんだ。

 そう感心しながら冒険者ギルドを後にしたのだが、サシャさんがルルを抱いたままだ。
 もしかしてサシャさんはルルのことを気に入ったのか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女として豊穣スキルが備わっていたけど、伯爵に婚約破棄をされました~公爵様に救済され農地開拓を致します~

安奈
ファンタジー
「豊穣スキル」で農地を豊かにし、新鮮な農作物の収穫を可能にしていたニーア。 彼女は結婚前に、肉体関係を求められた婚約者である伯爵を拒否したという理由で婚約破棄をされてしまう。 豊穣の聖女と呼ばれていた彼女は、平民の出ではあったが領主である伯爵との婚約を誇りに思っていただけに非常に悲しんだ。 だがニーアは、幼馴染であり現在では公爵にまで上り詰めたラインハルトに求婚され、彼と共に広大な農地開拓に勤しむのだった。 婚約破棄をし、自らの領地から事実上の追放をした伯爵は彼女のスキルの恩恵が、今までどれだけの効力を得ていたのか痛感することになるが、全ては後の祭りで……。

【完結】知らざる乙女は闇の蔓に囚われる~忘却の乙女と約束の箱庭~

琴葉悠
恋愛
JUDGEMENTと言う組織に属し、ヒーロー「エレメント」として日々戦うメルという乙女。 その乙女の前に「闇の蔓」が忍び寄る。 善意という名の、愛情という名の蔓に絡まれ、メルは翻弄されていく――

転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo
BL
屈強な辺境伯爵家の三男に転生した主人公は、家族大好き!推しも大好き! チート能力を自分の好きにしか使わないけど、案外努力系主人公です。 推し達の幸せの為なら、こっそりギルドにだって登録しちゃうし、嫌いな奴の婚約破棄に暗躍するし、ドラゴンだって仲間にするし、嫌な奴は叩き潰します! 一応R18ですが、それまで長いです。とてもとても長いです。やだもう長〜い。一応※を付けておきます。 そこからはどこそこ※になります。 エロは十分頑張ります。 ※男性同士の結婚が普通にあります。 ※男性の妊娠出産も普通にあります。 誤字や名前が違うぞ?とお気づきになられたら、ぜひ教えてください!

婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!

ユウ
恋愛
侯爵令嬢であるアーデルハイドは妹を苛めた罪により婚約者に捨てられ流罪にされた。 全ては仕組まれたことだったが、幼少期からお姫様のように愛された妹のことしか耳を貸さない母に、母に言いなりだった父に弁解することもなかった。 言われるがまま島流しの刑を受けるも、その先は隣国の南の島だった。 食料が豊作で誰の目を気にすることなく自由に過ごせる島はまさにパラダイス。 アーデルハイドは家族の事も国も忘れて悠々自適な生活を送る中、一人の少年に出会う。 その一方でアーデルハイドを追い出し本当のお姫様になったつもりでいたアイシャは、真面な淑女教育を受けてこなかったので、社交界で四面楚歌になってしまう。 幸せのはずが不幸のドン底に落ちたアイシャは姉の不幸を願いながら南国に向かうが…

どうか、私のことを思い出さないでください【改稿版】

七宮 ゆえ
恋愛
私こと、レティーシア・シャルワールにはこの国の第二王子の婚約者がいた。とても王族とは思えないような品のない王子の婚約者が。 勿論それは完全なる政略結婚であったのだが、しかしどうやら第二王子は理解していない模様でありあろうことかなんの前触れもなく突然多くの王侯貴族の集う夜会で婚約破棄を宣言したのだった…… ———まあ、そんなことは別にどうでも良いのですけれど。 私としてはそんなのことよりも幼馴染である第一王子との距離感をなんとかしたいんです。 幼い頃の記憶なんて綺麗さっぱり忘れているであろう(というより忘れていてくれないと私が困る)彼とはもう私的な部分で関わりたくないんですってば!! *こちらは改稿版となります。改稿前のものを見てくださっていた方はありがとうございました。

【完結】飛行機で事故に遭ったら仙人達が存在する異世界に飛んだので、自分も仙人になろうと思います ー何事もやってみなくちゃわからないー

光城 朱純
ファンタジー
空から落ちてる最中の私を助けてくれたのは、超美形の男の人。 誰もいない草原で、私を拾ってくれたのは破壊力抜群のイケメン男子。 私の目の前に現れたのは、サラ艶髪の美しい王子顔。 えぇ?! 私、仙人になれるの?! 異世界に飛んできたはずなのに、何やれば良いかわかんないし、案内する神様も出てこないし。 それなら、仙人になりまーす。 だって、その方が楽しそうじゃない? 辛いことだって、楽しいことが待ってると思えば、何だって乗り越えられるよ。 ケセラセラだ。 私を救ってくれた仙人様は、何だか色々抱えてそうだけど。 まぁ、何とかなるよ。 貴方のこと、忘れたりしないから 一緒に、生きていこう。 表紙はAIによる作成です。

悪役令嬢の早死にする母親に転生したらしいので、幸せ家族目指して頑張ります。

百尾野狐子
恋愛
モーント王国の絶世の美女であり病弱なプランツ侯爵家の令嬢、セラフィナイトは、15歳で結婚した初夜の破瓜の痛みの衝撃で、自身の前世を思い出す。 え?嘘でしょ?まさか自分が乙女ゲーム『闇の乙女と七人の求婚者』の悪役令嬢の母親に転生するなんて! いずれ生まれてくる自身の娘が悪役令嬢ポジション?家族が破滅する元の原因は母親の、つまりは私の死!? 前世も今世も早死になんて嫌です。 推しの夫との愛ある生活を死守し、幸せ家族目指します!

叶浦さん、パンツ穿いてないの!?

MM
恋愛
主人公、稲葉紅葉(いなばもみじ)が校庭で出会った少女、叶浦桜(かのうらさくら)や周りの同級生らと繰り広げる学園ラブコメ。 きっかけは…ノーパン。

処理中です...