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シーズン1

14 ハロウィン①

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 ニューヨークにハロウィンが近づいてきて、ハロウィンの飾りが街並みを彩っている。

 学校の先生たちの教室には先生たちの個性が反映されたハロウィンの飾りがあった。ありふれたものではお化けカボチャのジャックランタンに骸骨の模型だ。中には本格的なものもあり、人間の頭の大きさのリアルな蜘蛛がぶら下がっているのには驚いた。綿あめでできた蜘蛛の巣まであったのだ。

本物の蜘蛛だと思い悲鳴をあげた私を見て、ザックに笑われたけれど、本格的なハロウィンに心躍っている私は気にならなかった。

     だって、私はハロウィンの本場にいるをだから!

 いつもおいしそうだなぁと思って覗いているケーキ屋さんも、ハロウィンをモチーフにしたケーキやクッキーが並んでいる。可愛らしいジャックランタン、魔女、ミイラ男、ドラキュラ、フランケンシュタインなどだ。

 アメリカのお菓子は甘すぎて私はあまり得意ではないが、そのカラフルな見た目はとってもかわいくていつもうっとりと見惚れてしまうのだ。見ているだけで幸せになれるお菓子だ。味は…うん、慣れるといいな。

 学校でもハロウィンは学校行事の一つとなっている。

 ハロウィンの日は仮装して登校することもできる。というか、ほとんどの学生が仮装をして登校する。

 そのため私はハロウィンの仮装をどうすればいいか、最近ずっと考えていた。

 双子たちは中学生なのにセクシーな悪魔と天使に仮装するらしい。本格的な衣装がすでに双子たちの部屋に飾られていた。

フン!私からするとどちらも悪魔まので、果たしてマミとリサのどちらが天使役をするというのだろうか。天使は天使でも堕天使だ!

双子たちにどこで衣装を買ったか聞いたところ、半年も前から衣装探しを開始していて、もうすでにいい衣装は売り切れていると教えられた。

確かにアメリカのネットショッピングサイトで検索しても、食べ物の被り物とかしか残っていなかった。

こう見るとハンバーガーが一番ましなのかもしれないな。

それかカチューシャだけを被って誤魔化すのもいいかもしれない。うん、黒のワンピースと赤いリボンのカチューシャで日本の大人気魔女に扮するのもいいかな?それが一番簡単だし、お金もかからないしね。

そうしようと決めると、すっきりとした気分で授業を受けることができた。

授業が終わり、飾りの蜘蛛に私が悲鳴をあげた話をザックがジェイクに大げさに面白おかしく話している。

私が睨んでいてもザックは気にせず話し続けている。

「もう、うるさい!ザックだって苦手なものがあるでしょ!」

「俺はないよ」

「こいつはあれが苦手だ」

「黙れ、ジェイク!」

 期待する私にジェイクはアメリカ人らしく肩をすくめて誤魔化す。

 私も鏡の前で練習しているが、ジェイックみたいにうまく肩をすくめることができない。

 私たちが話しているところに、ケリーがモデル歩きでやってくる。手には見せびらかすように蜘蛛の巣が張り巡らされた紫の封筒が二つ握られていた。慣れた態度でザックの肩に手を置き、色っぽく笑いかける。

これで十三歳というなんて、末恐ろしい。私とは雲泥の差だ。でも、あの女優だって綺麗なんだからね。色気はあまりないけれど。

「こんにちは、ザック、ジェイク」ジェイクが視線でここに私もいることを伝える。「あぁ、えっと…」「ヤヨイ」ザックだ。「そう、ヤヨイ」

形だけ私に挨拶したケリーは早々に私から興味を失う。

「今日はあなた達にパーティーのお誘いをしに来たの。私の家でハロウィンパーティするから、ぜひ、来てね」

 そう言ってザックとジェイクに封筒を渡す。

 私はできるだけ目立たないようにジェイクの後ろへと隠れる。ここに私はいませんよ!

「ヤヨイの分は?」

 ザックめッ!私はここにいないのに。ほら見ろ、ザックの一言でケリーが私をごみを見るように見つめているじゃないか。

「……残念なんだけど、招待状は二つしかないの」

「ヤヨイが行かないならおれも行かない」

「ヤヨイとザックが行かないなら俺も」

「ちょっと!あなた達が来ないなら、パーティーに箔が付かないじゃない」

 大声を上げたケリーにクラスに残っていた生徒たちが注目する。というか、封筒を持っていたケリーにみんなが期待するようにこっそりと見ていたが、大声を上げたせいでみんなが堂々と私たちに注目するようになってしまっている。

 ……みなさ~ん、私はここにいませんからね。

「箔付のために呼ばれても困る」

 あれれ?ドラマでザックとケリーは双子の邪魔が入るまで相思相愛的な感じだったのに。どうして、こんなにザックはツンケンしてるの?これも、キャラクターを演じている俳優さんの性格が反映されているのかな?

「わかったわよ!この子も連れてきていいから、必ず私のパーティーに来て頂戴ね」

 ケリーが可愛らしいピンクのブランドバックから紫の封筒を取り出し、ジェイクの背中に隠れている私に押し付けるようにして渡した。

「……ごめんなさい」

 ニコリとケリーが笑うが、背中には黒い影が渦巻いている。うん、目の錯覚だと思うけど迫力が凄い。

「どういたしまして」

 そう告げるとケリーは再び優雅な足取りで去っていた。

 ケリーに両手を差し出している双子たちを無視して。その双子たちはなぜか、私を憎々しく睨みつけている。文句があるならケリーに直接言ってほしい。

「ケリーのハロウィンパーティーは毎年本格的だから楽しみだな」

 あれ?という表情を浮かべザックを見る私に、ジェイクが説明する。

「ケリーの家のお化け屋敷が凄いんだ。お化けの役者も大勢雇うからね」

「…私、お化け屋敷あまり好きじゃない」

 山梨県にる某ハイランドのお化け屋敷を体験してからというもの、私はお化け屋敷が大嫌いになったのだ。安っぽいお化け屋敷でも、そこでの体験を思い出してしまって足が震えるのだ。

「じゃあ、絶対に行こう。そして、三人でお化け屋敷に入ろう。もちろん、ヤヨイが先頭でね」

 ザックがステキな笑顔で笑った。

 その笑顔を見せるときのザックがろくなことを考えていなし、しないのだ。

 はぁ、どうにかケリーのハロウィンパーティーに参加しないですむ方法はないだろうか。

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