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転移→エルディーン王国編
神聖なる修行
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何人もの煌びやかなエルフたちが
俺たちの料理の置かれたテーブルの前へと
ワクワクした顔で駆け寄ってきて
そして切り分けられた不味そうなホットケーキを
手持ちのフォークで突いて、満足そうに頬張る。
「ふむ……この噛み応え……さらにじんわりと染みてくる
何種ものスパイスがたまりませんなぁ」
「パルムハルト卿のおっしゃる通りですわ。
彼らは、我がエルディーンの新星です。
どこに出しても恥ずかしくありません」
一回戦から必ず、俺たちの料理を食べに来てくれる
金髪の高貴なエルフが興奮した顔で
周囲に群がって我先に、
不味そうなホットケーキを食べようとする
他の審査員たちに熱弁をふるう。
俺とバムは直立不動で立って空を見上げながら
小石と生ごみを食べさせないで良かったことに
心底ホッとしている。
しかし本当に酷い世界である。
味覚をこんなにしたとバムが語っていた
前食王は、よほどひねくれたやつか
旨いものを一切知らなかったに違いない。
その後、当然のごとく
四組中最高の評価を得た、俺たちの
クソ不味いホットケーキで、決勝進出が決まり
決勝戦は明日の昼からだと審判たちからは
告げられた。
俺たちは夕暮れの中を
宿へとトボトボと支え合うように歩いていく。
「まったく、やりきった充実感無いな」
「ですね……楽勝だと思っていましたが
予想以上に気持ちの負担が大きいですね……」
何とか宿の部屋へとたどり着き
鍵を使って、宿泊している部屋の扉を開けると
なんと、真っ赤な透けたレースのランジェリー姿の
先ほどの審査員エルフ女が、顔を真っ赤にして
こちらを見ていた。
「……わたくし、あなたたちのお料理に
心を打たれました……もうっ、この気持ちは
抑えきれません!この身全て、好きになさって!」
俺へといきなり抱きついてくるセクシーなエルフ女に
固まっていると、バムが
「……ゴルダブル様は
食王への神聖なる修行中の身です。
どうか、その辺りで、お気持ちをお治めくださいますように」
といきなり床に頭を擦りつけて
土下座し始めた。
エルフ女は一瞬、電撃に打たれたような表情をして
「ま、まさか、伝説の食王を目指しているほどのお方だとは……」
焦った表情で、部屋の外へと駆けていった。
いや、待て。ちょっと待て
いま、俺、たぶん、あのエルフとやれたよね?
それは無理でも、少なくともキスくらいはできたよね?
おい、バム。と一瞬、睨もうとして
こっちに来てからどれだけバムに世話になったかが
頭に過る。とても責められない……ちくしょおおおおおおおおお!!!!
心の中で絶叫しながら、号泣する。
捌け口を求めて彷徨う性欲を必死に治めながら
しばらく壁によりかかっていると
立ちあがったバムが
「お夕飯作ってきます……」
と言って部屋から出ていった。
如何ともしがたいので窓際で風を浴びる。
バムの作ってきた美味い夕飯を
二人で無言で食べていると
「私だって、ゴルダブル様に……と思います。
でも、その度に、この方はもっと大きな目的があるんだ。
私如きの、ちっぽけな想いで煩わせてはいけないと考えるんです……」
「……」
いや、まてまてまてまてまて、それ気にしないでいいって!
いつ、俺が食王になる神聖なる修行を開始したよ!?
おい、来いよバム!かわいい君を、いつでも俺は待ってるよ!
という熱い視線を必死に送ってみるが、バムは真面目な顔で
俯いて食べ続けるだけだった。
俺たちの料理の置かれたテーブルの前へと
ワクワクした顔で駆け寄ってきて
そして切り分けられた不味そうなホットケーキを
手持ちのフォークで突いて、満足そうに頬張る。
「ふむ……この噛み応え……さらにじんわりと染みてくる
何種ものスパイスがたまりませんなぁ」
「パルムハルト卿のおっしゃる通りですわ。
彼らは、我がエルディーンの新星です。
どこに出しても恥ずかしくありません」
一回戦から必ず、俺たちの料理を食べに来てくれる
金髪の高貴なエルフが興奮した顔で
周囲に群がって我先に、
不味そうなホットケーキを食べようとする
他の審査員たちに熱弁をふるう。
俺とバムは直立不動で立って空を見上げながら
小石と生ごみを食べさせないで良かったことに
心底ホッとしている。
しかし本当に酷い世界である。
味覚をこんなにしたとバムが語っていた
前食王は、よほどひねくれたやつか
旨いものを一切知らなかったに違いない。
その後、当然のごとく
四組中最高の評価を得た、俺たちの
クソ不味いホットケーキで、決勝進出が決まり
決勝戦は明日の昼からだと審判たちからは
告げられた。
俺たちは夕暮れの中を
宿へとトボトボと支え合うように歩いていく。
「まったく、やりきった充実感無いな」
「ですね……楽勝だと思っていましたが
予想以上に気持ちの負担が大きいですね……」
何とか宿の部屋へとたどり着き
鍵を使って、宿泊している部屋の扉を開けると
なんと、真っ赤な透けたレースのランジェリー姿の
先ほどの審査員エルフ女が、顔を真っ赤にして
こちらを見ていた。
「……わたくし、あなたたちのお料理に
心を打たれました……もうっ、この気持ちは
抑えきれません!この身全て、好きになさって!」
俺へといきなり抱きついてくるセクシーなエルフ女に
固まっていると、バムが
「……ゴルダブル様は
食王への神聖なる修行中の身です。
どうか、その辺りで、お気持ちをお治めくださいますように」
といきなり床に頭を擦りつけて
土下座し始めた。
エルフ女は一瞬、電撃に打たれたような表情をして
「ま、まさか、伝説の食王を目指しているほどのお方だとは……」
焦った表情で、部屋の外へと駆けていった。
いや、待て。ちょっと待て
いま、俺、たぶん、あのエルフとやれたよね?
それは無理でも、少なくともキスくらいはできたよね?
おい、バム。と一瞬、睨もうとして
こっちに来てからどれだけバムに世話になったかが
頭に過る。とても責められない……ちくしょおおおおおおおおお!!!!
心の中で絶叫しながら、号泣する。
捌け口を求めて彷徨う性欲を必死に治めながら
しばらく壁によりかかっていると
立ちあがったバムが
「お夕飯作ってきます……」
と言って部屋から出ていった。
如何ともしがたいので窓際で風を浴びる。
バムの作ってきた美味い夕飯を
二人で無言で食べていると
「私だって、ゴルダブル様に……と思います。
でも、その度に、この方はもっと大きな目的があるんだ。
私如きの、ちっぽけな想いで煩わせてはいけないと考えるんです……」
「……」
いや、まてまてまてまてまて、それ気にしないでいいって!
いつ、俺が食王になる神聖なる修行を開始したよ!?
おい、来いよバム!かわいい君を、いつでも俺は待ってるよ!
という熱い視線を必死に送ってみるが、バムは真面目な顔で
俯いて食べ続けるだけだった。
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