1 / 1
序章
しおりを挟む
夜になると不安な気持ちが押し寄せてくるのは何故だろう。そんな、なんの生産性もない考えを毎晩のように巡らせながら美波は寝返りを繰り返す。全く眠れる気配がしないまま時間だけがどんどん過ぎてゆく。こうしている間にも少しずつ、でも確実に別れや死に近付いているのだろうと、そんなことを気が付くと考えているのだ。なにが不安なのか?そう聞かれてもきっとはっきりとは答えられないだろう。なにかに追われているような気分とも言えるが、それだけでは言い表せない底知れぬ不安を感じているのだ。とにかく怖いのだ、時間の流れを感じるのが、別れを実感するのが、その日を無駄にしたと1日の終わりに実感することが、大好きな恋人に振られることが。
そう、美波には恋人がいる。1つ歳上の優しい人だ。高校1年生の美波にとって大学受験は遠いのか近いのか今一度よくわからない、そんなところに位置するものである。しかし、1つ歳上、つまり高校2年生の恋人(以降遥人とする)にとって受験はちょうど1年後に迎える重大なイベントであり、なによりも大切な人生を左右するものなのだ。
もちろんそれを自覚している美波は自分が邪魔者なのではないか、などと邪推を勝手に働かせ夜更けに1人、沈みこんでいるのである。
そんなことをするなら勉強して少しでも遥人に近付けばいいもののそこまでの根性がその頃の美波にはなかった。
もうすぐ付き合って半年を迎える彼等はいわゆる倦怠期や痴話喧嘩というものを1度も経てはいなかった。その、誰もが羨むであろう事実を美波は良いものとして受け止めてはいなかった。倦怠期や痴話喧嘩を経験しなかった恋人は脆いのではないか、そんな想いが彼女にはあり、なにより彼女自身、自分の容姿や性格に自信がなくどこかで劣等感を感じていたのだ。
美波は生まれてきてから今まで、遥人以外に2人の人と付き合った過去を持っていた。1人目の彼氏は初恋の人で、名前は河村大雅といい、1ヶ月もせずに別れてしまった。しかし、美波自身も大雅もお互いをなかなか忘れることができず、美波に至っては計5年ほどの間好きでいたのだ。そして2人とも口にこそ出さないが、未だに心の隅にお互いのことが喉に引っ掛かって取れない魚の小骨のように在中しているのは明らかだった。
続いて2人目の彼氏は中学2年生の時に付き合った澤村龍也だ。龍也とはかれこれ半年弱ほどの付き合いになったが溜まっていた想いに耐えきれなくなった美波が別れを切り出し、それ以来疎遠である。これが今現在、遥人と喧嘩をしていないことへの不安に繋がっているのではないか、と考察される。
前置きが長くなってしまったが、この物語は美波の心を渦巻いているどろどろとした感情や人間関係、恋愛沙汰を描いたものである。少しばかりお付き合い願いたい。
そう、美波には恋人がいる。1つ歳上の優しい人だ。高校1年生の美波にとって大学受験は遠いのか近いのか今一度よくわからない、そんなところに位置するものである。しかし、1つ歳上、つまり高校2年生の恋人(以降遥人とする)にとって受験はちょうど1年後に迎える重大なイベントであり、なによりも大切な人生を左右するものなのだ。
もちろんそれを自覚している美波は自分が邪魔者なのではないか、などと邪推を勝手に働かせ夜更けに1人、沈みこんでいるのである。
そんなことをするなら勉強して少しでも遥人に近付けばいいもののそこまでの根性がその頃の美波にはなかった。
もうすぐ付き合って半年を迎える彼等はいわゆる倦怠期や痴話喧嘩というものを1度も経てはいなかった。その、誰もが羨むであろう事実を美波は良いものとして受け止めてはいなかった。倦怠期や痴話喧嘩を経験しなかった恋人は脆いのではないか、そんな想いが彼女にはあり、なにより彼女自身、自分の容姿や性格に自信がなくどこかで劣等感を感じていたのだ。
美波は生まれてきてから今まで、遥人以外に2人の人と付き合った過去を持っていた。1人目の彼氏は初恋の人で、名前は河村大雅といい、1ヶ月もせずに別れてしまった。しかし、美波自身も大雅もお互いをなかなか忘れることができず、美波に至っては計5年ほどの間好きでいたのだ。そして2人とも口にこそ出さないが、未だに心の隅にお互いのことが喉に引っ掛かって取れない魚の小骨のように在中しているのは明らかだった。
続いて2人目の彼氏は中学2年生の時に付き合った澤村龍也だ。龍也とはかれこれ半年弱ほどの付き合いになったが溜まっていた想いに耐えきれなくなった美波が別れを切り出し、それ以来疎遠である。これが今現在、遥人と喧嘩をしていないことへの不安に繋がっているのではないか、と考察される。
前置きが長くなってしまったが、この物語は美波の心を渦巻いているどろどろとした感情や人間関係、恋愛沙汰を描いたものである。少しばかりお付き合い願いたい。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる