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スクナビコナとネズミ馬②―暗い山奥に謎の家!…はたして何が…?―

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「…どこにいるんだ?〝悪事を働くものたち〟ってのは……」
『…今のところこの山には目ぼしいものは何もないし、〝悪事を働くものたち〟らしきものも見つからないよね……』

 スクナビコナとチュルヒコは〝悪事を働くものたち〟がいるとクエビコに言われた山の中をさ迷い歩く。

 スクナビコナたちの足では山にたどり着くまでが遠かったこともあり、すでにクエビコの元を出発してからずいぶんと時間が経過した。

『…まずいよ、もうずいぶん日が傾いてるよ……』

 チュルヒコは山の上から遠く西の空に見える夕日を見る。もはや夕暮れ時で、日没も近い時間帯である。

「…ああ、まずいな。〝悪事を働くものたち〟を探す前に今晩泊まる場所を探したほうがよさそうだ……」

 しかし一人と一匹の願いもむなしく日は完全に沈み、周囲は真っ暗闇に包まれる。

『…ああ、こんなことになるならここに来なければよかったんだ。いやな予感がしたときにやめておけば……』

 チュルヒコは歩きながら愚痴をこぼす。朝から歩き続けていたため、もはや疲労も限界に達している。

「なんだと!」

 チュルヒコがポツリと漏らした一言にスクナビコナは激高する。

「お前は僕が間違ってるって言いたいのか!」
『僕はスクナにもう少し慎重に、計画的に行動してほしいんだよ!スクナはいつだって衝動的に行動して、しかも自分の考えを僕にも押しつけるだろ!』

 スクナビコナとチュルヒコは口論を始めてしまう。

「言わせておけば!ふざけるな!」

 そう叫ぶと、スクナビコナはチュルヒコに飛びかかる。

『うわっ!危ないよ、スクナ!』
「あれっ!」
『ちょ、ちょっと!』

 スクナビコナがチュルヒコに飛びついたあと、勢い余って一人と一匹はすぐそばにあった山の斜面から転がり始めてしまう。

「うわあっ!」
『あわわっ!』

 そうして一人と一匹はそのまま坂の下まで転がり落ちてしまうのだった。


「…あいたたた…、やっと止まった……」
「…いてて…、そうだね……」

 スクナビコナとチュルヒコは坂の一番下まで落ちて、しばらくしてからようやく起き上がる。

「…ふ、ふん、とりあえず酷い怪我してないみたいだな……」
『…ぼ、僕も大丈夫みたい……』

 スクナビコナとチュルヒコは自分の体をちゃんと動かせるのかを簡単に確認する。

『…あれは……?』

 そのとき、チュルヒコが〝何か〟を見つける。

「おい、お前何ごまかそうとしてるんだ!その手には乗らないぞ!」

 しかしスクナビコナはチュルヒコを無視して、チュルヒコにつかみかかろうとする。

「フン、お前僕の考えを否定しようとしやがって……!」
『僕はごまかそうとしてるんじゃないよ!お願いだからスクナもあっちのほうを見てみてよ!』

 なおも詰め寄ってくるスクナビコナにチュルヒコは必死に訴える。

「…ちっ、何があるんだよ!」

 チュルヒコの必死の訴えに、ようやくスクナビコナもチュルヒコの視線の先のほうに目を向ける。

「…あれは……?」

 その先には遠くのほうにぼんやりと光が見える。

『…光が見えるでしょ?』
「…そうだな……」

 スクナビコナもチュルヒコもじっと光のほうを見る。

『…こんな山奥に光なんて。…なんなんだろうね?』
「…わからないけど、…たぶん誰かが住んでるんだろうな……」

 スクナビコナもチュルヒコも〝光の正体〟について思いを巡らせる。

『…僕はこのままの野宿なんて嫌だよ…。…ちょっと気味が悪い気もするけど……』
「…行ってみるか……!」

 結局、一人と一匹は〝光〟に向かって駆け出すのだった。


『…これは……』

 〝光〟にかなり近い位置まで近づいて、チュルヒコはつぶやく。

「…とりあえず見た目は普通の家みたいだな……」

 何しろ真っ暗な状態であるため、はっきりと確認することはできないが、建物の中からわずかに漏れてくる光なども参考にすれば、どうも木と藁でできている家らしいことがわかる。

『…こんな山奥に一軒家なんて…、どんな人が住んでいるんだろうね……?』

 チュルヒコが率直な疑問を口にする。実際目の前のもの以外に、周囲に光などは一切確認することができない。つまりこの家は一軒家である可能性が高い。

「…確かにちょっと怪しいな……」

 さすがのスクナビコナも家への警戒感を口にする。

『…でもやっぱり僕は、野宿はしたくないんだよね……』

 チュルヒコはつぶやくように言う。

「…よし、このままここでこうしててもしょうがない。行ってみようぜ」
『そうだね』

 こうして一人と一匹は家の入り口へと向かうのだった。


 ドン、ドン!

「誰かいませんかあっ!」

 スクナビコナは大きな木の戸を力いっぱい叩きながら、大声で叫ぶ。
 すると家の中から、はーい、どなたでしょう、と言う声が聞こえる。それからしばらくして、ガラガラ、という音とともに木の戸が横に開く。

「…あれ、誰もいない……」

 戸を開けた大きな老婆は外を見回す。その髪は白く、着ている服もまた白い。

「…ここだ、ここにいるよっ!」

 スクナビコナは両手を振り上げて飛び跳ねながら叫び、自分の存在をアピールする。

「…おやまあ……」

 いわゆる普通の人間と同じくらいの大きさの老婆は、ようやく自分の足もとにいるスクナビコナたちを見つけて驚く。

「…確かに僕たちは小さいかもしれないけど、ちゃんと見つけてよね!」

 スクナビコナは腰に手を当て、怒っているというしぐさをする。

「フッフッフッ、これはこれは…。ごめんなさいね、小さなお客さんたち!」

 老婆は口に手を当てて笑いながらスクナビコナたちに謝罪する。

『おばあさん!今晩ここに泊めてもらえるかな?」
「ええ、それはもう大歓迎ですよ!ここは田舎ですし、たいしたもてなしはできませんけど……」

 老婆はスクナビコナの頼みを笑みを浮かべながら快諾する。

「よかった!僕たちはこの山で道に迷って困っていたんだ。だから泊めてもらえるだけで嬉しいよ!」

 スクナビコナは老婆の言葉を聞き、ほっと胸をなで下ろす。

「そうですか。…立ち話もなんですから…。さあ、どうぞ」

 そう言うと、老婆はスクナビコナたちに家の中に入るように促がすのだった。
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