白の贄女と四人の魔女

レオパのレ

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在処のはじまり

43 原点

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お詫び
物語の進行状、登場人物たちが集まる場などが必要でカフェにしました。
が、カフェ経営などのほっこりは少しだけです。すみません。






 リースたちは情報収集の場としてカフェを開くことになった。

 あくまでも情報収集のためだが、カフェを開くなら一切の妥協はしたくないとリースは思う。

だって、お客さんにお金をもらって食事やお茶などを提供するのだ。生半可なものでは過酷な外食産業で生き残っていけないだろう。やるからには生き残らないと。

亡くなった亭主も良く言っていたな。退職したら田舎でカフェを開こうねって。でも、その前に彼は亡くなってしまったけれど。まさか、こんな形でカフェを経営するとは思わなかった。

 そのため、リースはカフェに最適な物件探しをすることにした。

 それとリース達の在処となる家も同時に探し始める。

 場所は問題ではない。だって、アインスのゲートを使えばどこにでも家を出現させることができるのだから。

 アインスは広いクローゼットを希望したし、ツヴァイはアインスとは別の部屋じゃないと嫌だと言ったし、ルルリアナは可愛らしい家がいいと言い、フィーアは…特にないと思われた。リースは掃除が大変だけれど窓が大きい家が良かった。

 五人の要望がすべて揃った物件はなかなかなかった。あったとしても、広すぎたり、売値が高すぎて手が届かないのだ。お

資金は国王兄弟が隠し財産から貸してくれるという話だったが、借金は嫌なのだ。できるだけ借金は背負いたくないのだ。

 そしてなぜか、国王兄弟もリース達と一緒に住むことになった。

 きっとアモミカ王国を奪い返すために、アインスやツヴァイの力を借りたいのかもしれない。アインスは大丈夫だろうけれど、ルードヴィクに夢中になっているように見えるツヴァイが利用されないかリースは心配だった。

 ツヴァイはなぜか、ルードヴィクに恋する乙女のような反応を見せていて、言葉遣いも態度も女らしくなる。いいことだと思うけれど…。

 ルードヴィクには婚約者であるクリアもいるのだから。ルードヴィクがアモミカ王国に戻ったらツヴァイはきっと捨てられてしまうだろう。

「アイス・エンド・ワールド」の話通りに言ったら国王兄弟は国の奪還に成功する。そうなったらルードヴィクはクリアと…。

 でもクリアの父親が暗殺の主犯だから難しくなるのだろうか?

それとも、クリアを愛しているルードヴィクは反対を追い切りクリアと結婚するのだろうか?

