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スクナビコナとネズミ馬⑨―戦りつの実態!老婆たちによって強制される馬たちの強制労働!!―
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「…おかしいな……」
スクナビコナはずいぶんと長い時間、老婆の家と馬小屋の様子を少し離れた場所からうかがっている。太陽もかなり高い位置まで昇ってきている。
しかし老婆の家にも馬小屋にも、動きといえるものがまったくない。
「…ひょっとして……」
スクナビコナは考える。
そもそも老婆の家にも馬小屋にも誰もいないのではないか?
そうとでも考えなければ、この明るい時間帯に家でも小屋でもなんの動きもないことを説明できない。
「…よしっ!」
スクナビコナは決心する。
思い切って建物のすぐそばにまで近づいてみよう。
「…まずは馬小屋だな……」
スクナビコナは比較的老婆に見つかる可能性が低そうな馬小屋に、最初に向かうことにするのだった。
「…扉が開いてるのか……?」
スクナビコナは馬小屋に向けてしばらく歩き、距離を縮めると、小屋の入り口の扉が開けっ放しになっていることに気づく。扉が堅く閉じられていることも考えていたスクナビコナとしてはやや拍子抜けの展開である。
「…とにかくすぐそばまで行ってみよう……」
スクナビコナはどんどん小屋へと歩を進め、ついには扉までたどり着く。さらには開けっ放しの扉を抜けて、馬小屋の中をのぞいてみる。
「…やっぱり誰もいないのか……?」
小屋の中は見事にもぬけのからである。小屋の中はいくつかの仕切りに区切られており、普段から馬を飼っているらしいことはわかるが、少なくとも今は馬の姿はない。
「…やっぱりチュルヒコはここにいないのか?ここには馬はいないし……」
スクナビコナは老婆の家から逃げ出したときに、確かに老婆によってチュルヒコがこの馬小屋に入れられようとしていたのを目撃した。
しかし少なくとも小屋の中にはチュルヒコの姿は見えない。
「…よし、家のほうを探ってみるか……」
スクナビコナは老婆の家に近づくことにするのだった。
「…ふう、ここにも誰もいないみたいだな……」
スクナビコナは馬小屋同様に老婆の家も近づいて中を探ってみた。
しかし馬小屋と同じように入り口の戸が開けっ放しになっており、家の中に入ってどの部屋に行こうとも、まったく人がいる気配がない。
つまりは馬小屋と完全に同じ状態である。
「…おばあさんもチュルヒコも一日でどこかに消えてしまった……?」
老婆もチュルヒコも〝神隠し〟かなにかのように、一日のうちにいずこかに消えてしまった。
悪い冗談のような話だが、今の状況からはそれ以外のことは考えられない。
「…おばあさんがチュルヒコと…、馬といっしょにどこかに消えた…?…待てよ……!」
スクナビコナはある〝一つの可能性〟を思いつく。
「…よし、行くぞ!」
スクナビコナはいずこかに向かって走り出すのだった。
「…やっぱりそういうことか……」
スクナビコナは〝その光景〟を見て、自分の考えが正しかったことを確認する。
老婆の家と馬小屋の周辺一帯にはある程度の広さの平らな土地がある。
そのうち、スクナビコナがやってきた側と反対のほうの土地には、田畑が広がっていたのである。
そこではスクナビコナが予想したとおりに、老婆が馬を使って農作業を行っている。
今、スクナビコナはその様子を老婆に見つからない程度に離れた位置から見ている。
ただ老婆〝たち〟の様子をちゃんと確認してみると、スクナビコナが事前に予想したこととは二つほど違っていた点がある。
まずは馬を使う人間の側は老婆を含めて五人いたことである。
スクナビコナは老婆が一昨日の夜に話していたことを思い出す。
老婆の家には老婆自身も含めて五人の者が住んでいると。
それがどうも正しかったらしいことがわかったわけである。
もう一つはその人間たちに使われる側の馬も五頭ほどいたことである。
つまり人一人につき、馬一頭いるわけである。
おそらくあの中にチュルヒコもいるのであろう。
また馬も五頭いたということは、ひょっとしたらチュルヒコ以外にも老婆によって馬に変えられた者がいるのかもしれない。
この五頭の馬たちは皆、五人の人間たちによって強制的に働かされている。
馬一頭につき人間が一人ついて、人間の手には鞭が握られている。
馬たちは田畑の作物を背に乗せられて運ばされたり、専用の農具で田畑を耕したりしている。
この作業中、馬たちは一瞬たりとて休むことは許されない。
少しでも馬たちの動きが遅くなったりでもしようものなら、すぐかたわらに控えている人間たちが、さっさとしろ、もっと働け、などと罵声を浴びせながら、鞭で容赦なく馬の背中や尻を叩く。
もう全ての馬の背中や尻は赤くはれ上がり、血が滲んでいる。
また馬の中にはすでにずいぶんと痩せこけているものもいる。
おそらくかなりの期間、ここで働かされ続けているのだろう。
いずれにせよ、こんな山奥で無理やり働かされている馬と、馬を徹底的にいじめ抜きながら働かせる人間がいることに、スクナビコナは戦りつする。
スクナビコナとしては一刻も早く人間たちを懲らしめ、馬たちを救い出したい。
しかし〝小さい〟スクナビコナにとっては、自分の何倍も体が〝大きい〟人間を、それも五人を相手に戦って勝利するのは至難の業である。
正面からぶつかっても返り討ちにあうのがオチだろう。
「…不本意だけど今は我慢して様子を見よう……」
スクナビコナは息を潜めて、馬と人間たちの様子を見続けるのだった。
スクナビコナはずいぶんと長い時間、老婆の家と馬小屋の様子を少し離れた場所からうかがっている。太陽もかなり高い位置まで昇ってきている。
しかし老婆の家にも馬小屋にも、動きといえるものがまったくない。
「…ひょっとして……」
スクナビコナは考える。
そもそも老婆の家にも馬小屋にも誰もいないのではないか?
