異世界勇者は天使召喚士

夜鳩 秋

文字の大きさ
上 下
1 / 4
序章

プロローグ1

しおりを挟む
「お前が勇者か」


白髪青目の少女が俺に問う。


「ああ」


俺は直感的にこいつが魔王だとすぐに気づいた。
だが、身長は16歳の平均身長とほぼ一緒で手足は細く、顔も整っている。
本当にに魔王なのだろうか……。
この一年間魔王を倒すべく旅を続けてきた俺だが今更になって自分の感覚への不信感が募った。


「そうか、お前が……私の宿敵」


その瞬間、魔王の魔力が瞬時に膨れ上がった。


「ッ!」


闇色の魔力が周囲を纏う。
魔王の目が深海の様に暗くなり、その手に魔王の愛剣である魔剣が現れる。
この魔力の多さは龍以上か……流石魔王といったところか、魔法でやりやっても勝ち目はないな。
俺はそう思いつつ魔王への戦い方をシュミレーションする。


「この程度で驚くのか?」

「ああ、驚いたさ。だがな……」


俺は自身の魔力を開放し、部屋中に広がった魔王の魔力を相殺する。
俺は虚空に手を伸ばし聖剣を呼び出した。
そして十字架の光があたりの俺の手に宿り、光は剣の形を成す。
魔王に勝つには、近接戦しかないかもしれないな。
勝機は五分五分って所か……。
俺は魔王に向けて聖剣の切っ先を向けると、魔王は不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。


「何故お前は私の前に一人で現れた? お前には仲間がいるそうだが」

「お前には関係ない」


仲間達には俺と魔王を一対一で戦わせる為に、魔王城の外で魔王を助けに来るであろう魔物達を倒して貰っている。
それに仲間達を連れてきたとしていて勇者と魔王の戦いに、ただの人間が入るのは自殺行為だろう。
俺がそう思っていると、魔王が一瞬でこちらに近づいてきた。
戦いが始まり、魔剣と聖剣の魔力が相対する
魔王が俺の横腹を蹴り上げ、魔剣を俺に向かって投げた。
俺はすぐさま防御の姿勢を取るが、俺の頭上に膨大な魔力の動きを感じた。
何かが飛んできている。


「くっ!」


俺は前方から来る剣を弾き落とし、その反動で無理矢理後ろを向き飛んでくるものを確かめる。
後ろにあった物は魔王の持っている魔剣とよく似た剣だった。
剣が俺に向かって直進してくるが俺はそれを弾き飛ばし、剣を消滅させ着地した。


「これくらいは流石にやるか」


魔王が俺にそう言った瞬間に魔王の背後に剣が四本現れた。


「まじか……何本操れるんだよ」

「試した事がないのでな、お前で試してみよう」


そういった瞬間、四本の剣が俺に向かって飛んできた。
俺は四本の剣の攻撃を避け距離をとった。
魔王の顔を見るとまだ余裕そうな顔をしている。
そこで俺は賭けをすることにした。
恐らく敵はまだ奥の手を持っているだろうが早めに決着をつけさせてもらう。
そうでないと、俺の勝機が完全になくなるからだ。
俺は魔力の放出を止め、自分の身体能力の向上に魔力を使った。
魔力を通す穴に限界が来るが、それを気にせず俺は全魔力を身体能力強化に使う。


「くッ!」


全身に激痛が走り、一瞬だが魔王から気がそれた。
それを魔王は見逃さず一瞬で俺に近づき、俺の心臓を正確に貫いて来た。


「終わりだ!」

「まだ終わらない!」


俺は聖剣を持っていない方の手で魔王の手を掴み、引き寄せ聖剣を魔王の心臓へと突き刺した。
魔王は聖剣を胸に刺したまま、仰向けに倒れ込んだ。
それを見た俺は勝ったのだと分かった。


「俺の……勝ちだ」


俺は魔剣を抜く力も無しに倒れ込む。
正直、心臓を刺されてもここまで意識を保てるとは思っていなかった。
魔王を倒せたのは神の加護かそれとはまた別の何かか。
まあ、それはどうでもいい。
ああ、眠くなって来た。
瞼(まぶた)を閉じようとすると視界の端に仲間の姿が微かに見えた。


ありがとう。


俺は急に襲い来る眠気に逆らえず、意識を深淵へと引き込まれた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

転生したらやられ役の悪役貴族だったので、死なないように頑張っていたらなぜかモテました

平山和人
ファンタジー
事故で死んだはずの俺は、生前やりこんでいたゲーム『エリシオンサーガ』の世界に転生していた。 しかし、転生先は不細工、クズ、無能、と負の三拍子が揃った悪役貴族、ゲルドフ・インペラートルであり、このままでは破滅は避けられない。 だが、前世の記憶とゲームの知識を活かせば、俺は『エリシオンサーガ』の世界で成り上がることができる! そう考えた俺は早速行動を開始する。 まずは強くなるために魔物を倒しまくってレベルを上げまくる。そうしていたら痩せたイケメンになり、なぜか美少女からモテまくることに。

2回目チート人生、まじですか

ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆ ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで! わっは!!!テンプレ!!!! じゃない!!!!なんで〝また!?〟 実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。 その時はしっかり魔王退治? しましたよ!! でもね 辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!! ということで2回目のチート人生。 勇者じゃなく自由に生きます?

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

処理中です...