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北村さん(仮名)という男友達から聞いた話。

彼は羨ましいことに、小学校高学年から中学一年までに
身長が四十センチくらい一気に伸びたそうだ。
身長が伸びたことでスポーツが得意になったりと自信がついたりと
色々と良いこともあったのだが、
同時に微かな問題も出てきた。
急激な体格の変わり方に身体がついていかなかったのか
成長痛で関節が頻繁に痛み、彼を苦しめたのだ。
他にも、筋肉が何の前触れもなく
誰かにつねられたようにピクピクと動いたり
髪質が何となく硬くなったりと色々とあった。
「まあ、それらは原因がわかってたんですけど
 もう一つの方が不思議でしたね」
北村さんはそう言って話してきた。

そのころ、彼はパッと瞬く光のようなものを見ることが
増えたそうである。
その光はほんの数コンマだけ、彼の視界に瞬いて
そして消えるという不思議なものだった。
眼を閉じていても、時折、光ることすらあった。
両親に話すと、網膜の病気や
癲癇の軽い発作かもしれないと心配されて
病院に連れていかれて検査をしたが、特に異常はなかった。
当然眼科にも行ったが、そちらでも正常だと診断された。
彼の両親は少し悩んだ後に
急激な成長によるものだろうと説明して
そして気にしないでいいと言った。

実際、その光が彼の学生生活を脅かすことは無く
そして、成長が緩やかになった中二になるころには頻度も減って
気にならなくなった。
そんなある日のこと
音楽室で彼は、他の生徒たちと授業を受けていた。

音楽の授業の先生は、エキセントリックでめんどくさいと
生徒たちに評判の悪い吉沢先生(仮名)だった。
五十男の吉沢先生は、ヒステリックで
しかも筋が通らないことを時折、言い出すのだが
癇癪を起こしたり、殴ったり、怒鳴り散らすまではないので
生徒たちから困った変人として微妙な距離感を持たれているという
変な存在だった。

その授業中に彼の両目を真っ白な光が覆った。
ああ……ひさしぶりだな。
彼は驚くこともなく、すぐに取り戻した視界で
授業の続きを受けようとすると、いきなり
教壇の吉沢先生が

「おい!いま何か光ったよな!?光っただろ?」

と裏返った声で、生徒たちに訊きまわり始めた。
北村さん以外の生徒は
「ああ、また吉沢が何か言ってるよ……」
ウンザリした顔をして、黙ってそれを眺めていて
その中で一人北村さんだけが、驚いていた。
自分以外にも、あの光が見える人がいたのか……。
だが結局北村さんは、その後
吉沢先生に、光が見えたと話に行くことは無かった。

中三になるころには、受験に追われて
光とか言っていられる暇はなくなり
高校に入って成長もほぼ止まり、成長痛も跡形もなくなり
光が見えることも一切なくなったのだが
北村さんは時折、あの音楽室でのあれはなんだったのだろうと
今でも思い出すそうだ。
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