6 / 40
夢1一2
しおりを挟む
しばらく進むと、道の先に店の明かりが見えてきた。
「わあ、このお店、まだ個人商店なんだ」
「センセもよく通った?」
「うちの生徒ならみんな寄るでしょ」
「だよね!」
個人の商店で大手のコンビニではないこの店は、私が高校生の頃よく帰りに寄っていた。夜になると店先に飼い犬が出てきて、入口を塞いでいることもあったっけ。
「ねえ、俺腹減ったから寄ってこーよ」
「いいから早く帰……」
ぐううっ、とそのタイミングでお腹が鳴った。慌ててお腹を押さえてももう遅い。
目を丸くした彼とばっちり目が合うと、途端に嬉しそうに破顔した。
「ほらー!」
「う、うるさい!」
「もー我慢しないで、肉まんくらいまだあるでしょ、ほらほら」
「ちょっと!」
「うんそう、ちょっと寄るだけ」
「はあ!?」
男子生徒は店の前まで来ると自転車を停め、こちらの言う事も聞かず店に入っていった。するとすぐ、店内でしゃがみ込む後ろ姿。
「あ」
あの子だ。
急いで店内に続けば、しゃがみ込んでいる彼の前で寝そべりお腹を出している犬が、尻尾を振り気持ちよさそうに目を細めている。
「わ、コタロー!?」
「よしよし、今日も店番えらいなぁ!」
嬉しくなって彼と一緒にしゃがみ込み犬を撫でると、さらにブンブンと尻尾を降る。以前よりも少し白い毛が混じっているけど、間違いなくあの頃店番をしていたコタローだ。
「もー元気だった? なんか年取っちゃって~! 可愛いなぁ!」
嬉しそうに目を細める年老いた雑種犬。なんだか会えたのが嬉しくて、今日一日の緊張が解けていく。
「ふふ……よかった、元気そうで」
じわりと視界が歪みゴシゴシと目元を擦ると、隣で一緒にしゃがみ込んでいた生徒がすっと立ち上がった。
(あ、忘れてた)
つい懐かしくなって夢中になってしまった。慌てて私も立ち上がると、クウン、とコタローが小さく鳴いた。またしゃがみ込み、その頭を撫でる。
「ねえ……」
そう言えば彼は、なんて名前だろう。
何と呼んでいいか躊躇していると、彼はさっさとレジカウンターで横にあるスチーマーを見ながら注文を始めた。
「すんません、この肉まんとピザまんふたつずつください」
そうしてさっさと会計を済ませると、くるりと振り返る。明るいところで見る彼は人よりも色素が薄いのか、目の色が明るく珍しい色をしている。灰色のような緑のような、不思議な色だ。人懐っこくにこりと笑うとほら、と肉まんの入った袋を掲げた。
「センセ、行こっか」
またな、とコタローの頭を撫でるとまたさっさと店を出ていく。そのあとを慌てて追いかけ店外に出ると、ぬっと先ほどの袋を目の前に突き付けてきた。
「センセ、肉まんとピザまん一個ずつ」
「え、いいから自分で食べなさいよ」
「俺四個も食べないよ。ほら、早くしないと肉まんが汗かいて皮がぐしょぐしょんなっちゃうから」
「や、いいってば……」
実習初日から生徒と買い食いしてしかも奢られるなんて、誰かに見られたら何を言われるかわからない。
思わずきょろきょろと周囲を見渡すと、彼は肉まんをひとつ取り出し咥え、袋を私に押し付けてきた。
「ちょ……」
「俺自転車押すから、まずは一個食べちゃってよ」
「いやだから……って、え、もう食べたの!?」
「うん? あったかい方が美味いし」
「早っ!」
さっき咥えた肉まんがもうない。もしかして咀嚼せず飲み込んだんじゃないだろうか。思わず笑うと「また腹が鳴るよ~」と彼は声をあげて笑う。
「うるさいなあ! わかったよひとつもらうよ。お金払うから」
「いらないって! 肉まんくらい奢るし」
「何言ってるの! 高校生に奢られるなんてあり得ないから」
「じゃあ今度はセンセが俺に肉まん奢ってよ」
「はあ? 今度って」
「だってさ、教育実習って遅くまで残ること多いでしょ。きっと俺と帰り一緒になることがまたあるよ。だからそん時に」
袋から取り出した肉まんは、この寒さでもう冷めてきている。一口食べるとじんわりと温かさが身体に広がった気がした。なんだか塩分もありがたい。
