47 / 81
在処のはじまり
43 原点
しおりを挟むお詫び
物語の進行状、登場人物たちが集まる場などが必要でカフェにしました。
が、カフェ経営などのほっこりは少しだけです。すみません。
リースたちは情報収集の場としてカフェを開くことになった。
あくまでも情報収集のためだが、カフェを開くなら一切の妥協はしたくないとリースは思う。
だって、お客さんにお金をもらって食事やお茶などを提供するのだ。生半可なものでは過酷な外食産業で生き残っていけないだろう。やるからには生き残らないと。
亡くなった亭主も良く言っていたな。退職したら田舎でカフェを開こうねって。でも、その前に彼は亡くなってしまったけれど。まさか、こんな形でカフェを経営するとは思わなかった。
そのため、リースはカフェに最適な物件探しをすることにした。
それとリース達の在処となる家も同時に探し始める。
場所は問題ではない。だって、アインスのゲートを使えばどこにでも家を出現させることができるのだから。
アインスは広いクローゼットを希望したし、ツヴァイはアインスとは別の部屋じゃないと嫌だと言ったし、ルルリアナは可愛らしい家がいいと言い、フィーアは…特にないと思われた。リースは掃除が大変だけれど窓が大きい家が良かった。
五人の要望がすべて揃った物件はなかなかなかった。あったとしても、広すぎたり、売値が高すぎて手が届かないのだ。お
資金は国王兄弟が隠し財産から貸してくれるという話だったが、借金は嫌なのだ。できるだけ借金は背負いたくないのだ。
そしてなぜか、国王兄弟もリース達と一緒に住むことになった。
きっとアモミカ王国を奪い返すために、アインスやツヴァイの力を借りたいのかもしれない。アインスは大丈夫だろうけれど、ルードヴィクに夢中になっているように見えるツヴァイが利用されないかリースは心配だった。
ツヴァイはなぜか、ルードヴィクに恋する乙女のような反応を見せていて、言葉遣いも態度も女らしくなる。いいことだと思うけれど…。
ルードヴィクには婚約者であるクリアもいるのだから。ルードヴィクがアモミカ王国に戻ったらツヴァイはきっと捨てられてしまうだろう。
「アイス・エンド・ワールド」の話通りに言ったら国王兄弟は国の奪還に成功する。そうなったらルードヴィクはクリアと…。
でもクリアの父親が暗殺の主犯だから難しくなるのだろうか?
それとも、クリアを愛しているルードヴィクは反対を追い切りクリアと結婚するのだろうか?
それを言うならクリアはマーカスと結ばれるというのが、ゲームの
本来のシナリオだ。
リースがルードヴィクを助けたことで、シリーズスリーの登場人物たちの運命は予測不能になってしまった。
ルードヴィクが選ぶ運命で、恋に破れたツヴァイが再び世界を破滅させようと動くのではないかと、リースは懸念していたのだった。
もう何店舗目かも忘れた不動産屋で、五人の希望に沿った6LDKの可愛らしい部屋を見つけたのだ。
アインスが希望している広いクローゼットもあり、6部屋もあるからアインスとツヴァイはそれぞれ別の部屋を持つことができる。
しかし、リースはその家を契約することができなかった。意外なことにフィーアがこの家に住むことを拒否したのだ。
…まぁ、後でそこはいわくつきの物件だったということが分かったのだが。
それ以降もフィーアは何かが気に入らないらしく、頑として次々と見つけた家々を否定したのだった。
そのため、リースはもうお手上げ状態になっていた。
もう、新しい家を一から作るしかないほどだ。しかし、そんなお金もなければ時間もない。だって、もうゲームは動きだしているのだから。時間は止まってはくれないのだ。
トボトボとお世話になりすぎているソテリア教会へと帰る。
はぁ~と重いため息を吐き、リースは椅子に座る。
そこには優雅にお茶を楽しむルードヴィクの姿があった。マーカスは子供たちと釣りに出掛けたようだ。呑気なものである。
「家は見つかったのかい?」
「まだよ、全滅」
「だったら、私が家を提供しようか?」
