169 / 179
一緒に暮らす
《1》
しおりを挟む
「奈々ちゃん、一緒に暮らそう」
そう拓海さんに言われてから一週間後、拓海さんの運転する車で千葉の私の実家に向かった。
拓海さんが私の両親にちゃんと許可を取ってから私と暮らしたいと言ってくれたからだ。
約束した昼丁度に築25年の二階建ての実家に着き、インターホンを鳴らした。すぐに待ち構えていたようにエプロン姿の母が出て来る。
お喋りで好奇心旺盛な母は拓海さんを質問攻めにする。
「お昼はお寿司を取ってありますけど、お寿司は好きかしら? うなぎの方が良かったかしら? 都内から千葉までは混んでいました? 道に迷いませんでした? 車だからお酒はダメよね? 千葉にはよく来るの? あら、素敵なスーツね。どちらのブランド? それにしてもイケメンね。モテるでしょう?」
ポンポン出てくるお母さんの質問が恥ずかしい。
「お母さん! 拓海さん、困っているから。質問は一つずつね!」
「あら、ごめんなさい。雨宮さんがあまりにも素敵だから、お母さん、テンション上がっちゃった。奈々子はお母さんに似て面食いね」
お母さんの陽気な笑い声が響く。
拓海さんはそんなお母さんに丁寧な挨拶をして、お土産のバームクーヘンを手渡した。お母さんは好物をもらって嬉しそう。
そして拓海さんは私に「明るくて素敵なお母さんだね」と囁いてくれた。
私が映画好きになった切っ掛けはお母さんだった。お母さんは近所のレンタルDVD店でパートをしていて、よく映画を借りて来た。気づいたらお母さんと一緒に映画を観賞するようになっていて、夕食後の映画タイムがとても楽しみだった。という話をみんなでお寿司を食べながら、何となくした。
お母さんがそれで奈々子はイケメンが好きになってしまったのよね。なんて、余計な一言を言って、拓海さんが目尻を下げて大笑い。
イケメンが好きなのはお母さんの教育だからって言い返すとさらに、拓海さんが笑う。リビングには私たちの笑い声が響く。
だけど、お父さんだけは笑いもせず、ずっと黙っている。
そして、お寿司を食べ終わる頃、「バツイチなんですよね?」と拓海さんに言った。お父さんの言葉にドキリ。
お父さんは拓海さんに離婚歴がある事を気にしていたんだ。
離婚している事もちゃんとご両親に言った方がいいと拓海さんに言われて、話してあったけど、言わない方が良かったかも。
「どうして離婚されたんですか?」
さらにお父さんが拓海さんに質問する。
「ちょっとお父さん」とお母さんが止めようとするけど、「大事な事だ」とお母さんを跳ねのけた。
まさかお父さん、拓海さんと別れろなんて言い出さないよね?
そう拓海さんに言われてから一週間後、拓海さんの運転する車で千葉の私の実家に向かった。
拓海さんが私の両親にちゃんと許可を取ってから私と暮らしたいと言ってくれたからだ。
約束した昼丁度に築25年の二階建ての実家に着き、インターホンを鳴らした。すぐに待ち構えていたようにエプロン姿の母が出て来る。
お喋りで好奇心旺盛な母は拓海さんを質問攻めにする。
「お昼はお寿司を取ってありますけど、お寿司は好きかしら? うなぎの方が良かったかしら? 都内から千葉までは混んでいました? 道に迷いませんでした? 車だからお酒はダメよね? 千葉にはよく来るの? あら、素敵なスーツね。どちらのブランド? それにしてもイケメンね。モテるでしょう?」
ポンポン出てくるお母さんの質問が恥ずかしい。
「お母さん! 拓海さん、困っているから。質問は一つずつね!」
「あら、ごめんなさい。雨宮さんがあまりにも素敵だから、お母さん、テンション上がっちゃった。奈々子はお母さんに似て面食いね」
お母さんの陽気な笑い声が響く。
拓海さんはそんなお母さんに丁寧な挨拶をして、お土産のバームクーヘンを手渡した。お母さんは好物をもらって嬉しそう。
そして拓海さんは私に「明るくて素敵なお母さんだね」と囁いてくれた。
私が映画好きになった切っ掛けはお母さんだった。お母さんは近所のレンタルDVD店でパートをしていて、よく映画を借りて来た。気づいたらお母さんと一緒に映画を観賞するようになっていて、夕食後の映画タイムがとても楽しみだった。という話をみんなでお寿司を食べながら、何となくした。
お母さんがそれで奈々子はイケメンが好きになってしまったのよね。なんて、余計な一言を言って、拓海さんが目尻を下げて大笑い。
イケメンが好きなのはお母さんの教育だからって言い返すとさらに、拓海さんが笑う。リビングには私たちの笑い声が響く。
だけど、お父さんだけは笑いもせず、ずっと黙っている。
そして、お寿司を食べ終わる頃、「バツイチなんですよね?」と拓海さんに言った。お父さんの言葉にドキリ。
お父さんは拓海さんに離婚歴がある事を気にしていたんだ。
離婚している事もちゃんとご両親に言った方がいいと拓海さんに言われて、話してあったけど、言わない方が良かったかも。
「どうして離婚されたんですか?」
さらにお父さんが拓海さんに質問する。
「ちょっとお父さん」とお母さんが止めようとするけど、「大事な事だ」とお母さんを跳ねのけた。
まさかお父さん、拓海さんと別れろなんて言い出さないよね?
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる