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辿り着けない寺

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フィリップ・ベルナルド:元帝国騎士団所属だった鳥使いの男性。本名はウルフィリア・レインフォルス。32歳。
アーロン・ストライフ:魔法使いの助手兼用心棒をやっている青年。21歳。


 ホロロコリス、稽古場跡地、庭園。

フィリップ 「ひゅー、青年ってば、モテモテだね!」

アーロン 「! おっさん!?」

(SE フィリップが木から飛び降りる音)

フィリップ 「よっ、と」

アーロン 「なんだよ、いたのか」

フィリップ 「おじさんが珍しく物憂げにしてたら、青年たちがおっぱじめたんでしょうが」

アーロン 「おっぱじめるって……」

フィリップ 「んん~やらしい!」

アーロン 「……なんか、良い匂いすんな。おっさん、香水なんか使うんだな」

フィリップ 「およ、バレちった?」

アーロン 「すんすん、これは、ローズマリーだっけか」

フィリップ 「これは意外。正解だよ」

アーロン 「ま、アリアの手伝いをしてたら、嫌でも覚えるって」

フィリップ 「それもそうか」

アーロン 「つーか、おっさん、普段から香水着けてたか?」

フィリップ 「そんな贅沢、おじさんにはできないよ」

アーロン 「騎士団史上最高の天才なんて謳われるウルフィリア・レインフォルス様でも、か?」

フィリップ 「耳聡いね、どさくさで忘れてくれなかったか」

アーロン 「で、どうなんだよ? まだ、言う気にはなれないか?」

フィリップ 「青年もたいがい手厳しいよね」

アーロン 「ルーナほどじゃねぇけどな」

フィリップ 「ははは」

アーロン 「……」

フィリップ 「……いずれ話すよ」

アーロン 「おいおい、これが最後の戦いになるかもしれないんだぜ? ちょっとはサービスしてくれてもいいんじゃねぇか?」

フィリップ 「最後、か……」

アーロン 「おっさん? なんかあんのか?」

フィリップ 「いいや」

アーロン 「なんだよ、思わせぶりなこと言いやがって」

フィリップ 「めんごめんご」

(SE 弱い風が吹く音)

アーロン 「……匂い、変わったな」

フィリップ 「ミドルノートは金木犀。……おじさんも、さすがに自分を拾ってくれた恩人と戦うのは、少し不安でね」

アーロン 「……不安を和らげる効果でもあるのか?」

フィリップ 「匂い、って凄いよね。嗅ぐだけでリラックスしたり、懐かしい気持ちにもさせてくれる」

アーロン 「意外だ。おっさんでもそんなこと思ったりするんだな」

フィリップ 「おじさんだって伊達に年齢を重ねてないのよ」

アーロン 「そうかよ」

フィリップ 「じゃ、おじさんはもう戻るわ」

アーロン 「おう」

フィリップ 「……おじさんね、結構キミたちに賭けてるんだよね」

アーロン 「……?」

フィリップ 「賭けに勝ったら、おじさんも隠しごとはしないで、全部話すよ」

アーロン 「……おう、待ってるわ」

フィリップ 「それじゃ」

アーロン 「…………」

フィリップ 「ああ、それと……」

アーロン 「まだ何かあるのかよ」

フィリップ 「アリアちゃん、玄関先でずっと待ってたわよ~? 青年も早く戻ってやりな」

アーロン 「へいへい」

つづく
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