そうとでも考えなければ、この明るい時間帯に家でも小屋でもなんの動きもないことを説明できない。
「…よしっ!」
スクナビコナは決心する。
思い切って建物のすぐそばにまで近づいてみよう。
「…まずは馬小屋だな……」
スクナビコナは比較的老婆に見つかる可能性が低そうな馬小屋に、最初に向かうことにするのだった。
「…扉が開いてるのか……?」
スクナビコナは馬小屋に向けてしばらく歩き、距離を縮めると、小屋の入り口の扉が開けっ放しになっていることに気づく。扉が堅く閉じられていることも考えていたスクナビコナとしてはやや拍子抜けの展開である。
「…とにかくすぐそばまで行ってみよう……」
スクナビコナはどんどん小屋へと歩を進め、ついには扉までたどり着く。さらには開けっ放しの扉を抜けて、馬小屋の中をのぞいてみる。
「…やっぱり誰もいないのか……?」
小屋の中は見事にもぬけのからである。小屋の中はいくつかの仕切りに区切られており、普段から馬を飼っているらしいことはわかるが、少なくとも今は馬の姿はない。
「…やっぱりチュルヒコはここにいないのか?ここには馬はいないし……」
スクナビコナは老婆の家から逃げ出したときに、確かに老婆によってチュルヒコがこの馬小屋に入れられようとしていたのを目撃した。
しかし少なくとも小屋の中にはチュルヒコの姿は見えない。
「…よし、家のほうを探ってみるか……」
スクナビコナは老婆の家に近づくことにするのだった。
「…ふう、ここにも誰もいないみたいだな……」
スクナビコナは馬小屋同様に老婆の家も近づいて中を探ってみた。
しかし馬小屋と同じように入り口の戸が開けっ放しになっており、家の中に入ってどの部屋に行こうとも、まったく人がいる気配がない。
つまりは馬小屋と完全に同じ状態である。
「…おばあさんもチュルヒコも一日でどこかに消えてしまった……?」
老婆もチュルヒコも〝神隠し〟かなにかのように、一日のうちにいずこかに消えてしまった。
悪い冗談のような話だが、今の状況からはそれ以外のことは考えられない。
「…おばあさんがチュルヒコと…、馬といっしょにどこかに消えた…?…待てよ……!」
スクナビコナはある〝一つの可能性〟を思いつく。
「…よし、行くぞ!」
スクナビコナはいずこかに向かって走り出すのだった。
「…やっぱりそういうことか……」
スクナビコナは〝その光景〟を見て、自分の考えが正しかったことを確認する。
老婆の家と馬小屋の周辺一帯にはある程度の広さの平らな土地がある。
そのうち、スクナビコナがやってきた側と反対のほうの土地には、田畑が広がっていたのである。
そこではスクナビコナが予想したとおりに、老婆が馬を使って農作業を行っている。
今、スクナビコナはその様子を老婆に見つからない程度に離れた位置から見ている。
ただ老婆〝たち〟の様子をちゃんと確認してみると、スクナビコナが事前に予想したこととは二つほど違っていた点がある。
まずは馬を使う人間の側は老婆を含めて五人いたことである。
スクナビコナは老婆が一昨日の夜に話していたことを思い出す。
老婆の家には老婆自身も含めて五人の者が住んでいると。
それがどうも正しかったらしいことがわかったわけである。
もう一つはその人間たちに使われる側の馬も五頭ほどいたことである。
つまり人一人につき、馬一頭いるわけである。
おそらくあの中にチュルヒコもいるのであろう。
また馬も五頭いたということは、ひょっとしたらチュルヒコ以外にも老婆によって馬に変えられた者がいるのかもしれない。
この五頭の馬たちは皆、五人の人間たちによって強制的に働かされている。
馬一頭につき人間が一人ついて、人間の手には鞭が握られている。
馬たちは田畑の作物を背に乗せられて運ばされたり、専用の農具で田畑を耕したりしている。
この作業中、馬たちは一瞬たりとて休むことは許されない。
少しでも馬たちの動きが遅くなったりでもしようものなら、すぐかたわらに控えている人間たちが、さっさとしろ、もっと働け、などと罵声を浴びせながら、鞭で容赦なく馬の背中や尻を叩く。
もう全ての馬の背中や尻は赤くはれ上がり、血が滲んでいる。
また馬の中にはすでにずいぶんと痩せこけているものもいる。
おそらくかなりの期間、ここで働かされ続けているのだろう。
いずれにせよ、こんな山奥で無理やり働かされている馬と、馬を徹底的にいじめ抜きながら働かせる人間がいることに、スクナビコナは戦りつする。
スクナビコナとしては一刻も早く人間たちを懲らしめ、馬たちを救い出したい。
しかし〝小さい〟スクナビコナにとっては、自分の何倍も体が〝大きい〟人間を、それも五人を相手に戦って勝利するのは至難の業である。
正面からぶつかっても返り討ちにあうのがオチだろう。
「…不本意だけど今は我慢して様子を見よう……」
スクナビコナは息を潜めて、馬と人間たちの様子を見続けるのだった。
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