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02 新たな出会いと危機
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あの日からどのくらい経ったのだろう。
結局、王城を出た後、お金もなく宿もとれなかった。そもそも、王都は裕福な貴族たちや収入がある人が住む場所であるため、宿にしても、食料にしても料金が高すぎる。それゆえ、王都にいても仕方ないと感じ、結局王都から出ることにした。
少なくとも三日はなにも食べていない気がする。ふらふらとおぼつかない足を木の棒を杖のように使って支え、あてもなく彷徨う。
近くには村も町も一つもない。
一体今、どの辺りを歩いているのだろう。
ふとその時、遠くから人の声が聞こえてきた。それもかなりの数だった。
はぁ、やっと...人に会える。
僅かな希望が見え、足に力が入る。
十分ほど歩くと、森の中にたくさんの白いテントがあるのが見えた。
ちょうどテントから出入りしている人たちを見つけた。
「あ、あの...なにか食べものはありますか?」
その人たちは俺に気づくと、すぐ駆け寄って来てくれた。身なりからして冒険者だとうかがえた。
「おい、大丈夫か?」
冒険者のうち、一人の女性が声をかけてきた。
外見だけみると二十歳ぐらいだろうか...
「は...い、なんとか、三日も何も食べてないもの
で...」
「おい、ルーク。何か食べものを持って来てくれ」
そう言うと彼女は俺の体を軽々と持ち上げ、テントの方に連れていってくれた。
「すごいですね...自分みたいな男を持ち上げるなんて...」
「あら。それは私が怪力バカだってからかってるの?」
「いえ、そんなことはありません」
「まぁ。こう見えてもLv.5の冒険者だからね」
Lv.5...? あぁ、そういえば王城でそんな説明をされた気がする。確か、冒険者のLvは1~5までだったような...ってことはこの人ものすごく強いのでは...
先程まで彼女をか弱い女性だと思っていたことに恥ずかしくなる。
テントに到着した。
「すいません、ありがとうございます」
彼女に運んでもらったお礼をしているとすぐに食事が出てきた。
「本当になにからなにまですいません。」
「いいのよ、さぁ、食べなさい」
「はい、いただきます」
三日ぶりの食事は天国のようだった。
全て料理が美味しく感じた。
やはり、空腹は最高のスパイスなのだなと実感した。
「ところで君はどうしてこんなところにいるのか?」
彼女がそう聞いてきた。
俺は、いままでの経緯をすべて説明した。
「それは災難だったね。魔法適正値がほぼない人なんて聞いたことないな...平民でも生活魔法くらい使えるし...それに、召喚士なんていう職業があるのが初耳だな」
それから、俺は美味しい料理を食べながら様々なことを聞いた。彼女の名前はセレナ。彼女はクランという冒険者たちの集団に属していて、いまはその遠征中だといった。また、俺が追放された二日後に異世界転移者のみを集めた小規模クランができたという情報も手に入れた。恐らくクラスメートのことだろう...
クランには500人規模の大規模クラン。200人規模の中規模クラン。100人以下の小規模クランがある。
セレナの属するクランは大規模クランにあたるらしい。
「ごちそうさまでした。」
与えられた料理を平らげ、帰り支度の準備をする。
「あら、もう帰るの?」
「はい、ただ飯もらった上に居候なんてできませんので、この恩はいつか必ず返します。」
それじゃあ、気をつけろよーと彼女は俺を見送ってくれた。
「今日は久しぶり食事にありつけたし優しい人たちにも出会えてよかったなぁ」
暗い夜道を一人歩き始めた。
「さて、次はどこへ行こうかな...」
セレナたちに別れをつげてから五分も経たないころだった。
「キャー」
女性の悲鳴が聞こえた。
声に驚き、振り返ると冒険者の格好をした自分より一つ歳下くらいの少女が、三メートルほどある魔物に襲われているのが見えた。
近くに落ちていた小石を持ち、駆け寄る。
「離れろぉー」
持てる力を全てをのせて小石を投げた。
コンッ
小石は魔物の角に弾かれた。
魔物がこちらに気づき、獲物を変更した。
「よし、こっちだ」
少女から距離を離すために走って魔物を牽制した。
ふぅ、大分離れたか...
よしここなら...と魔物と向き合う。
「俺の元いた世界では、主人公はピンチの時に必殺技を繰り出せるという法則があるんだよ」
フッと口角を上げた。
「来いっ霊獣。召喚だ.....ってあれ?」
魔物が徐々に迫ってくる。
「召喚、召喚、召喚.....くそっ...」
ガシッ...
「ぐっ....」
魔物が俺の体を掴かみ、胃液が逆流し始めた。
「う...離せぇ....」
力を込めるがビクともしない。
あぁ、俺ってこんなのところで死ぬのかぁ....
