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今、排するべきか?③

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 モーリスが準備してくれた湯浴みを済ませて下がらせる。ここ数日、モーリスを長い時間拘束してしまった。モーリスには幼い息子が二人いる。きっと寂しい思いをさせたかもしれない。どこかで休暇を送ろう。

 さっきのベンへのワイン、マギーへの感謝、モーリスへの配慮。

 そう考えが至るようになったのは、エミリアのおかげ。もちろん、昔から、両親からも言われていた。求めた働きをしてくれるのが、当たり前と思わず、感謝の念を忘れない。エミリアがちょっとしたことでも、使用人達に感謝していたのにやっと感化されたのは、エミリアが嫁入りして何年も経ってからだ。そこからエミリアとの遅々として進まない交友が始まり、やっとちゃんとした家族になりたいと願ったのは、エミリアがミュンヘナー王国の貴族学校を卒業する歳だった。
 
 卒業したら改めて、身内だけだが、結婚式を挙げようと、準備していたのに。
 エミリアの為に仕立て上げた、花嫁衣裳が出来上がったと連絡が来た日に、手紙が届いた。

 エミリアの友人からの速達。エミリアが身に覚えのない罪で拘束されてしまったと。

 机に座り、少しずつ記憶を掘り起こす。真っ白なノートに思い出せるだけの名前や、キーワードを羅列する。

 エミリアは首都の貴族学園に通っていた。自分と結婚はしたが、実際夫婦ではない、白い結婚を続けていたので、貴族学園に通えていた。通った理由はエミリアにしては、言い経験になるし、卒業後の人脈のパイプ作りのために。
 真面目なエミリアは、真面目な友人達に囲まれて学生生活を送っていた。手紙の字がそう感じさせてくれた。

 もうすぐ、結婚式なのに。なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ。

 目撃し、どうしようも出来なかった、ごめんなさいと、泣きじゃくるエミリアの友人の女子生徒。速達をくれた彼女は平民枠で入学して、その優秀さで、色んな貴族から嫌がらせを受けていた。そこをエミリアがいたグループが庇っていた。

 その日、卒業式とその後行われる予定のパーティーの説明だった。平民生徒は、パーティーには出ないため、退室したが、騒ぎは直ぐに始まったと。

 すべてを聞いたわけではないが、説明が行われていた講堂に入ろうにも、野次馬がすごくて入れなかった。中からは悲鳴と罵声が漏れていた。

 しばらくして、王宮の騎士達がやって来て、数人の女子生徒を連行した。その数人の一人がエミリアだ。見ていた平民生徒は、ただ事ではないと思い、教師に訴えた。連れ去られた女子生徒の中には、第三王子カシアンの婚約者、ベルギッタ侯爵令嬢が含まれていたのだ。他にも有力な地位にある家名の令嬢ばかり、学園も慌てたそうだが、既に手遅れだった。

 エミリア、ベルギッタ侯爵令嬢達が連行された理由。それはカシアン王子が寵愛を授けているフランシス・ベルド伯爵令嬢を、苛めた、という、裏も取れていない、フランシスの証言だけで拘束したのだ。
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