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領地経営
しおりを挟む私は妻である内に使える権力を勝手に使って領地のいくつかの法律を改定した。
領地経営に関して、義母と夫はそこまで興味も無いらしく理解もしていなかったので全く使えなかったが、逆に口を出される事もなかったのでそこは良かった。
義父に関しても王都で役職に就いていた為に報告書にて税収の部分しか確認していないようだった。
損さえ出さなければ然程気にされる事はないと知り、私は更に好き放題する事にした。
なんとなく思いついた新しい試みも沢山導入してみた。
領内で、賄賂や汚職等が罷り通っていた世襲制による管理人を廃し、能力主義の人材育成型へと変えたり…
勝手に学舎の様な小さな集会場を各地域に作って領民の基礎学力を向上させたり…
仕事のない者を集めて雇い公共交通機関の整備させたり…
職人達や働く人の地位向上を目指して組合を作ったり…
特許制度を取り入れ、新しい商品や技術を促進させたり…
と、多少強引な手段と自分の地位を利用してやりたい放題の事をした。
また、優秀な人材を見つければ身分に関係なく声を掛けては雇い入れた。
雇用条件をキチンと明文化し、成果に応じてお給料も昇給させた。
優秀な人材を自分の為に確保したい…ただそれだけだったのだか…
別にそこまで高待遇だった訳でなく成果に応じた常識的な雇用条件に沿って評価していただけなのに、雇った者達からはやたらと感謝され優秀な人材は更に優秀な人材へと成長した。
当然の結果だが、そんな優秀な者達はすぐに素晴らしい成果を出してくれた。
私の考えを形にしてくれる素晴らしい人材に支えられ…その結果たった1~2年でも領内は徐々に活気づき、目に見えて発展し始めたので必然的に他の領地や国からの注目度も高まっていた。
これらの政策に対する評価はまだ始まったばかりという理由で意見は真っ二つに別れていたようだが、国の上層部での評判は概ね良かったようだ。
たった1~2年でここまで成果が出ている事が評価され、政策を部分的に他の領地でも取り入れてみる事が決まっていた。
そして、今後の成果次第ではもっと増えていく予定であった。
おかげさまで、領地経営は順調な上に評価も上がり資金も潤沢に使うことが出来るようになって来たので、更なる規模拡大のために開いたのが今回のパーティーだったのだ。
確かな足場固めと新しく参入する予定の領主の方々へのご挨拶と、また国からの視察的意味合いも含まれた顔合わせのパーティーでもあった。
問題さえ起こさなければ伯爵家の名声を高め、更に国や高位貴族達へも宣伝出来る良い機会であったのだが…
まぁ…ある意味、伯爵家を印象付ける事には成功したのかな…
私自身は自分の評価等は全く気にしていないし興味も無かったけれど、改革の主導が私だという事は周知の事実となっている。
結婚当初は伯爵家の名前で政策を進めようとしたのだが『万が一失敗したら名前に傷が付くので新政策は自分の名前でやってくれ』と彼に言われ、ずっと私の名前で進めてきたのだ。
…とりあえず、そんな私をなんの根回しもせずに公衆の面前で離縁するなんて…今の伯爵家の状況や、国や領地の情勢を全く理解していないと自ら知らしめたようなものだ。
義両親からも少し前に“嫁がなにかやってるらしいな。領地の事で高位貴族の方々に褒められた。税収も上がってるし、このまま頑張れ”と、いった内容のお手紙が届いてはいたのだが…
一応、彼宛だったのだが読まれる事もなく放置され困った家宰に促され、私が確認して当たり障りのない返事をしておいた。
そういった事を踏まえると…彼等は私主導の政策なんて存在さえ知らなかったのだろうと思う。
王都に住む義両親は最近高位な方々からお誘いが増えたらしく、そのお茶会や夜会等でも私の話題がよく上がっていたと言っていた。
…社交をしていれば、自分の領地の噂話くらい当然耳に入るので、把握しているのが普通なのだけど…
…彼等は普通ではなかったから…
彼等は周りが全く見えておらず、実に杜撰で行き当たりばったりな計画を立てそれを実行してしまったのだ。
しかも…よりにもよって伯爵家にとって、とても重要な日に…
“私を追放する”という目的にばかり目がいって伯爵家の状況もその後の影響も自分達の立場も何も考えていなかったのだろう。
…そもそも、彼等は今の生活がどうして成り立っているかさえ考えていないのだろうな。
義両親から反対されていた筈の彼女と屋敷でのびのび過ごせているのは何故なのか…
仕事を一切していないのに誰からも苦言を呈されないのは何故なのか…
そもそも、何故“契約結婚”が必要だったのか…
彼がわざわざ提案した“私”との結婚の理由さえ…彼はもう忘れているのだろう…
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