彼はそんな私を満足そうに見て笑うと、自身はピザまんを取り出しあっという間に食べ、「行こうか」と自転車を押し歩き始めた。慌ててその後を付いていくと、前を向きながら彼がぽつりと呟いた。
「俺もさ、教員免許取ろうと思ってて」
「え、そうなんだ」
その言葉に嬉しくなり、思わず声が弾む。
「だからさ、俺になんかアドバイスとかちょうだいよ」
「勉強頑張れ」
「んなことわかってるから!」
彼はわはは、と声をあげて笑うと長い脚をさっと上げて自転車に跨った。気が付けば周囲はいつの間にか明るくなり車通りも多く、先にはバス停が見える。
「ここまで来たら大丈夫。ありがとうね」
「どーいたしまして。センセ、気を付けてね」
「君も気をつけて帰るんだよ」
「あ、センセーみたい」
「先生だから!」
「まだセンセーの卵でしょ!」
彼はあはは、ともう一度楽しそうに笑うと、自転車に跨り片足をペダルに乗せた。
「肉まん、ありがとう。ごちそうさま」
「お礼楽しみにしてる」
「じゃあ、あんまんね」
「えー、そこはもっとなんかいいやつにしてよ」
「あんまんだって美味しいでしょう」
思わずふはっと笑う。
風に吹かれ、ピザまんが入った袋がカサカサと音を立てる。歩いたからか、もうそれほど寒く感じない。
「ね、ゆふセンセって呼んでいい?」
「いやいや、そこは名字でしょ」
「覚えてない」
「ちょっと! なんかちょいちょい失礼なこと言うね、君」
「そんなことないって。それに、ゆふっていい名前じゃん」
「え?」
「ゆふって、結ぶ、のゆふでしょ? センセーを目指すゆふセンセにぴったりだと思って」
その言葉に思わずどきりとした。私の名前は変わってるとよく言われるけれど、由来を言い当てたのは田中先生を含めこれで二人目だ。
「あ、ありがとう……」
何と返すのが正解かわからず思わず下を向くと、「それじゃあ」と彼は勢いよく地面を蹴る。
「あっ、ちょっと君の名前は!?」
進みだした自転車の背中に向かって声を掛けると、肩越しに振り返り片手をあげて応えた。車のヘッドライトが明るい茶色の髪を輝かせる。
「たかつき! 高槻レン!」
色とりどりの看板や街灯がきらめく夜の街に、背の高い彼のシルエットはあっという間に消えていった。
「わあ、このお店、まだ個人商店なんだ」
「センセもよく通った?」
「うちの生徒ならみんな寄るでしょ」
「だよね!」
個人の商店で大手のコンビニではないこの店は、私が高校生の頃よく帰りに寄っていた。夜になると店先に飼い犬が出てきて、入口を塞いでいることもあったっけ。
「ねえ、俺腹減ったから寄ってこーよ」
「いいから早く帰……」
ぐううっ、とそのタイミングでお腹が鳴った。慌ててお腹を押さえてももう遅い。
目を丸くした彼とばっちり目が合うと、途端に嬉しそうに破顔した。
「ほらー!」
「う、うるさい!」
「もー我慢しないで、肉まんくらいまだあるでしょ、ほらほら」
「ちょっと!」
「うんそう、ちょっと寄るだけ」
「はあ!?」
男子生徒は店の前まで来ると自転車を停め、こちらの言う事も聞かず店に入っていった。するとすぐ、店内でしゃがみ込む後ろ姿。
「あ」
あの子だ。
急いで店内に続けば、しゃがみ込んでいる彼の前で寝そべりお腹を出している犬が、尻尾を振り気持ちよさそうに目を細めている。
「わ、コタロー!?」
「よしよし、今日も店番えらいなぁ!」
嬉しくなって彼と一緒にしゃがみ込み犬を撫でると、さらにブンブンと尻尾を降る。以前よりも少し白い毛が混じっているけど、間違いなくあの頃店番をしていたコタローだ。
「もー元気だった? なんか年取っちゃって~! 可愛いなぁ!」
嬉しそうに目を細める年老いた雑種犬。なんだか会えたのが嬉しくて、今日一日の緊張が解けていく。
「ふふ……よかった、元気そうで」
じわりと視界が歪みゴシゴシと目元を擦ると、隣で一緒にしゃがみ込んでいた生徒がすっと立ち上がった。
