3 / 31
第3話 聖女のお仕事
しおりを挟む
「ご、ごめんなさい、勝手に触っちゃって……」
「聖女様、その、大丈夫なのですか?」
「え? 大丈夫って何が? それよりこれ、私が解いちゃっていいですか?」
「ほ、解く!?」
「もしや聖女様にはこの水晶を覆う呪いが見えているのですか?」
突然私とおじいちゃんの前に出てきたのは、やたらめったら整った顔をした髪の長い男の人。
エルフの聖人だというマティアスさんが言うには、この不気味な黒い玉はカーディナルを守護すると言われる大切な神具で、聖なる水晶と呼ばれているそうだ。
建国以来ずっとこの神殿で大切に祀られていたのにある日突然水晶が曇り、それと同じ頃空に瘴気が現れ始めたんだって。
だから女神様が言う『呪い』はこの水晶の曇りのことなのでは、ってゴーンおじいちゃんとマティアスさんは考えていたそうだ。
「うーん、呪いとか曇ってるとか私にはよく分からないんですけど、黒い鎖が絡まってますよね? これ、このままにしててもいいんですか?」
もしかしたらこの黒い鎖は水晶の飾りなのかもしれないけど、こんなにぐるぐる巻きにしちゃったら折角の水晶が見えないよね。大切な物らしいのに、それって勿体なくない?
するとマティアスさんは困ったように眉を下げた。
「それは……私達はこの水晶に触れる事すらできないのです。だからと言って何も手をこまねいていた訳では……」
「あー、確かにここまで絡まってたらちょっと厄介ですよね。うーん、時間がかかってもいいんなら、私が解いてみますけど……」
絡まった鎖を解く達人と呼ばれる私は、鎖の絡まりが複雑で難易度が高ければ高いほどやる気が上がる。
正直に言っちゃうとこの時私は、絡まった鎖を前に一刻も早く触ってみたくてうずうずしていたのだ。
「ですが聖女様、本当によろしいのですか? もう少し色々と調べてからの方が……」
「うんまあ、難しそうだけど出来ない事はないと思うし……。あ! でもそういえば私元の世界ではどうなってるの? いきなり行方不明とか死んだことになってるとすごく困るんだけど、私、ちゃんと日本に帰れるんですよね?」
「それは御心配には及びません。女神様がおっしゃるには、水晶の呪いが解けると聖女様は元の世界にお帰りになってしまわれるのだそうです。それにもし万が一の事があったとしても、我々は聖女様を命を賭けてお守りすることを約束いたします」
「えー、命をかけてとか重いからいらない……」
それから色々話してて分かったんだけど、どうやらこの黒い鎖は私にしか見えていないらしい。
ゴーンおじいちゃんやマティアスさんには単に水晶が曇っているよう見えていて、しかも普通の人は水晶に触る事も近づく事も、この聖堂に入ることすらできないんだって。
正直言って私は呪いがどうとかわからないし、聖女が何をする人なのかも知らない。
でももし黒い鎖が呪いなんだとして、私しか鎖を解ける人がいないなら、それは私がやるしかないんじゃないかって思ったんだよね。
どうせ呪いが解けないと私は日本に帰れないんだ。じゃあダメでもともと、やってみようじゃないかって。
こうして私宮前あかりは、このカーディナルという世界で期間限定の聖女をすることになったのである。
「聖女様、その、大丈夫なのですか?」
「え? 大丈夫って何が? それよりこれ、私が解いちゃっていいですか?」
「ほ、解く!?」
「もしや聖女様にはこの水晶を覆う呪いが見えているのですか?」
突然私とおじいちゃんの前に出てきたのは、やたらめったら整った顔をした髪の長い男の人。
エルフの聖人だというマティアスさんが言うには、この不気味な黒い玉はカーディナルを守護すると言われる大切な神具で、聖なる水晶と呼ばれているそうだ。
建国以来ずっとこの神殿で大切に祀られていたのにある日突然水晶が曇り、それと同じ頃空に瘴気が現れ始めたんだって。
だから女神様が言う『呪い』はこの水晶の曇りのことなのでは、ってゴーンおじいちゃんとマティアスさんは考えていたそうだ。
「うーん、呪いとか曇ってるとか私にはよく分からないんですけど、黒い鎖が絡まってますよね? これ、このままにしててもいいんですか?」
もしかしたらこの黒い鎖は水晶の飾りなのかもしれないけど、こんなにぐるぐる巻きにしちゃったら折角の水晶が見えないよね。大切な物らしいのに、それって勿体なくない?