リースは澄まし顔のルードヴィクに飲んでいるお茶をぶちまけたくて仕方がなかった。勿体ぶらずに最初からいい家があると教えてくれたらよかったのだ。
しかし、さすがに国王にお茶をかけるわけにはいかないと、リースは自分に言いきかせる。リースはエギザベリア神国の皇太子であるレオザルトの顔を引っぱたいたという過去は、都合のいいことに綺麗さっぱり忘れられていたのである。
―❅―・-❅―❅―・―・―❅―
アインスがルードヴィクの記憶を読み、リース達はルードヴィクの提示する家へとやってきたのだった。
その家は黒いレンガと木がバランスよく調和されたステキな二階建ての家だった。改装したらカフェにできそうな小さな一階建ての家もある。
家の中は埃が分厚く積もっていたが、造りはしっかりとしており木の部分もカビたり、虫に食われている様子もなかった。
1階は共有スペースと部屋が三部屋あって、2階はワンフロアだったが細かく仕切られていて、私たちの部屋として使えそうだ。目隠しとなる壁がいくつもあるため、アインスとツヴァイも隔離できるし、リース達もプライバシーを持つことができる。それに窓も日差しがたっぷりと差し込む大きい窓なのだ。
「今まで見た家で一番完璧だわ」
リースが感激たように言うと、ルードヴィクが少し悦に入ったように微笑む、
「ここは私たち、アモミカ王国の原点なんだ」
「ここが?」
「ここはある小さな村の市役所だったんだ。私たちの祖先はその村で村長をいていてね、少しでも村人の生活が良くなるようにと働いているうちに、いつの間にか王族にまで登りつめていたんだ」
「だから、アモミカ王国の王族は民衆に人気なんだね」
リースのその言葉にルードヴィクは素直に笑ったのだった。
「そうだね、ぼくたちは常に民のためにあろうとしてきた。亡くなった父もそうだったし、絵の中でしか見たこともない先王たちもそうだった」
「あなたは、国を取り戻したい?」
「当たり前だろう。私の体にはここから人々の暮らしを良くしようと奮闘した祖先の血が流れている。強欲なルッペンツェルト公爵にアモミカ王国の民の暮らしや命を託すことなどできない。もし、私がそれを託すとしたら私の弟だけだ」
「どうやって取り戻すの?…ツヴァイを、私たちを利用する?」
ルードヴィクは遠くからチラチラと彼を見つめているツヴァイを真っすぐに見つめる。
「彼女は僕が頼んだら、何でもしてくれそうだ」
その言葉にリースははっと息をのむ。
「ツヴァイを利用しないで」
「彼女を利用している君には言われたくないな」
リースとルードヴィクが互いに譲らず睨みあう。
「私は彼女の心を弄んだりしない」
「人が傷つくのは何も恋に破れたときだけじゃない」
「やっぱり、ツヴァイを利用するだけ利用して、捨てるつもりなのね」
意外なことにルードヴィクはリースのその問いに答えることなく、盗み見しているツヴァイに優しく微笑む。その笑顔をみたツヴァイは耳まで真っ赤になってしまったのだった。
「彼女はとても可愛い。初心で、御しやすそうだ」
「扱いやすい女なんていないのが、まだ若いからわからないのね」
「…君よりも年上だと思うけど」
こっちは御年八十オーバーなのだ、若造め!とリースは心の中で毒づく。
「憶えておくのよ、この青二才!初心でも扱いやすそうでも、恋する女は傷ついたら何をしでかすかわからなくなることもあるってことをね!」
リースの警告を真面目に受け取らず、クスクスと笑うルードヴィクにリースは今度こそ
その青磁のような美しい髪にお茶をかけてやりたくなったのだった。現に、ここにお茶があったなら盛大に頭からかけていたに違いなかった。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
結婚相手の幼馴染に散々馬鹿にされたので離婚してもいいですか?
ヘロディア
恋愛
とある王国の王子様と結婚した主人公。
そこには、王子様の幼馴染を名乗る女性がいた。
彼女に追い詰められていく主人公。
果たしてその生活に耐えられるのだろうか。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる