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エミリアとベルド伯爵家の実情⑦

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 もう一人、執事見習いの青年は、明後日あたりこちらに到着予定だ。
 青年はモーリスとセバスが教育予定だ。
 エミリアの小さな手を引き、中庭に出ると、すでにお茶の準備が整っていた。
 冷たいフルーツティーを飲みながら、エミリアの近況を聞く。楽しそうに話すエミリアを見ながら、家庭教師の人選を母に任せて良かったと思う。
 エミリアの学力は、同年代の令嬢と同等。
 貴族はおおよそ五歳から七歳から家庭において教育が始まる。だが、エミリアに、あのベルド伯爵達がまともな家庭教師なんてつけるわけない。その家によっては、女主人や乳母が行う事があるが、エミリアの母親は亡くなってしまい、ナンシーがそんなことするわけない。
 結局、先代ベルド伯爵に託された使用人達がエミリアに読み書きを教えた。ちなみにフランシスにはエルゴス・ベルドを着けているが、当人のやる気がないため、上手くいっていない。まだエミリアがベルド伯爵家にいたころは、授業はさぼりがちで、フランシスは出された課題をエミリアにすべて押し付けていた。
 ミュンヘナー王国では、12歳になると、貴族は義務として学園に通う。その為の家庭学習なのに。
 まあ、フランシスはほったらかしでもいいと両親は言っていた。

「エミリア、何か不便はないかい?」

「いいえ、ありません。とても楽しいです」

 純粋に笑うエミリア。つられてメイド達も笑顔だ。エミリアはフォン辺境伯の妖精と呼ばれるようになり、可愛がられている。
 たまに両親と食事やお茶を一緒にしているが、厳つい顔の父親も、マナーに厳しい母親もエミリアには甘い。エミリアのマナーに関しては、母が教えている。エミリアには最低限のマナーはあったが、飲み込みがはやいと、母は嬉しそうに言っていた。
 短いエミリアとのお茶が終了してしまう。
 これからセバスのミュンヘナー王国の歴史講座、別の家庭教育による近隣諸国の社会情勢と歴史だ。
 頭が痛い。

「バルド様、今、ピアノを教えていただいています。上手く弾けるようになったら聞いて頂けますか?」

「ああ、もちろん。正装して聞こう」

「そ、そんな大層なものじゃないんです」

 エミリアがわたわたしている。仕草一つ一つが可愛らしい。メイド達からも、かわいー、と呟きが聞こえる。
 エミリアを部屋に送り、自分の部屋に。
 セバスの講座を聞きながら、ふと、思い出す。大したこと無かったが、そういえば、そろそろあれが出てくる。
 途中だが、モーリスを呼び、指示を出す。

「はい、ご主人様」

「東の森でドラゴンが出る。数日後には出撃するから、準備を頼む」

 セバスとモーリスがため息をついた。
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