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バルナングス共和国編
味覚の妥協点
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その後、何日も俺たちは西へと進んで行く。
幾つもの街や村を通り過ぎて
ファイナの我がままにも、何とか応えながらである。
楽しい旅に満足なファイナは次第にキラキラしてきて
対照的に世話をしている俺とバムはボロボロにくすみながら
何とか、ようやくバルナングス共和国との境目にある。
ドラバディーの関所へとたどり着いた。
そうなのである、今までエルディーン王国の領地だったのだ。
良く捕まらなかったなと思う。
関所とは言え、峡谷に挟まった巨大城塞のような造りで
開きっぱなしの門には、旅人の行列が出来ている。
その最後尾に並んで、三人で待つ。
「わたくし、旅人として一流になりつつあると
日々実感しています。これほどの経験は中々ありえませんわ」
「そうですか……」
一人で自分の話を喋りまくるファイナの話を
いつものことなのでバムと適当に聞き流していると
列が前へと進んで行く。
関所内へと入り、厳つい役人に通行証を三人分見せると
「通って良し」
とあっさり言われたときは、彼が天使に見えた。
これで俺たちは新しい国に入って
捕まることは無くなるのである。
気がずいぶん楽になった俺たちは、さらに西へと進んで行き
バルナングス共和国の首都を目指す。
このまままっすぐ西へ行けば辿り着くと
バムからは言われた。
関所を越えて歩いていると、陽が沈みだしたので
近くの村に宿を取って
そこで休むことにする。
風呂は無いので、濡れタオルで身体を拭いて
そして宿の調理場を使わせてもらって
俺たちの分と、ファイナの分の二種類の味の
作り置きを同時に作っていく。
「ああ、こっちの鍋は良い匂いなのに、こちらは……」
やはりファイナは、俺たちの味覚には中々慣れないらしい。
彼女は途中で、宿泊室へと去って行った。
「そう言えば、冷えた麦飯のおにぎりは
ファイナは食べられたよな」
ふと思い出しので言ってみると、バムは頷いて
「鮮度が落ちていたからかもしれません。
もしかすると、そこを突けば、案外ファイナさんと
私たちの味覚の妥協点があるかもしれませんね」
「納豆とかどうだろうか。俺の国の食べ物なんだけど
腐った豆なんだ。でも特殊な製法で食えるし
慣れたらこれが美味いんだよ」
バムは考え込む。
「だとすると、腐ってても食べられる食べ物や
冷えてても美味しいもの、その辺りを探求すれば
私たちが美味しくて、この世界の人たちも
納得するような料理が……」
「そういえば、チーズとかあるの、この世界は?」
「あります。あ、確かに……発酵乳食品は、味付けの無いものは……」
バムは気づいた顔をする。
「味がもしかして変わらない?」
「はい。スパイスなどで味付けが入るとダメですが
素のままのものは、例えばお酒とかもわりと飲めますね……」
なんとなく俺たちが目指す方向性が見えてきた気がする。
発酵食品などで、二つの味覚の妥協点を探るのだ。
もう小石と生ゴミで、優勝を目指したくはない。
「料理の研究には、ファイナを使おう。あの子に食べて貰って
確認すればいい」
「そうですね。大いに役に立ってもらいましょう!」
その後、深夜まで二人で、良い雰囲気の中、作業して
一緒にベッドインは……当然しなかった。
しかも一つしかないベッドはファイナが占有していたので
俺とバムはいつものように寝袋で寝ることになる。
幾つもの街や村を通り過ぎて
ファイナの我がままにも、何とか応えながらである。
楽しい旅に満足なファイナは次第にキラキラしてきて
対照的に世話をしている俺とバムはボロボロにくすみながら
何とか、ようやくバルナングス共和国との境目にある。
ドラバディーの関所へとたどり着いた。
そうなのである、今までエルディーン王国の領地だったのだ。
良く捕まらなかったなと思う。
関所とは言え、峡谷に挟まった巨大城塞のような造りで
開きっぱなしの門には、旅人の行列が出来ている。
その最後尾に並んで、三人で待つ。
「わたくし、旅人として一流になりつつあると
日々実感しています。これほどの経験は中々ありえませんわ」
「そうですか……」
一人で自分の話を喋りまくるファイナの話を
いつものことなのでバムと適当に聞き流していると
列が前へと進んで行く。
関所内へと入り、厳つい役人に通行証を三人分見せると
「通って良し」
とあっさり言われたときは、彼が天使に見えた。
これで俺たちは新しい国に入って
捕まることは無くなるのである。
気がずいぶん楽になった俺たちは、さらに西へと進んで行き
バルナングス共和国の首都を目指す。
このまままっすぐ西へ行けば辿り着くと
バムからは言われた。
関所を越えて歩いていると、陽が沈みだしたので
近くの村に宿を取って
そこで休むことにする。
風呂は無いので、濡れタオルで身体を拭いて
そして宿の調理場を使わせてもらって
俺たちの分と、ファイナの分の二種類の味の
作り置きを同時に作っていく。
「ああ、こっちの鍋は良い匂いなのに、こちらは……」
やはりファイナは、俺たちの味覚には中々慣れないらしい。
彼女は途中で、宿泊室へと去って行った。
「そう言えば、冷えた麦飯のおにぎりは
ファイナは食べられたよな」
ふと思い出しので言ってみると、バムは頷いて
「鮮度が落ちていたからかもしれません。
もしかすると、そこを突けば、案外ファイナさんと
私たちの味覚の妥協点があるかもしれませんね」
「納豆とかどうだろうか。俺の国の食べ物なんだけど
腐った豆なんだ。でも特殊な製法で食えるし
慣れたらこれが美味いんだよ」
バムは考え込む。
「だとすると、腐ってても食べられる食べ物や
冷えてても美味しいもの、その辺りを探求すれば
私たちが美味しくて、この世界の人たちも
納得するような料理が……」
「そういえば、チーズとかあるの、この世界は?」
「あります。あ、確かに……発酵乳食品は、味付けの無いものは……」
バムは気づいた顔をする。
「味がもしかして変わらない?」
「はい。スパイスなどで味付けが入るとダメですが
素のままのものは、例えばお酒とかもわりと飲めますね……」
なんとなく俺たちが目指す方向性が見えてきた気がする。
発酵食品などで、二つの味覚の妥協点を探るのだ。
もう小石と生ゴミで、優勝を目指したくはない。
「料理の研究には、ファイナを使おう。あの子に食べて貰って
確認すればいい」
「そうですね。大いに役に立ってもらいましょう!」
その後、深夜まで二人で、良い雰囲気の中、作業して
一緒にベッドインは……当然しなかった。
しかも一つしかないベッドはファイナが占有していたので
俺とバムはいつものように寝袋で寝ることになる。
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