(あ、忘れてた)
つい懐かしくなって夢中になってしまった。慌てて私も立ち上がると、クウン、とコタローが小さく鳴いた。またしゃがみ込み、その頭を撫でる。
「ねえ……」
そう言えば彼は、なんて名前だろう。
何と呼んでいいか躊躇していると、彼はさっさとレジカウンターで横にあるスチーマーを見ながら注文を始めた。
「すんません、この肉まんとピザまんふたつずつください」
そうしてさっさと会計を済ませると、くるりと振り返る。明るいところで見る彼は人よりも色素が薄いのか、目の色が明るく珍しい色をしている。灰色のような緑のような、不思議な色だ。人懐っこくにこりと笑うとほら、と肉まんの入った袋を掲げた。
「センセ、行こっか」
またな、とコタローの頭を撫でるとまたさっさと店を出ていく。そのあとを慌てて追いかけ店外に出ると、ぬっと先ほどの袋を目の前に突き付けてきた。
「センセ、肉まんとピザまん一個ずつ」
「え、いいから自分で食べなさいよ」
「俺四個も食べないよ。ほら、早くしないと肉まんが汗かいて皮がぐしょぐしょんなっちゃうから」
「や、いいってば……」
実習初日から生徒と買い食いしてしかも奢られるなんて、誰かに見られたら何を言われるかわからない。
思わずきょろきょろと周囲を見渡すと、彼は肉まんをひとつ取り出し咥え、袋を私に押し付けてきた。
「ちょ……」
「俺自転車押すから、まずは一個食べちゃってよ」
「いやだから……って、え、もう食べたの!?」
「うん? あったかい方が美味いし」
「早っ!」
さっき咥えた肉まんがもうない。もしかして咀嚼せず飲み込んだんじゃないだろうか。思わず笑うと「また腹が鳴るよ~」と彼は声をあげて笑う。
「うるさいなあ! わかったよひとつもらうよ。お金払うから」
「いらないって! 肉まんくらい奢るし」
「何言ってるの! 高校生に奢られるなんてあり得ないから」
「じゃあ今度はセンセが俺に肉まん奢ってよ」
「はあ? 今度って」
「だってさ、教育実習って遅くまで残ること多いでしょ。きっと俺と帰り一緒になることがまたあるよ。だからそん時に」
袋から取り出した肉まんは、この寒さでもう冷めてきている。一口食べるとじんわりと温かさが身体に広がった気がした。なんだか塩分もありがたい。
彼はそんな私を満足そうに見て笑うと、自身はピザまんを取り出しあっという間に食べ、「行こうか」と自転車を押し歩き始めた。慌ててその後を付いていくと、前を向きながら彼がぽつりと呟いた。
「俺もさ、教員免許取ろうと思ってて」
「え、そうなんだ」
その言葉に嬉しくなり、思わず声が弾む。
「だからさ、俺になんかアドバイスとかちょうだいよ」
「勉強頑張れ」
「んなことわかってるから!」
彼はわはは、と声をあげて笑うと長い脚をさっと上げて自転車に跨った。気が付けば周囲はいつの間にか明るくなり車通りも多く、先にはバス停が見える。
「ここまで来たら大丈夫。ありがとうね」
「どーいたしまして。センセ、気を付けてね」
「君も気をつけて帰るんだよ」
「あ、センセーみたい」
「先生だから!」
「まだセンセーの卵でしょ!」
彼はあはは、ともう一度楽しそうに笑うと、自転車に跨り片足をペダルに乗せた。
「肉まん、ありがとう。ごちそうさま」
「お礼楽しみにしてる」
「じゃあ、あんまんね」
「えー、そこはもっとなんかいいやつにしてよ」
「あんまんだって美味しいでしょう」
思わずふはっと笑う。
風に吹かれ、ピザまんが入った袋がカサカサと音を立てる。歩いたからか、もうそれほど寒く感じない。
「ね、ゆふセンセって呼んでいい?」
「いやいや、そこは名字でしょ」
「覚えてない」
「ちょっと! なんかちょいちょい失礼なこと言うね、君」
「そんなことないって。それに、ゆふっていい名前じゃん」
「え?」
「ゆふって、結ぶ、のゆふでしょ? センセーを目指すゆふセンセにぴったりだと思って」
