私が猫又族のお姫様！？

1章 波乱の開幕

閑話 竜王の寵妃の子 氷龍の誕生

一方その頃ナツメ、雹が生まれた年と同じ年…
雹が生まれてから数ヶ月後に黒竜王で端正な美貌を持つ氷雨(ひさめ)の寵妃で、美しい大輪の花が咲いたような華やかな美貌を持つ海竜である雫(しずく)が産気づき、氷雨と第一子の姫である霖(りん)に見守られながら、第1王子を出産した…


虎の一族と龍の一族は見た目の違いはあれど、雨関係の気候を統治する能力をこの大地を創生したとされるムーン様から与えられ、その感謝と力に溺れたり、悪用しないようにする戒めの意から、雨冠の名を関することが多かった。



龍の一族と蛇の一族は、他の一族と違い男女で交配しても、そのまま子が親の種族の型のまま産まれるわけではない。

龍族が人型に変身すると翼が小さくなって背中につく形で犬歯があるのが特徴である。


殻つきの受精卵として生まれてくる為、生まれた子が自身の卵の殻をつついて割らない限り、安否は安心できない。

卵の状態では親からの貰った免疫力が作用せず卵が生まれても、その後数日しても子が生まれず死産する民もいた為、他の一族と違いベビーベッドではなくあらゆるウイルスや病気に感染しないよう保育器に1日入れたのち保育器から出し2.3日藁を鳥の巣のように敷いたベッドに入れて様子を見るのが通例だった。


卵の中にいるのが女児の場合＝殻の色は桜色に染まる
。

男児の場合＝殻の色は青空のような鮮やかな青に染まる。


今回霖の時と違い殻の色が空色だった為王子と分かったのだった。


「母様、弟を産んでいただきありがとうございます！！生まれてくるのが楽しみですわ！！」

とビスクドールのような精巧な人形のような可愛らしい容姿をした雷竜である霖が喜んだ。


"雫、霖に引き続き王子を産んでくれて感謝する！！今日は疲れただろう？息子が無事に殻を破るまで我がついておるから安心して眠るといい"
と氷雨は寵妃である妻を労った。

『いいえ私は、無事に殻を割ってこの瞳に愛する息子を拝むまでは休めませんわ！！』

"そなたは出会った時から一度言い出したら聞かぬからな、仕方ないな…そこが雫の長所でもあるのだが。無理はするでないぞ"

『心得ておりますわ！！』

 それからそばに控えていた助産師の手で保育器に入れられ、数日が過ぎた頃卵に異変があった。
通常なら殻にヒビだけが入るはずなのだから、王子の卵が白く発光しながらヒビが入り殻だけが木っ端微塵に吹き飛んでいき、あとに残ったのは純粋無垢な瞳でこちらを見つめる氷のような色の小さな氷龍だった…



霙side


あれからムーン様と雹と別れた後、僕の意識だけが目覚めた…なぜか瞳を開くことができずに僕はどこかに閉じ込められているのを感じた。

目で見ることはできないが、僕の姉と両親であろう声
が聴こえた…

"皆、そなたの姿を見るのを楽しみにしておるぞ"

『早く生まれてきてちょうだい！！貴方をこの手で抱きしめたいのよ！』

「弟と遊べる日が来るのを楽しみにしております待っておりますわね！！」

みんな僕を待ってくれてる…そう意識した途端身体に熱が走り、殻という枷が壊れたのを感じた…

瞬時に僕を閉じ込めていた殻が吹き飛び、僕は瞳を開くと、僕の家族と対面した。

『あぁっ！！待っていたわ。少し前に氷雨と相談して貴方の名前は決めてあったの！貴方の名前は霙(みぞれ)よ。私は雫、貴方の母親よ。これからよろしくね』


"おぉ無事に生まれてきてくれたのじゃな霙待っておったぞ。我は氷雨、そなたの父親じゃ"

「会えるのを待っていたわ！貴方は氷柱(つらら)のように澄んだ瞳と鱗なのね！貴方はどんな能力を持っているのかしらね…私は雷魔法、父様は闇魔法、母様は海や水を操る魔法なの！霙の能力が開花する日を楽しみにしているわ」


僕も会話したかったが、まだ生まれたばかりなので鳴き声を出して相槌をうつことしかできなかったが家族は暖かく迎え入れてくれて安心して寝てしまった。


(ナツメ待ってて！大人になったら雹と一緒に迎えに行くから……夢の中のナツメにそう告げ僕の意識は今度こそ沈んでいった。