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中等部一年

買い物

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 七夕は三つ子の誕生日で、土曜日の誕生日当日に誕生日パーティが行われる予定となった。

 三つ子の誕生日は磐井グループの御曹司らしく結婚式会場を貸し切って行われる。都心から一時間くらいの結婚式場で海が一望できる。そんな人気な結婚式場を、しかも土曜日に予約するあたり金に糸目を付けていないことがわかる。

 三つ子たちの誕生日の参加者は中学生以上の財政界のご子息令嬢で、保護者は参加しないことになっていた。

 その誕生日会を一週間後に控えた日曜日、私と三つ子たちは祥子奥様に連れられて誕生日会に着る服を選びために高級ブランド店と百貨店が並ぶ街を訪れていた。

 そのため、私は出かける服装に頭を抱えていた。

 ワンピースならまず間違いないだろうとレトロな雰囲気の黒に青い小花柄のワンピースを選ぶ。丈も長めのロングで露出も低いため、今日の買い物にピッタリに思えたのだ。ワンピースが黒だから黒いパンプスに鞄を合わせる。

うん、統一感があっていい感じだ!

 ドアがノックされ、シンプルな黒のシャツに濃いめのジーンズに身を包んだ笙真くんが顔を出す。まるでモデルの様に決まっていて、ちょっと悔しくなる。

 洗礼された笙真くんを見ると完璧だと思ってた自分の服装がやぼったく感じるのだ。

 笙真くんは何も言わず私の服装をチェックすると、クローゼットから淡いパステルカラーのグリーンのパンプスに、同じく淡い水色の鞄を取り出す。

 やっぱり私の服装はダメだったらしい。

 重いため息を吐いて、私は笙真くんが出しだした靴と鞄に着替える。ワンピースはお気に召しただけだから良しとしよう。

 笙真くんに髪を巻かれて、私たちは階下へと降りる。

 階下にはすでに準備ができていた公泰くんと侑大くんが待っていた。

 公泰くんは灰色のストライプのシャツに灰色のズボンに白のスニーカーで大人なスタイルにもカジュアルさが混ざっている。

 侑大くんは紺色の大きな花柄のシャツに黒のズボンと黒のスニーカーだった。侑大くんが着ている花柄のシャツを見て、笙真くんが少し不機嫌になる。なぜ?

 祥子奥様は少し遅れてやってきて、サンイエローのワンピースに青のバイソン柄のハイヒールと着る人を選ぶコーディネートだった。でも、その服装を着こなしてしまう祥子奥様はさすがだと思う。

 車に乗せられてやってきたのは、祥子奥様のお気に入りのブランドで三つ子の正装はほとんどこのブランドで占められている。

 祥子奥様のほぼ命令に近い一声で、三つ子は同じ黒のブリティッシュスタイルのスーツを着ることになった。三つ子は乗り気じゃなかったけど、祥子奥様に逆らうと買い物がなかなか終わらないので良い選択だと思う。ただまるっきりお揃いは嫌だったみたいで、笙真くんの一言でスーツの中に着るシャツだけ別にすることになった。

 公泰くんは王道で黒いシャツに光沢のある濃いグレーのネクタイ、笙真くんは白のシャツに薄紫の石が付いたボロタイ、侑大くんはスカイブルーのシャツに祥子奥様の希望で黒のチャックの蝶ネクタイだった。

 あっさりと三つ子の服装が決まって、次は私のドレスを選ぶ番になってしまった。

 私のドレスは毎回、笙真くんと祥子奥様が揉めるのでなかなか決まらないのだ。何度も何度も着せ替え人形のようにドレスを着替えて、ようやく二人が納得したドレスに決まるのだ。

 笙真くんと祥子奥様のお気に入りのブランドのお店に入ろうとしたところで、祥子奥様がお友達に捕まり長々と話を始めたため、私たちは先にお店に入ることとなった。

 笙真くんは慣れた仕草で私のドレスを選んでいく。笙真くんが一番最初に選んだのはノースリーブの薄紫のボリュームあるフレアスカートのドレスで、まるでプリンセスが着るようなドレスだった。ウエストには同じ素材でできた大きな花のベルトがあり、キラキラ光るビジューが胸元に輝いている。

 試着した私を笙真くんは満足げに見守るが、それを見た公泰くんと侑大くんは顔を顰めている。

「なんか…笙真のセンスって乙女だよな。紫音をお姫様みたいに着飾りたがるし。…紫音なのに」

 侑大くんをきつく睨む。

「だったら侑大くんはどんなドレスが私に似合うと思うわけ?」

「侑大は紫音のドレス、選ばなくていいよ。紫音のドレスはぼくが選ぶから」

 笙真くんを無視して、侑大くんがドレスを選び始める。

公泰くんも静かに立ち上がり、ドレスを見て回っている。

「俺はこんなドレスがいいな!」

しばらくして侑大くんが持ってきたのは、ビスチェのセクシーな赤いドレスだった。ハイウエストのスカートにビスチェには赤いホログラムでキラキラしている。

 侑大くんは持ってきたドレスと私を比べて、大げさにがっかりしてみせる。

「このドレスを着るには紫音はかなり底上げしないと無理だね」

 絶壁に近い胸元を見られ、かっとなり侑大くんを殴る。

 うるさい!今に成長するんだからね!……まぁ、紫音になる前の人生でも、ゴホン、ゴホン。

 侑大くんを殴っていると後ろからツンツンと肩をつかれて、振り返ると白と茶色の清楚なワンピースを持っている公泰くんがいた。

 公泰くんが差し出したワンピースは胸元に焦げ茶色の大きなリボンがあって、スカートはそれよりも薄い茶色のシフォンで、上半身は花柄のレースになっていた。

 差し出されたワンピースを試着室で着替える。

 私の好みでいうと公泰くんが選んだこのワンピースの方が好みだった。

 笙真くんの選んだドレスももちろんステキなのだが、少し背伸びをしていて自分が自分でないように思うのだ。

 私が試着室からでると、笙真くんが新しいドレスを持って待っていた。

 三つ子たちが全員納得するドレスを見つけるべく、私は何度も何度もドレスを着替える。

 どうしてこうなったんだろう?

 私がドレスを選べばいいのだろうけど、値段で服を選ぶという経験値しかない上にファッションセンスも皆無な私は磐井グループのパーティに相応しいドレスが選べなかった。

 店員さんの態度が少しイライラしたものに変わった時、祥子奥様がお店に入ってきた。

 三つ子の手にはそれぞれが気に入ったドレスが数着あり、祥子奥様が入るなりどれがいいですか?と尋ねた。

 祥子奥様はさらっとドレスを見て、鼻でフンッと笑う。

 祥子奥様の合図で、店員が一着のドレスを祥子奥様に差し出す。

「七夕なんだからこの星空のようなドレスに決まってるでしょ!このドレスをカタログで見たときから、このドレスにしようと決めてたのよね!」

 私が三つ子の誕生日会に着るドレスは、星空のドレスで決まったのだった。

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