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幻の映画
《7》
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控室で、リカコさんとロバート・コッポラ監督の話をした。二ヶ月前に映画のプロモーションで来日したコッポラ監督と会う機会があり、その時の事を話した。私の話を聞きながらリカコさんが機嫌の良さそうな笑みを浮かべる。
そろそろ本題を切り出す頃合い。
「実はですね。今日は佐伯リカコさんにお願いがありまして」
「望月先生に頼まれて私のデビュー作を探しているんですってね」
既に森さんから私の用件は聞いていたようだ。
「そうなんです。どうしても望月先生が『フラワームーンの願い』という映画が見たいらしく」
「素人が撮ったつまらない映画よ」
「でも、映画館で公開されたんですよね?」
「そうね。公開されたわね。ヒットしなかったけど」
「あの、映画の台本などはございますか? そこからでも情報を追えるのですが」
台本にはきっとスタッフの名前が書いてある。
地道だけど、スタッフに当たればフィルムに辿りつけるかもしれない。
「昔の物は全て処分したの。だから私に聞かれても」
「えっ、デビュー作の台本を捨てたんですか?」
ありえない。
デビュー作の台本は大事にとっておくものだって、私が出会った俳優さんたちはみんな言っていた。
「捨てたわ。いい思い出があまりないのよ」
「そろそろ休憩終わります」
控室に入って来たスタッフに言われた。
「力になれなくてごめんなさい。他をあたってくれるかな」
リカコさんが行ってしまう。
何か手がかりを引き出さなければ。
「リカコさん、最後に一つだけいいですか?」
「何?」
「もしかして、細野監督とご結婚されていたんですか?」
強引だけど、良い思い出がないという事と、離婚したという情報から推測した。
リカコさんの目が大きく見開かれ、クスッと笑った。
「細野監督とはそういう仲じゃないから」
「そうですか」
「中島さん、ウエストシネマズにいるのなら雨宮拓海って知っている?」
思いがけない名前に心臓がギュッとなる。
「彼もウエストシネマズにいるはずよ。あなたの探し物の行方は多分、彼が知っている。じゃあね」
リカコさんが控室から出て行った。
ウエストシネマズの雨宮拓海って、雨宮課長の事だ……。
課長に会わなきゃ。
そろそろ本題を切り出す頃合い。
「実はですね。今日は佐伯リカコさんにお願いがありまして」
「望月先生に頼まれて私のデビュー作を探しているんですってね」
既に森さんから私の用件は聞いていたようだ。
「そうなんです。どうしても望月先生が『フラワームーンの願い』という映画が見たいらしく」
「素人が撮ったつまらない映画よ」
「でも、映画館で公開されたんですよね?」
「そうね。公開されたわね。ヒットしなかったけど」
「あの、映画の台本などはございますか? そこからでも情報を追えるのですが」
台本にはきっとスタッフの名前が書いてある。
地道だけど、スタッフに当たればフィルムに辿りつけるかもしれない。
「昔の物は全て処分したの。だから私に聞かれても」
「えっ、デビュー作の台本を捨てたんですか?」
ありえない。
デビュー作の台本は大事にとっておくものだって、私が出会った俳優さんたちはみんな言っていた。
「捨てたわ。いい思い出があまりないのよ」
「そろそろ休憩終わります」
控室に入って来たスタッフに言われた。
「力になれなくてごめんなさい。他をあたってくれるかな」
リカコさんが行ってしまう。
何か手がかりを引き出さなければ。
「リカコさん、最後に一つだけいいですか?」
「何?」
「もしかして、細野監督とご結婚されていたんですか?」
強引だけど、良い思い出がないという事と、離婚したという情報から推測した。
リカコさんの目が大きく見開かれ、クスッと笑った。
「細野監督とはそういう仲じゃないから」
「そうですか」
「中島さん、ウエストシネマズにいるのなら雨宮拓海って知っている?」
思いがけない名前に心臓がギュッとなる。
「彼もウエストシネマズにいるはずよ。あなたの探し物の行方は多分、彼が知っている。じゃあね」
リカコさんが控室から出て行った。
ウエストシネマズの雨宮拓海って、雨宮課長の事だ……。
課長に会わなきゃ。
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