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第12話 苦しくないの?
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気まずい沈黙の中しょぼんとうなだれたアルは、今までの真相をぽつぽつと語り始めた。
なんとアルの初体験は13歳。お相手は例の婚約者だったそうだ。
中に入れる事はできるのにアルがイくことができず、その後も何回か試したものの結局アルは1回もイけなかったそうだ。
「互いに初めてだし経験不足だと私は気にしていなかったが、相手は違ったようでな。会う度に段々気まずくなって……最後の方は目も合わせてくれなかった」
相手側から婚約解消を打診されていた所、偶然他国からの縁談が持ち込まれ、結果双方納得の上で破談となったのだそうだ。
その後の破談も事情は似たり寄ったりで、……つまりアルは今まで一度もえっちの時にイッたことがなくて、それを気にした相手の女性から縁談を断られてる、というのが破談の真相らしい。
「……自分でならいくらでもイけるのにな。まったく一国の王子が情けない話だ」
アルは話し終わると深く溜息を吐いた。
「今まで私は自分の身体が欠陥品なのだと思っていた。だがもしこれが呪いのせいなのだとしたら……。あかり様、一生のお願いです。どうか私を助けていただけないでしょうか」
アルがうるうるした瞳で私を見つめる。
ああ、この顔知ってる。これはアルが何かおねだりする時に決まってする顔だ。昔からこの顔に弱いんだよね、私。
でもなあ……、私は少し迷ってしまう。
そもそもアルがイけないのって、本当に呪いのせいなんだろうか。
呪いを解くのはいいよ? でももし呪いを解いてもアルがイケないままだったら、一体どうなるの?
あれでもちょっと待って。何回も試して、それでイけないってアルは言ってたよね? 試せるってことは中には入ってる? でもイけない?? 自分ではイけるってどういうことだ?
助けを求めてマッティを見ると、マッティはそれはもう綺麗に微笑んだ。
知ってる。こういう時のマッティは絶対にヒントをくれないんだ。自分で考えろってことだよね?
次にナリッサを見ると、ナリッサは眉を下げ少し悲しそうに笑った。
これも知ってる。この顔は私が何か困ったことを言った時の顔だ。これはナリッサに聞いちゃいけないってことだよね?
それではとカルロスの顔を見ると、カルロスは顔を真っ赤にして目を合わせようともしない。
ああわかった。カルロスには頼るなってことだね!
「ええと、その……言いにくいんだけど、鎖を解いても何も解決しないっていう可能性もあると思うんだけど……」
「……それは私も理解している。だが僅かにでも可能性があるなら、私はそれに賭けたいんだ」
私を見つめるアルの水色の瞳が、なんだか不安そうに揺れている。
よくわからないけど、男の人がイけないってきっとすごく辛いことなんだよね。
でもなんとなくだけど、アルはすでに諦めてるような気もする。治る訳がないって、これは呪いのせいじゃなくて自分の身体のせいだ、ってそんな風に思ってるのかもしれない。
確かに期待してて駄目だった時って、余計がっかりするよね。……でも……そんなのって悲しすぎる。
「……うん、私、やってみる。人に絡まってる鎖を解くのは初めてだから上手くできないかもしれないけど、でもやっぱりそのままにしておけないし」
「あかり様……!」
でもその時、黙って私達のやりとりを聞いていたマッティが静かに声をかけた。
「お待ちください殿下。その呪いがどういった類のものか、またどんな危険があるかわかってはおりません。あかり様に万が一のことがあってはならないのです。事は慎重に進めていただきませんと」
「マティアス、だが私は……!」
「……殿下、ご理解ください」
「…………いや、そうだな。その通りだ。……すまなかった」
「マッティ、私なら平気だから!」
「いやいいのです、あかり様。長年の苦しみから解放されるのかと思ったらつい……。フフ、少し浮かれていたようだ」
アルは悲しそうに笑うと、疲れたように両手で顔を覆った。
確かにマッティの言うことはもっともだ。
だってあの水晶に絡まっていた黒い鎖は、とんでもなくヤバい呪いだった。
本当のことを言うと、私はこの世界に初めて来た直後、呪いなんて信じていなかった。
とりあえず鎖を解けばいい、これが解けたら中から水晶が出てくるんだろう、そしたら日本に帰れるんだって、そう単純に思ってた。
でも毎日聖堂のガラスの天井から見える空は暗い灰色で、鎖が少なくなるにつれ空の色が明るくなるにつれ、私は事の重大さが分かったんだ。
この鎖は呪いそのもの。そして呪いのせいで太陽は消え、みんなめちゃくちゃになって、このカーディナルという世界は滅びようとしているんだって。
だからアルの鎖も本当はそれがどんな呪いで、そしてどんな影響があるのかちゃんと調べた方がいい。そんなこと決まってる。
でも……私はソファに座るアルを見た。
アルに巻きつく赤い鎖は重そうで、苦しそうで、見ているだけで辛くなる。