するとマティアスさんは困ったように眉を下げた。
「それは……私達はこの水晶に触れる事すらできないのです。だからと言って何も手をこまねいていた訳では……」
「あー、確かにここまで絡まってたらちょっと厄介ですよね。うーん、時間がかかってもいいんなら、私が解いてみますけど……」
絡まった鎖を解く達人と呼ばれる私は、鎖の絡まりが複雑で難易度が高ければ高いほどやる気が上がる。
正直に言っちゃうとこの時私は、絡まった鎖を前に一刻も早く触ってみたくてうずうずしていたのだ。
「ですが聖女様、本当によろしいのですか? もう少し色々と調べてからの方が……」
「うんまあ、難しそうだけど出来ない事はないと思うし……。あ! でもそういえば私元の世界ではどうなってるの? いきなり行方不明とか死んだことになってるとすごく困るんだけど、私、ちゃんと日本に帰れるんですよね?」
「それは御心配には及びません。女神様がおっしゃるには、水晶の呪いが解けると聖女様は元の世界にお帰りになってしまわれるのだそうです。それにもし万が一の事があったとしても、我々は聖女様を命を賭けてお守りすることを約束いたします」
「えー、命をかけてとか重いからいらない……」
それから色々話してて分かったんだけど、どうやらこの黒い鎖は私にしか見えていないらしい。
ゴーンおじいちゃんやマティアスさんには単に水晶が曇っているよう見えていて、しかも普通の人は水晶に触る事も近づく事も、この聖堂に入ることすらできないんだって。
正直言って私は呪いがどうとかわからないし、聖女が何をする人なのかも知らない。
でももし黒い鎖が呪いなんだとして、私しか鎖を解ける人がいないなら、それは私がやるしかないんじゃないかって思ったんだよね。
どうせ呪いが解けないと私は日本に帰れないんだ。じゃあダメでもともと、やってみようじゃないかって。
こうして私宮前あかりは、このカーディナルという世界で期間限定の聖女をすることになったのである。
10
お気に入りに追加
491
あなたにおすすめの小説
可愛いあの子は。
ましろ
恋愛
本当に好きだった。貴方に相応しい令嬢になる為にずっと努力してきたのにっ…!