 それを言うならクリアはマーカスと結ばれるというのが、ゲームの
本来のシナリオだ。

 リースがルードヴィクを助けたことで、シリーズスリーの登場人物たちの運命は予測不能になってしまった。

 ルードヴィクが選ぶ運命で、恋に破れたツヴァイが再び世界を破滅させようと動くのではないかと、リースは懸念していたのだった。

 もう何店舗目かも忘れた不動産屋で、五人の希望に沿った6LDKの可愛らしい部屋を見つけたのだ。

 アインスが希望している広いクローゼットもあり、6部屋もあるからアインスとツヴァイはそれぞれ別の部屋を持つことができる。

 しかし、リースはその家を契約することができなかった。意外なことにフィーアがこの家に住むことを拒否したのだ。

 …まぁ、後でそこはいわくつきの物件だったということが分かったのだが。

 それ以降もフィーアは何かが気に入らないらしく、頑として次々と見つけた家々を否定したのだった。

 そのため、リースはもうお手上げ状態になっていた。

もう、新しい家を一から作るしかないほどだ。しかし、そんなお金もなければ時間もない。だって、もうゲームは動きだしているのだから。時間は止まってはくれないのだ。

 トボトボとお世話になりすぎているソテリア教会へと帰る。

 はぁ~と重いため息を吐き、リースは椅子に座る。

 そこには優雅にお茶を楽しむルードヴィクの姿があった。マーカスは子供たちと釣りに出掛けたようだ。呑気なものである。

「家は見つかったのかい?」

「まだよ、全滅」

「だったら、私が家を提供しようか?」

 リースは澄まし顔のルードヴィクに飲んでいるお茶をぶちまけたくて仕方がなかった。勿体ぶらずに最初からいい家があると教えてくれたらよかったのだ。

 しかし、さすがに国王にお茶をかけるわけにはいかないと、リースは自分に言いきかせる。リースはエギザベリア神国の皇太子であるレオザルトの顔を引っぱたいたという過去は、都合のいいことに綺麗さっぱり忘れられていたのである。



―❅―・-❅―❅―・―・―❅―



 アインスがルードヴィクの記憶を読み、リース達はルードヴィクの提示する家へとやってきたのだった。

 その家は黒いレンガと木がバランスよく調和されたステキな二階建ての家だった。改装したらカフェにできそうな小さな一階建ての家もある。

 家の中は埃が分厚く積もっていたが、造りはしっかりとしており木の部分もカビたり、虫に食われている様子もなかった。

 1階は共有スペースと部屋が三部屋あって、2階はワンフロアだったが細かく仕切られていて、私たちの部屋として使えそうだ。目隠しとなる壁がいくつもあるため、アインスとツヴァイも隔離できるし、リース達もプライバシーを持つことができる。それに窓も日差しがたっぷりと差し込む大きい窓なのだ。

「今まで見た家で一番完璧だわ」

 リースが感激たように言うと、ルードヴィクが少し悦に入ったように微笑む、

「ここは私たち、アモミカ王国の原点なんだ」

「ここが?」

「ここはある小さな村の市役所だったんだ。私たちの祖先はその村で村長をいていてね、少しでも村人の生活が良くなるようにと働いているうちに、いつの間にか王族にまで登りつめていたんだ」

「だから、アモミカ王国の王族は民衆に人気なんだね」

 リースのその言葉にルードヴィクは素直に笑ったのだった。

「そうだね、ぼくたちは常に民のためにあろうとしてきた。亡くなった父もそうだったし、絵の中でしか見たこともない先王たちもそうだった」

「あなたは、国を取り戻したい?」

「当たり前だろう。私の体にはここから人々の暮らしを良くしようと奮闘した祖先の血が流れている。強欲なルッペンツェルト公爵にアモミカ王国の民の暮らしや命を託すことなどできない。もし、私がそれを託すとしたら私の弟だけだ」

「どうやって取り戻すの?…ツヴァイを、私たちを利用する?」

 ルードヴィクは遠くからチラチラと彼を見つめているツヴァイを真っすぐに見つめる。

「彼女は僕が頼んだら、何でもしてくれそうだ」

 その言葉にリースははっと息をのむ。

「ツヴァイを利用しないで」

「彼女を利用している君には言われたくないな」

 リースとルードヴィクが互いに譲らず睨みあう。

「私は彼女の心を弄んだりしない」

「人が傷つくのは何も恋に破れたときだけじゃない」

「やっぱり、ツヴァイを利用するだけ利用して、捨てるつもりなのね」

 意外なことにルードヴィクはリースのその問いに答えることなく、盗み見しているツヴァイに優しく微笑む。その笑顔をみたツヴァイは耳まで真っ赤になってしまったのだった。

「彼女はとても可愛い。初心で、御しやすそうだ」

「扱いやすい女なんていないのが、まだ若いからわからないのね」

「…君よりも年上だと思うけど」

 こっちは御年八十オーバーなのだ、若造め!とリースは心の中で毒づく。

「憶えておくのよ、この青二才!初心でも扱いやすそうでも、恋する女は傷ついたら何をしでかすかわからなくなることもあるってことをね!」

 リースの警告を真面目に受け取らず、クスクスと笑うルードヴィクにリースは今度こそ
その青磁のような美しい髪にお茶をかけてやりたくなったのだった。現に、ここにお茶があったなら盛大に頭からかけていたに違いなかった。
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