「ねえアル、自分ではわからないの? その、呪いの事」
「ん……?」
「いやだってさ、その首、痛いっていうか……苦しくない?」
なんとアルの初体験は13歳。お相手は例の婚約者だったそうだ。
中に入れる事はできるのにアルがイくことができず、その後も何回か試したものの結局アルは1回もイけなかったそうだ。
「互いに初めてだし経験不足だと私は気にしていなかったが、相手は違ったようでな。会う度に段々気まずくなって……最後の方は目も合わせてくれなかった」
相手側から婚約解消を打診されていた所、偶然他国からの縁談が持ち込まれ、結果双方納得の上で破談となったのだそうだ。
その後の破談も事情は似たり寄ったりで、……つまりアルは今まで一度もえっちの時にイッたことがなくて、それを気にした相手の女性から縁談を断られてる、というのが破談の真相らしい。
「……自分でならいくらでもイけるのにな。まったく一国の王子が情けない話だ」
アルは話し終わると深く溜息を吐いた。
「今まで私は自分の身体が欠陥品なのだと思っていた。だがもしこれが呪いのせいなのだとしたら……。あかり様、一生のお願いです。どうか私を助けていただけないでしょうか」
アルがうるうるした瞳で私を見つめる。
ああ、この顔知ってる。これはアルが何かおねだりする時に決まってする顔だ。昔からこの顔に弱いんだよね、私。
でもなあ……、私は少し迷ってしまう。
そもそもアルがイけないのって、本当に呪いのせいなんだろうか。
呪いを解くのはいいよ? でももし呪いを解いてもアルがイケないままだったら、一体どうなるの?
あれでもちょっと待って。何回も試して、それでイけないってアルは言ってたよね? 試せるってことは中には入ってる? でもイけない?? 自分ではイけるってどういうことだ?
助けを求めてマッティを見ると、マッティはそれはもう綺麗に微笑んだ。
知ってる。こういう時のマッティは絶対にヒントをくれないんだ。自分で考えろってことだよね?
次にナリッサを見ると、ナリッサは眉を下げ少し悲しそうに笑った。
これも知ってる。この顔は私が何か困ったことを言った時の顔だ。これはナリッサに聞いちゃいけないってことだよね?
それではとカルロスの顔を見ると、カルロスは顔を真っ赤にして目を合わせようともしない。
ああわかった。カルロスには頼るなってことだね!
「ええと、その……言いにくいんだけど、鎖を解いても何も解決しないっていう可能性もあると思うんだけど……」
「……それは私も理解している。だが僅かにでも可能性があるなら、私はそれに賭けたいんだ」
私を見つめるアルの水色の瞳が、なんだか不安そうに揺れている。
よくわからないけど、男の人がイけないってきっとすごく辛いことなんだよね。
でもなんとなくだけど、アルはすでに諦めてるような気もする。治る訳がないって、これは呪いのせいじゃなくて自分の身体のせいだ、ってそんな風に思ってるのかもしれない。
確かに期待してて駄目だった時って、余計がっかりするよね。……でも……そんなのって悲しすぎる。
「……うん、私、やってみる。人に絡まってる鎖を解くのは初めてだから上手くできないかもしれないけど、でもやっぱりそのままにしておけないし」
「あかり様……!」
でもその時、黙って私達のやりとりを聞いていたマッティが静かに声をかけた。
「お待ちください殿下。その呪いがどういった類のものか、またどんな危険があるかわかってはおりません。あかり様に万が一のことがあってはならないのです。事は慎重に進めていただきませんと」
「マティアス、だが私は……!」
「……殿下、ご理解ください」
「…………いや、そうだな。その通りだ。……すまなかった」
「マッティ、私なら平気だから!」
「いやいいのです、あかり様。長年の苦しみから解放されるのかと思ったらつい……。フフ、少し浮かれていたようだ」
アルは悲しそうに笑うと、疲れたように両手で顔を覆った。
確かにマッティの言うことはもっともだ。
だってあの水晶に絡まっていた黒い鎖は、とんでもなくヤバい呪いだった。
本当のことを言うと、私はこの世界に初めて来た直後、呪いなんて信じていなかった。
とりあえず鎖を解けばいい、これが解けたら中から水晶が出てくるんだろう、そしたら日本に帰れるんだって、そう単純に思ってた。
でも毎日聖堂のガラスの天井から見える空は暗い灰色で、鎖が少なくなるにつれ空の色が明るくなるにつれ、私は事の重大さが分かったんだ。
この鎖は呪いそのもの。そして呪いのせいで太陽は消え、みんなめちゃくちゃになって、このカーディナルという世界は滅びようとしているんだって。
だからアルの鎖も本当はそれがどんな呪いで、そしてどんな影響があるのかちゃんと調べた方がいい。そんなこと決まってる。
でも……私はソファに座るアルを見た。
アルに巻きつく赤い鎖は重そうで、苦しそうで、見ているだけで辛くなる。
「ねえアル、自分ではわからないの? その、呪いの事」
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