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その4、手を繋いでくれた
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どうも、お久しぶりです。
茂越 啓太です。
姉に彼氏がいるという事実に衝撃を受け、弟ながら、あの本性を知られたら嫌われるんじゃないのかと心配している毎日です。
え?あれから勇士とどうなったかって?
そうですね、恋人のような幼馴染という所です。勇士は「啓太は恋人だよ♡」と言ってはくれます。
けれど、素直に喜べないのは、人前でイチャイチャとできないという、どうすることもできない現実ですね。
他人事のように思っていました。
同性同士の恋人っていう観念が俺にはなかったんです、お恥ずかしい。
視野が狭いと言われるのは承知の上ですが、どんなに世界は同性同士を認めても、ここは日本です。
珍しい物には集団で好奇の目を向けることに躊躇しない人たちが多くいます。
俺も、その中の一人だったからこそ、向けられる視線がとても怖いと思うのです。はい、チキンです。
「今日は、どこに寄って帰る?俺さ、キスプラとか撮りたいんだよねー。」
学校からの帰り道、多くの人が行き交う駅の広場で勇士が普段と変わらない様子で聞いて来た。
キスプラ...うん、勇士ってそういうことをたくさん人がいるところで言える人だったな。
俺はざわざわざわ...と、俺らの周りの人間が少し距離を取っているのに気づいた。そして、やたらと俺らを見ている。
勇士はそれに気づいていないようで、スマホを見ながら向かう場所を探していた。
「あっ、ここから少し歩いたところに撮れるところがあるから行こうよ、啓太」
ニコニコと笑顔を向けてくる勇士が、いつものように俺の手を繋ぎ、歩き始めた。
俺は手を繋いで彼と同じ方向に足を運ぶ。けれど、ちらりと自分のいた場所を振り返ってみた。
―!
数人...いや、10人ぐらいの人間が、ジロジロと俺らを目で追いかけてきている。
ぞわりと不快な寒気が走る。すごく嫌だった。
勇士は相変わらず気づいていない。
俺は、繋がれている手を離してみたらどうなるのか、と、心の中でぐらりと気持ちが揺らいだ。
俺は勇士が繋いでいる手を動かし、手を離してくれとアピールした。
「ン?...どうした?」
歩きスピードを落とし、俺の方を見て様子を伺ってくる。
俺は、一瞬、勇士の目を見た。
「...手を...離して...」
影を見せる俺の表情に気付いて勇士は小さくため息をついた。
「い、や、だ」
「...は?」
勇士の言葉に、俺は動揺する。まさか、断られるとは思わなかったから。
理由を告げたら離してくれるのだろうか。
「...男同士が手を繋ぐのを珍しいっていう目で見ている人がさっきからたくさんいるからさ、手を離せ」
俺の言葉を聞いて勇士がまっすぐな目をして
「なら、余計に離さない」
と返してきた。
どうして...。ぐるぐると色んな口実が頭の中で浮かんでくる。
「...でもっ、このままじゃ、勇士が変な目で見られるから...!!」
俺の必死な訴えを彼はクスクスと嬉しそうに笑う。
「ふふふっ、俺が困るから啓太が我慢してくれるの?それ、すげー嬉しんだけどー」
カァっと、自分の発言に気付き、顔に熱が溜まっていく。
「別に他の奴らの視線なんて気にしないよ、俺は。でも、啓太が嫌だっていうんだったら外ではしない。
手を繋ぎたいって思った時に他人の目が気になってできないって、それって何時代?古くない?
だったら、珍しくないようにしていけばいいんじゃねーの?」
勇士の言葉は、とてもストレートだった。確かにそうだと思う。
それに最後、間を開けて足した勇士の言葉は絶大だった。
「別に悪いことなんて何もしてないよ、好きか嫌いか。単純だよな」
自分の考えがちっぽけに見えてきた。確かに、同性同士の恋人は日本では珍しいだけで悪いことじゃない。
確かに見慣れていないから好奇な目を向けられるけど、それって好奇な目だけであって、嫌悪ではない。
奇抜な髪型にしてきて登校した友人が数日後には普通に周りと馴染んでいるのも同じだと思った。
...どうしていつも勇士は俺をスッと引き上げてくれるんだろう。不安ばかりが埋め尽くされていきそうな時、俺はいつも勇士の言葉で助けられる。
やっぱり、こういう所がかっこいいとおもう。
それがとても嬉しいと思った。勇士の近くに入れてこうして助けてもらえる存在の自分が幸せじゃんって思った。
嬉しくなった俺は一人で笑い出しながら元の歩く速さに戻す。
すると、勇士が合わせるように追いかけてきて
「...なに、啓太はそんなことを思ってたの?」
勇士の言葉に素直に俺は頷いた。
「でも、勇士の言葉が俺の一番だからそうだなって思った。だから、俺は...こうしたい」
さっき、ドロドロな感情で手放した勇士の手を再び繋いだ。
今度は、すっきりとした気持ちだ。互いの指と指を絡ませる恋人繋ぎをしてみた。
手を見て、さっきまでの感情とは違って嬉しい。
俺はふふって笑った。
それを見た勇士が傍で、大きく息を吸い込む。
そして、上を向きながら独り言にしては大きい声ではっきりと
「...俺の啓太がカワイイことをして、俺を試そうとしますっ!!
…神様、襲ってもいいですか、いいですよね。これは正しい選択ですよね」
勇士は嬉しそうに俺の顔とつないだ手を見てはそう呟く。
いいや、呟くのではなかった。
声の大きさっ!
