推しの速水さん

コハラ

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2話 速水さんからのオファー

《3》

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速水さんにお姫様抱っこで運ばれる夢を見た。
ずっと速水さんの腕の中にいたい。

速水さん、私、あなたにずっとお礼を言いたかったんですよ。書店で盗撮犯に突き飛ばされた私を受け止めて頂きありがとうございます。あの時、怖くて、怖くて、泣きそうになったけど、速水さんに受け止められてほっとしたんです。本当にありがとうございます。

週に一度、図書館で速水さんを見守る事が私の生きがいになっております。いつも素敵な姿を見せて頂きありがとうございます。速水さんは私の元気の源です。小説が書けたのも速水さんのおかげです。

えーと、それから……。

メールもありがとうございます。まさか速水さんが『今日ドキ』を読んで下さったなんて感激です。

速水さんの事を書いたんですよ。
ヒロインの胸がキュンキュンする気持ちは私の気持ちです。

速水さんを見る度にいつも胸がキュンとします。

今日だって……。

うん? 今日?

そうだ。私。集学館で速水さんに会ったんだ。

目を開けると、ぼんやりとした視界に速水さんが見える。

「気がつかれましたか?」

ニコッと速水さんが微笑む。
なんて完璧なシチュエーション。さすが夢。

「速水さん、好きです」

ほら、夢の中だったら大胆な事が言えちゃう。

「えっ」

低い声が響いた。
速水さんの眉間に薄く縦ジワが刻まれる。

なんかいつも見ている夢と状況が違うような……。

「卯月先生、今、なんと?」

卯月先生……?

あっ。

新作の書き下ろしをお願いされて、それから本になると言われてびっくりしたんだった。

じゃあ、これは現実!!

ひえー!

私、なんて事を言っちゃったの!!
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