推しの速水さん

コハラ

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7話 速水さんとセクシー美女?

《10》

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図書館の自動ドアをくぐると、カウンターの所に紺色のエプロンを付けたゆりさんが座っていた。

よりにもよってゆりさんは本の返却受付の所にいた。まずは借りた本をゆりさんの所に行って返さなければならない。

本を借りる時は自動貸出機を使えるのに、なんで返却する時は対人処理になるんだろう。返却も無人で処理してくれればいいのに。

はあ。気が重い。

とりあえず柱の影に隠れて様子を見る。交代になるかもしれない。ゆりさんがカウンターから離れたら返却しに行こう。

五分経過。変化なし。

十五分経過。変化なし。

三十分経過。変化なし。

一時間経過。変化なし……と思ったら、カウンターにいるゆりさんが私を見た。ゆりさんの眉が上がったように見える。

やばっ。見つかった!

ライオンに見つかったシマウマのように、慌てて図書館の外に飛び出た。前も見ないで走ったから、図書館の前で誰かにぶつかる。ぶつかった勢いで眼鏡が弾け飛んだ。そして……パリン。

不吉な音がした。

ぶつかった人の黒い革靴の下には私の眼鏡が……。

ああ……。なんて悲しい光景……。

これから速水さんにお会いするのに……。

あまりのショックで声も出せずにいると、「すみません!」という慌てたような男性の声がした。聞き違いでなければこの声は速水さんの声!
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