周りの人間が勇士の声に驚いた表情を見せる。
けど、恋人繋ぎをした俺らを見た後、勇士の言葉と重ねた後、クスクスと笑みを溢して温かい目でみてくれるのだ。
茂越 啓太です。
姉に彼氏がいるという事実に衝撃を受け、弟ながら、あの本性を知られたら嫌われるんじゃないのかと心配している毎日です。
え?あれから勇士とどうなったかって?
そうですね、恋人のような幼馴染という所です。勇士は「啓太は恋人だよ♡」と言ってはくれます。
けれど、素直に喜べないのは、人前でイチャイチャとできないという、どうすることもできない現実ですね。
他人事のように思っていました。
同性同士の恋人っていう観念が俺にはなかったんです、お恥ずかしい。
視野が狭いと言われるのは承知の上ですが、どんなに世界は同性同士を認めても、ここは日本です。
珍しい物には集団で好奇の目を向けることに躊躇しない人たちが多くいます。
俺も、その中の一人だったからこそ、向けられる視線がとても怖いと思うのです。はい、チキンです。
「今日は、どこに寄って帰る?俺さ、キスプラとか撮りたいんだよねー。」
学校からの帰り道、多くの人が行き交う駅の広場で勇士が普段と変わらない様子で聞いて来た。
キスプラ...うん、勇士ってそういうことをたくさん人がいるところで言える人だったな。
俺はざわざわざわ...と、俺らの周りの人間が少し距離を取っているのに気づいた。そして、やたらと俺らを見ている。
勇士はそれに気づいていないようで、スマホを見ながら向かう場所を探していた。
「あっ、ここから少し歩いたところに撮れるところがあるから行こうよ、啓太」
ニコニコと笑顔を向けてくる勇士が、いつものように俺の手を繋ぎ、歩き始めた。
俺は手を繋いで彼と同じ方向に足を運ぶ。けれど、ちらりと自分のいた場所を振り返ってみた。
―!
数人...いや、10人ぐらいの人間が、ジロジロと俺らを目で追いかけてきている。
ぞわりと不快な寒気が走る。すごく嫌だった。
勇士は相変わらず気づいていない。
俺は、繋がれている手を離してみたらどうなるのか、と、心の中でぐらりと気持ちが揺らいだ。
俺は勇士が繋いでいる手を動かし、手を離してくれとアピールした。
「ン?...どうした?」
歩きスピードを落とし、俺の方を見て様子を伺ってくる。
俺は、一瞬、勇士の目を見た。
「...手を...離して...」
影を見せる俺の表情に気付いて勇士は小さくため息をついた。
「い、や、だ」
「...は?」
勇士の言葉に、俺は動揺する。まさか、断られるとは思わなかったから。
理由を告げたら離してくれるのだろうか。
「...男同士が手を繋ぐのを珍しいっていう目で見ている人がさっきからたくさんいるからさ、手を離せ」
俺の言葉を聞いて勇士がまっすぐな目をして
「なら、余計に離さない」
と返してきた。
どうして...。ぐるぐると色んな口実が頭の中で浮かんでくる。
「...でもっ、このままじゃ、勇士が変な目で見られるから...!!」
俺の必死な訴えを彼はクスクスと嬉しそうに笑う。
「ふふふっ、俺が困るから啓太が我慢してくれるの?それ、すげー嬉しんだけどー」
カァっと、自分の発言に気付き、顔に熱が溜まっていく。
「別に他の奴らの視線なんて気にしないよ、俺は。でも、啓太が嫌だっていうんだったら外ではしない。
手を繋ぎたいって思った時に他人の目が気になってできないって、それって何時代?古くない?
だったら、珍しくないようにしていけばいいんじゃねーの?」
勇士の言葉は、とてもストレートだった。確かにそうだと思う。
それに最後、間を開けて足した勇士の言葉は絶大だった。
「別に悪いことなんて何もしてないよ、好きか嫌いか。単純だよな」
自分の考えがちっぽけに見えてきた。確かに、同性同士の恋人は日本では珍しいだけで悪いことじゃない。
確かに見慣れていないから好奇な目を向けられるけど、それって好奇な目だけであって、嫌悪ではない。
奇抜な髪型にしてきて登校した友人が数日後には普通に周りと馴染んでいるのも同じだと思った。
...どうしていつも勇士は俺をスッと引き上げてくれるんだろう。不安ばかりが埋め尽くされていきそうな時、俺はいつも勇士の言葉で助けられる。
やっぱり、こういう所がかっこいいとおもう。
それがとても嬉しいと思った。勇士の近くに入れてこうして助けてもらえる存在の自分が幸せじゃんって思った。
嬉しくなった俺は一人で笑い出しながら元の歩く速さに戻す。
すると、勇士が合わせるように追いかけてきて
「...なに、啓太はそんなことを思ってたの?」
勇士の言葉に素直に俺は頷いた。
「でも、勇士の言葉が俺の一番だからそうだなって思った。だから、俺は...こうしたい」
さっき、ドロドロな感情で手放した勇士の手を再び繋いだ。
今度は、すっきりとした気持ちだ。互いの指と指を絡ませる恋人繋ぎをしてみた。
手を見て、さっきまでの感情とは違って嬉しい。
俺はふふって笑った。
それを見た勇士が傍で、大きく息を吸い込む。
そして、上を向きながら独り言にしては大きい声ではっきりと
「...俺の啓太がカワイイことをして、俺を試そうとしますっ!!
…神様、襲ってもいいですか、いいですよね。これは正しい選択ですよね」
勇士は嬉しそうに俺の顔とつないだ手を見てはそう呟く。
いいや、呟くのではなかった。
声の大きさっ!
周りの人間が勇士の声に驚いた表情を見せる。
けど、恋人繋ぎをした俺らを見た後、勇士の言葉と重ねた後、クスクスと笑みを溢して温かい目でみてくれるのだ。
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