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第二章 王都
閑話 おんてん
しおりを挟む「バルテンシュタッドのおふろ、は、しろいです」
「ああ、あれは温泉だ」
「おんてん」
「お……おんてんだ」
「わたし、すきです。おんてん」
「カレンの国にもあったか?」
「はい! たくさん。そとにもありました。ゆきがふる、すきでした」
「外に?」
「けしきすてき、ゆきがふる、きれい、すずしいです」
「……周りは、どうなっているんだ? 外から人に見えないのか」
「おんなのひと、おとこのひと、わかれてます。かべがあって、みえないです。でも、うみがみえるたかいところ、そらがみえるところ、いろいろありました」
「……? 男女で分かれてる? 部屋についてるのではなく?」
「えっと、んー、おふろ、だけのおみせ、です。だんにょ? にわかれて、あらうところ、おふろ、あります」
「男女」
「だんちょ」
「それは、色んな人間が同時に使うという事か?」
「そうです! そうです、ともだち、かぞく、しらないひと、みんないっしょにはいります」
「……それは凄い文化だな……」
「おふろ、いっしょにはいる、たのしいです。レオニダスさまもアルベルトさまと、はいれます」
「それは絶対に嫌だ」
「ふふっ、なぜですか、たのしくおはなしできます」
「あいつと楽しく話したいとは思わん」
「おさけ、のむこともあります。こう……いれもの、うか…うかぶ、ここにグラス、おつまみのせる」
「む、それは中々……」
「はいりたいです、おんてん」
「ふむ、面白いな、バルテンシュタッドに戻ったら試しに作ってみようか」
「ほんとうですか!? わあ、たのしいです!」
「はは、そんなに好きか」
「はい!」
「よし、ならば一緒に入ろう」
「は……、は!?」
「みんなで一緒に入るのが楽しいんだろう」
「な、なな、ダメ、だめです! おふろは、だんちょわかれます!」
「カレンはだめだが、ナガセはいいだろ?」
「!!」
「二人で入ればいい、ほら、こうやって後ろから抱えよう」
「ひゃああ!?」
「景色を楽しめる場所を探さないとな」
「れれれ、れお、レオニダスさま!」
「身体も洗ってやろう」
「っ! み、みみ…っ!! ……んっ」
「カレン? 俺と一緒に入るのは嫌か?」
「………い、いい、え…。いっしょ…、はいりたい、です……」
「!」
「でも、は、はずかしい、です」
「…………分かった、大至急作らせよう」
「?」
「早く帰りたいな? カレン」
「……はい、かえるの、たのしみです」
* * *
「で、閣下からの急ぎの書簡てなんだったんだ?」
「…………いや、なんつうか…」
「なんだ? …………何だこれは?」
「いや、俺が聞きたい」
「この絵と文字はナガセのものだろうが、……温泉を外に掘れ?」
「壁も作るらしい」
「何故」
「いや俺に聞かないでくれ。そもそも何故俺なんだ」
「それはラウルが土木関係に精通しているからだろう」
「いや俺じゃなくて実家が土木やってるだけで……俺じゃなくてもクラウスでもいいだろう」
「やめてくれ、これ以上仕事増やされたら堪らん」
「……イタズラ……」
「ではないだろうな。印璽まである」
「あの人たち、王都で何してんだ?」
「さあな。楽しく過ごしてるのは間違いないんじゃないか」
「景色の良いところを選べだと」
「……、一応意味はありそうだ」
「は? どの辺にそれを感じたんだ今」
「完成したら分かるだろ。頼んだぞ、ラウル」
「ええー、何だよそれ……」
バルテンシュタッドで露天風呂が流行るのは、もう少し先のお話。
――――――――――――――――――――――――――
クラウスとラウルは同期なのでタメ口。
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