第三王子であるディーン様とは政略的な婚約だったけれど、穏やかに少しずつ思いを重ねて来たつもりでした。
一人の転入生の存在がすべてを変えていくとは思わなかったのです…。
(11月5日、タグを少し変更しました)
✻ゆるふわ設定です。
お気軽にお読みいただけると嬉しいです。
あなたを解放してあげるね【本編完結・続編連載中】
青空一夏
恋愛
私はグラフトン侯爵家のデリア。13歳になったある日、スローカム伯爵家のクラーク様が、ご両親と一緒にグラフトン侯爵家を訪れた。
クラーク様は華奢で繊細な体つきをしていた。柔らかな金髪は風になびき、ふんわりとした雰囲気を醸し出していた。彼の笑顔には無邪気さと親しみやすさが感じられ、周りの人たちを引き込んでしまうような魅力があった。それに、とても優秀で古代魔法の分厚い書物を、たった二週間で読んでしまうほどだった。
私たちは婚約者になり、順調に愛を育んでいたと思っていた。私に対する態度や言葉も優しく、思いやりも籠もっていたから、私はこの婚約に満足していた。ところが・・・・・・
この世界では15歳から18歳まで、貴族の子女は王都にある王立貴族学園に通うのだけれど、クラーク様からのお手紙も来訪も入学を機にピタリと止まってしまう。寂しいけれど、きっと学業に勤しんでいて忙しいのだろうと思い我慢した。
その1年後に同じ学園に入学してみると、私は上級生の女生徒に囲まれ「クラーク様から身を引きなさいよ。あの方には思い合う女性がいるのよ!」と言われた。 なんと学園では、私が無理矢理彼に一間惚れをして婚約を迫ったという噂が流れていたのよ。私は愛し合う恋人たちを邪魔する悪役令嬢と決めつけられ、(そもそも悪役令嬢ってなに?)責められた私は婚約者を解放してあげることにしたわ。
その結果、真実の愛を見つけた私は・・・・・・
これは私が婚約者を解放してあげて、お陰で別の真実の愛を見つける物語。魔法が当然ありの世界のラブファンタジー。ざまぁあり。シリアスあり、コメディあり、甘々溺愛ありの世界です。ヒロインはメソメソやられっぱなしの女性ではありません。しっかりしたプライドを持った令嬢です。
もふもふも登場予定。イケメン多数登場予定。多分、あやかしも出るかな・・・・・・
※作者独自の世界で、『ざまぁから始まる恋物語』です。
※ゆるふわ設定ご都合主義です。
※お話がすすんでいくなかでタグの変更があるかもしれません。
※以前書いたものに新しい魔法要素を加え、展開も少し違ってくるかもしれませんので、前に読んだ方でも楽しめると思いますので、読んでいただけると嬉しいです。(以前のものは非公開にしております)
※表紙は作者作成AIイラストです。
※女性むけhotランキング一位、人気ランキング三位、ありがとうございます。(2023/12/21)
※人気ランキング1位(2023/12/23~2023/12/27)ありがとうございます!
※AIイラスト動画をインスタに投稿中。bluesky77_77。
破滅回避の契約結婚だったはずなのに、お義兄様が笑顔で退路を塞いでくる!~意地悪お義兄様はときどき激甘~
狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
☆おしらせ☆
8/25の週から更新頻度を変更し、週に2回程度の更新ペースになります。どうぞよろしくお願いいたします。
☆あらすじ☆
わたし、マリア・アラトルソワは、乙女ゲーム「ブルーメ」の中の悪役令嬢である。
十七歳の春。
前世の記憶を思い出し、その事実に気が付いたわたしは焦った。
乙女ゲームの悪役令嬢マリアは、すべての攻略対象のルートにおいて、ヒロインの恋路を邪魔する役割として登場する。
わたしの活躍(?)によって、ヒロインと攻略対象は愛を深め合うのだ。
そんな陰の立役者(?)であるわたしは、どの攻略対象ルートでも悲しいほどあっけなく断罪されて、国外追放されたり修道院送りにされたりする。一番ひどいのはこの国の第一王子ルートで、刺客を使ってヒロインを殺そうとしたわたしを、第一王子が正当防衛とばかりに斬り殺すというものだ。
ピンチだわ。人生どころか前世の人生も含めた中での最大のピンチ‼
このままではまずいと、わたしはあまり賢くない頭をフル回転させて考えた。
まだゲームははじまっていない。ゲームのはじまりは来年の春だ。つまり一年あるが…はっきり言おう、去年の一年間で、もうすでにいろいろやらかしていた。このままでは悪役令嬢まっしぐらだ。
うぐぐぐぐ……。
この状況を打破するためには、どうすればいいのか。
一生懸命考えたわたしは、そこでピコンと名案ならぬ迷案を思いついた。
悪役令嬢は、当て馬である。
ヒロインの恋のライバルだ。
では、物理的にヒロインのライバルになり得ない立場になっておけば、わたしは晴れて当て馬的な役割からは解放され、悪役令嬢にはならないのではあるまいか!