その言葉に思わずどきりとした。私の名前は変わってるとよく言われるけれど、由来を言い当てたのは田中先生を含めこれで二人目だ。
「あ、ありがとう……」
何と返すのが正解かわからず思わず下を向くと、「それじゃあ」と彼は勢いよく地面を蹴る。
「あっ、ちょっと君の名前は!?」
進みだした自転車の背中に向かって声を掛けると、肩越しに振り返り片手をあげて応えた。車のヘッドライトが明るい茶色の髪を輝かせる。
「たかつき! 高槻レン!」
色とりどりの看板や街灯がきらめく夜の街に、背の高い彼のシルエットはあっという間に消えていった。
86
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。
しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い!
声が出せないくらいの激痛。
この痛み、覚えがある…!
「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」
やっぱり!
忘れてたけど、お産の痛みだ!
だけどどうして…?
私はもう子供が産めないからだだったのに…。
そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと!
指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。
どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。
なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。
本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど!
※視点がちょくちょく変わります。
ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。
エールを送って下さりありがとうございました!
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
2度もあなたには付き合えません
cyaru
恋愛
1度目の人生。
デヴュタントで「君を見初めた」と言った夫ヴァルスの言葉は嘘だった。
ヴァルスは思いを口にすることも出来ない恋をしていた。相手は王太子妃フロリア。
フロリアは隣国から嫁いで来たからか、自由気まま。当然その所業は貴族だけでなく民衆からも反感を買っていた。
ヴァルスがオデットに婚約、そして結婚を申し込んだのはフロリアの所業をオデットが惑わせたとして罪を着せるためだった。
ヴァルスの思惑通りに貴族や民衆の敵意はオデットに向けられ遂にオデットは処刑をされてしまう。
処刑場でオデットはヴァルスがこんな最期の時まで自分ではなくフロリアだけを愛し気に見つめている事に「もう一度生まれ変われたなら」と叶わぬ願いを胸に抱く。
そして、目が覚めると見慣れた光景がオデットの目に入ってきた。
ヴァルスが結婚を前提とした婚約を申し込んでくる切欠となるデヴュタントの日に時間が巻き戻っていたのだった。
「2度もあなたには付き合えない」
デヴュタントをドタキャンしようと目論むオデットだが衣装も用意していて参加は不可避。
あの手この手で前回とは違う行動をしているのに何故かヴァルスに目を付けられてしまった。
※章で分けていますが序章は1回目の人生です。
※タグの①は1回目の人生、②は2回目の人生です
※初日公開分の1回目の人生は苛つきます。
★↑例の如く恐ろしく、それはもう省略しまくってます。
★11月2日投稿開始、完結は11月4日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
死んだ王妃は二度目の人生を楽しみます お飾りの王妃は必要ないのでしょう?