魔物がさらに力を込め、体を持ち上げる。
「くっ....息ができな...い」
結局、王城を出た後、お金もなく宿もとれなかった。そもそも、王都は裕福な貴族たちや収入がある人が住む場所であるため、宿にしても、食料にしても料金が高すぎる。それゆえ、王都にいても仕方ないと感じ、結局王都から出ることにした。
少なくとも三日はなにも食べていない気がする。ふらふらとおぼつかない足を木の棒を杖のように使って支え、あてもなく彷徨う。
近くには村も町も一つもない。
一体今、どの辺りを歩いているのだろう。
ふとその時、遠くから人の声が聞こえてきた。それもかなりの数だった。
はぁ、やっと...人に会える。
僅かな希望が見え、足に力が入る。
十分ほど歩くと、森の中にたくさんの白いテントがあるのが見えた。
ちょうどテントから出入りしている人たちを見つけた。
「あ、あの...なにか食べものはありますか?」
その人たちは俺に気づくと、すぐ駆け寄って来てくれた。身なりからして冒険者だとうかがえた。
「おい、大丈夫か?」
冒険者のうち、一人の女性が声をかけてきた。
外見だけみると二十歳ぐらいだろうか...
「は...い、なんとか、三日も何も食べてないもの
で...」
「おい、ルーク。何か食べものを持って来てくれ」
そう言うと彼女は俺の体を軽々と持ち上げ、テントの方に連れていってくれた。
「すごいですね...自分みたいな男を持ち上げるなんて...」
「あら。それは私が怪力バカだってからかってるの?」
「いえ、そんなことはありません」
「まぁ。こう見えてもLv.5の冒険者だからね」
Lv.5...? あぁ、そういえば王城でそんな説明をされた気がする。確か、冒険者のLvは1~5までだったような...ってことはこの人ものすごく強いのでは...
先程まで彼女をか弱い女性だと思っていたことに恥ずかしくなる。
テントに到着した。
「すいません、ありがとうございます」
彼女に運んでもらったお礼をしているとすぐに食事が出てきた。
「本当になにからなにまですいません。」
「いいのよ、さぁ、食べなさい」
「はい、いただきます」
三日ぶりの食事は天国のようだった。
全て料理が美味しく感じた。
やはり、空腹は最高のスパイスなのだなと実感した。
「ところで君はどうしてこんなところにいるのか?」
彼女がそう聞いてきた。
俺は、いままでの経緯をすべて説明した。
「それは災難だったね。魔法適正値がほぼない人なんて聞いたことないな...平民でも生活魔法くらい使えるし...それに、召喚士なんていう職業があるのが初耳だな」
それから、俺は美味しい料理を食べながら様々なことを聞いた。彼女の名前はセレナ。彼女はクランという冒険者たちの集団に属していて、いまはその遠征中だといった。また、俺が追放された二日後に異世界転移者のみを集めた小規模クランができたという情報も手に入れた。恐らくクラスメートのことだろう...
クランには500人規模の大規模クラン。200人規模の中規模クラン。100人以下の小規模クランがある。
セレナの属するクランは大規模クランにあたるらしい。
「ごちそうさまでした。」
与えられた料理を平らげ、帰り支度の準備をする。
「あら、もう帰るの?」
「はい、ただ飯もらった上に居候なんてできませんので、この恩はいつか必ず返します。」
それじゃあ、気をつけろよーと彼女は俺を見送ってくれた。
「今日は久しぶり食事にありつけたし優しい人たちにも出会えてよかったなぁ」
暗い夜道を一人歩き始めた。
「さて、次はどこへ行こうかな...」
セレナたちに別れをつげてから五分も経たないころだった。
「キャー」
女性の悲鳴が聞こえた。
声に驚き、振り返ると冒険者の格好をした自分より一つ歳下くらいの少女が、三メートルほどある魔物に襲われているのが見えた。
近くに落ちていた小石を持ち、駆け寄る。
「離れろぉー」
持てる力を全てをのせて小石を投げた。
コンッ
小石は魔物の角に弾かれた。
魔物がこちらに気づき、獲物を変更した。
「よし、こっちだ」
少女から距離を離すために走って魔物を牽制した。
ふぅ、大分離れたか...
よしここなら...と魔物と向き合う。
「俺の元いた世界では、主人公はピンチの時に必殺技を繰り出せるという法則があるんだよ」
フッと口角を上げた。
「来いっ霊獣。召喚だ.....ってあれ?」
魔物が徐々に迫ってくる。
「召喚、召喚、召喚.....くそっ...」
ガシッ...
「ぐっ....」
魔物が俺の体を掴かみ、胃液が逆流し始めた。
「う...離せぇ....」
力を込めるがビクともしない。
あぁ、俺ってこんなのところで死ぬのかぁ....
魔物がさらに力を込め、体を持ち上げる。
「くっ....息ができな...い」
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