そしておバカなわたしは、ここで一つ、大きな間違いを犯す。
「おほほほほほほ~」と高笑いをしながらわたしが向かった先は、お兄様の部屋。
お兄様は、実はわたしの従兄で、本当の兄ではない。
そこに目を付けたわたしは、何も考えずにこう宣った。
「お兄様、わたしと(契約)結婚してくださいませ‼」
このときわたしは、失念していたのだ。
そう、お兄様が、この上なく厄介で意地悪で、それでいて粘着質な男だったと言うことを‼
そして、わたしを嫌っていたはずの攻略対象たちの様子も、なにやら変わってきてーー
※タイトル変更しました
悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました
結城芙由奈
恋愛
【何故我慢しなければならないのかしら?】
20歳の子爵家令嬢オリビエは母親の死と引き換えに生まれてきた。そのため父からは疎まれ、実の兄から憎まれている。義母からは無視され、異母妹からは馬鹿にされる日々。頼みの綱である婚約者も冷たい態度を取り、異母妹と惹かれ合っている。オリビエは少しでも受け入れてもらえるように媚を売っていたそんなある日悪女として名高い侯爵令嬢とふとしたことで知りあう。交流を深めていくうちに侯爵令嬢から諭され、自分の置かれた環境に疑問を抱くようになる。そこでオリビエは媚びるのをやめることにした。するとに周囲の環境が変化しはじめ――
※他サイトでも投稿中
今更あなたから嫉妬したなんて言われたくありません。
梅雨の人
恋愛
幼き頃に婚約したエルザと王太子ルーカス。
将来を語り合い寄り添い続けた二人は、いつしか互いに気持ちを通わせあい、夫婦になれる日を心から楽しみにしていた。
すべてが順調に行き、二人の婚姻式があと少しという所で、突然現れた聖女とルーカスが急接近していく。
そしてついに聖女と一線を越えてしまったルーカスは責任をとる為、浮気相手の聖女を王太子妃として娶ることになってしまった。
一方エルザは婚約破棄が王に認められず、王太子妃の代わりに執務に公務をこなすために第二王太子妃にされてしまう。
エルザを妻として娶ることを心待ちにしていたルーカスだったが、王太子妃である聖女の束嫉妬が激しくエルザを蔑ろにしてしまう。
心無い周囲の声にただ一人耐え続けるエルザのもとに、側近として現れたダグラス。
ダグラスのおかげで次第に笑顔を取り戻すエルザと、二人を見て嫉妬にかられるルーカス。
そんなルーカスに対してエルザは言い放った。
不貞の末に妻二人も娶ったあなたに------今更嫉妬したなんて言われたくはありません。
隠れ御曹司の愛に絡めとられて
海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた――
彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。
古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。
仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!?
チャラい男はお断り!
けれども彼の作る料理はどれも絶品で……
超大手商社 秘書課勤務
野村 亜矢(のむら あや)
29歳
特技:迷子
×
飲食店勤務(ホスト?)
名も知らぬ男
24歳
特技:家事?
「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて
もう逃げられない――
結婚式で王子を溺愛する幼馴染が泣き叫んで婚約破棄「妊娠した。慰謝料を払え!」花嫁は王子の返答に衝撃を受けた。
window
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の結婚式に幼馴染が泣き叫んでかけ寄って来た。
式の大事な場面で何が起こったのか?
二人を祝福していた参列者たちは突然の出来事に会場は大きくどよめいた。
王子は公爵令嬢と幼馴染と二股交際をしていた。
「あなたの子供を妊娠してる。私を捨てて自分だけ幸せになるなんて許せない。慰謝料を払え!」
幼馴染は王子に詰め寄って主張すると王子は信じられない事を言って花嫁と参列者全員を驚かせた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる