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2話 速水さんからのオファー
《18》
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「卯月先生、TL小説を読んだ事がありますか?」
落ち着いた低い声で聞かれた。
恐る恐る頭を上げて、速水さんを見ると怒っている様子はなく、ほっとする。
「どうですか?」
黙ったままでいると、先ほどよりも厳しい視線が注がれる。
「えーと、あの、勉強の為に少しだけ」
「少しというのはどれ程ですか?」
「2ページです」
「お読みになったのはどんなシーンですか?」
読んだのは濃厚なエッチシーンだけど、恥ずかしくて速水さんに言いづらい。
ああ、どうしよう。頬が火照ってくる。
鼓動が速くなる。
「もしかして性描写のシーン?」
「は、はい。私には刺激が強すぎると言うか、合わなくて」
速水さんは短く息をつき、宿題を忘れた出来損ないの生徒を見るような目で私を見る。
「卯月先生、『今日ドキ』のラブシーンだけを読んで、私には合わないって判断されたら悲しくないですか?」
「それは……悲しいと思いますが、でも、読者さんの好みがあるので無理強いはできませんから」
「なるほど。それも正しい意見だ」
速水さんが納得したように頷いた。
「でも、登場人物の気持ちを理解して欲しいとは思いませんか? 卯月先生の読み方は乱暴な読み方だと思います。なぜそのシーンに至ったのか、それまでの積み重ねを無視して、性描写のシーンだけを読むのは作家さんに対して失礼です」
ズーンと速水さんの言葉が胸に響く。
作家さんに対して失礼。そんな風に考えた事もなかった。
落ち着いた低い声で聞かれた。
恐る恐る頭を上げて、速水さんを見ると怒っている様子はなく、ほっとする。
「どうですか?」
黙ったままでいると、先ほどよりも厳しい視線が注がれる。
「えーと、あの、勉強の為に少しだけ」
「少しというのはどれ程ですか?」
「2ページです」
「お読みになったのはどんなシーンですか?」
読んだのは濃厚なエッチシーンだけど、恥ずかしくて速水さんに言いづらい。
ああ、どうしよう。頬が火照ってくる。
鼓動が速くなる。
「もしかして性描写のシーン?」
「は、はい。私には刺激が強すぎると言うか、合わなくて」
速水さんは短く息をつき、宿題を忘れた出来損ないの生徒を見るような目で私を見る。
「卯月先生、『今日ドキ』のラブシーンだけを読んで、私には合わないって判断されたら悲しくないですか?」
「それは……悲しいと思いますが、でも、読者さんの好みがあるので無理強いはできませんから」
「なるほど。それも正しい意見だ」
速水さんが納得したように頷いた。
「でも、登場人物の気持ちを理解して欲しいとは思いませんか? 卯月先生の読み方は乱暴な読み方だと思います。なぜそのシーンに至ったのか、それまでの積み重ねを無視して、性描写のシーンだけを読むのは作家さんに対して失礼です」
ズーンと速水さんの言葉が胸に響く。
作家さんに対して失礼。そんな風に考えた事もなかった。
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