なか
恋愛
「お飾りの王妃らしく、邪魔にならぬようにしておけ」
かつて、愛を誓い合ったこの国の王。アドルフ・グラナートから言われた言葉。
『お飾りの王妃』
彼に振り向いてもらうため、
政務の全てうけおっていた私––カーティアに付けられた烙印だ。
アドルフは側妃を寵愛しており、最早見向きもされなくなった私は使用人達にさえ冷遇された扱いを受けた。
そして二十五の歳。
病気を患ったが、医者にも診てもらえず看病もない。
苦しむ死の間際、私の死をアドルフが望んでいる事を知り、人生に絶望して孤独な死を迎えた。
しかし、私は二十二の歳に記憶を保ったまま戻った。
何故か手に入れた二度目の人生、もはやアドルフに尽くすつもりなどあるはずもない。
だから私は、後悔ない程に自由に生きていく。
もう二度と、誰かのために捧げる人生も……利用される人生もごめんだ。
自由に、好き勝手に……私は生きていきます。
戻ってこいと何度も言ってきますけど、戻る気はありませんから。
婚約者の幼馴染に圧勝するまでの軌跡
きんもくせい
恋愛
15歳の夏、フラヴィアに婚約の話が舞い降りた。
相手の名はベネディクト・コーネリアス。女嫌いで有名な辺境伯の一人息子で、剣技に長けていて優秀。同じく女性でありながら巧みな剣術を使いこなす幼馴染の女性にしか側にいることを許していない、気難しい事で有名な男である。
初めはフラヴィアに全く興味を示さないベネディクトであったが、顔合わせの際に放った一言が彼の琴線に触れたらしく、少しずつフラヴィアのことを知ろうと歩み寄ってくる。
そんな日の折、フラヴィアの剣技に関する碧眼に感心し、次第に共通の話題を通して惹かれ合っていく二人。しかし、その傍には彼の幼馴染の姿が……
公爵令嬢姉妹の対照的な日々 【完結】
あくの
恋愛
女性が高等教育を受ける機会のないこの国においてバイユ公爵令嬢ヴィクトリアは父親と交渉する。
3年間、高等学校にいる間、男装をして過ごしそれが他の生徒にバレなければ大学にも男装で行かせてくれ、と。
それを鼻で笑われ一蹴され、鬱々としていたところに状況が変わる出来事が。婚約者の第二王子がゆるふわピンクな妹、サラに乗り換えたのだ。
毎週火曜木曜の更新で偶に金曜も更新します。
今日からはじめる錬金生活〜家から追い出されたので王都の片隅で錬金術店はじめました〜
束原ミヤコ
恋愛
マユラは優秀な魔導師を輩出するレイクフィア家に生まれたが、魔導の才能に恵まれなかった。
そのため幼い頃から小間使いのように扱われ、十六になるとアルティナ公爵家に爵位と金を引き換えに嫁ぐことになった。
だが夫であるオルソンは、初夜の晩に現れない。
マユラはオルソンが義理の妹リンカと愛し合っているところを目撃する。
全てを諦めたマユラは、領地の立て直しにひたすら尽力し続けていた。
それから四年。リンカとの間に子ができたという理由で、マユラは離縁を言い渡される。
マユラは喜び勇んで家を出た。今日からはもう誰かのために働かなくていい。
自由だ。
魔法は苦手だが、物作りは好きだ。商才も少しはある。
マユラは王都の片隅で、錬金術店を営むことにした。
これは、マユラが偉大な錬金術師になるまでの、初めの一歩の話──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる