上 下
19 / 56

スクナビコナとおむすびころりん③―アマノジャクの悪だくみ!お下劣なるパクリの美学!!―

しおりを挟む
『いやー、昨日は本当に楽しかったよね!』
「うん、そうだな!」

 夜が明けて、朝になると同時にスクナビコナとチュルヒコは連れ立ってネズミの穴を出る。
 昨晩は結局夜遅くまで宴会を楽しみ、ネズミの穴の中で眠ってしまった。
 そしてつい先程、ハツカノミコトたちに別れを告げ、最初に穴に入った入り口から出てきたのである。

『あーあ、それにしてもここでも僕は〝ネズミタケル〟にならなきゃならないのか。一体いつになったら僕は〝チュルヒコ〟って名乗れるんだろう』
「ふん、まだそんなことを言ってるのか。言っておくが、お前はこの地上にいる限りは〝ネズミタケル〟のままだ」
『ええーっ、そんな……』

 スクナビコナの言葉を聞いてチュルヒコは歩きながらガックリとうなだれる。

「ははっ、お前はこの地上でこれからも〝ネズミタケル伝説〟を作り続けるんだよ!そしてお前の存在はネズミたちによって子々孫々に至るまで後世に語り継がれるというわけだ!」
『お、重い…。それは僕にはあまりにも荷が重過ぎるよ……』
「ハッハッハッ、そんなに難しく考える必要はないよ!」

 相変わらず気が重そうにしているチュルヒコがつぶやいた言葉を、スクナビコナは笑い飛ばす。

「ネコを退治したときや、さっきネズミたちの協力を得たときみたいに、目の前の問題を一つ一つ解決していくだけさ。つまり今までとやり方を変える必要は全くない。あくまでこれまで通りってことだな」
『…そうか、うまくいくといいけど……』

 スクナビコナの言葉を聞いてもチュルヒコはあくまで悲観的に言う。

「あっはっはっはっ、なあに、うまくいくさ。いや、必ずうまくいかせてやる!」

 それでもスクナビコナは楽観的な姿勢を崩すことはない。その言葉にも力強さがみなぎっている。

「さあ、ひとまずクエビコ様の元に戻るとしようぜ。まあ、急ぐ必要もないけどな」
『うん、そうだね』

 こうしてスクナビコナとチュルヒコはのんびりとクエビコの元へ向かって歩いていくのだった。


『クックックックッ!』
「フッハッハッハッハッ!」

 スクナビコナとチュルヒコの様子をいくらか離れた場所から盗み見ながら笑っている一人と一匹の影。アマノジャクとドブヒコである。

『いやー、アマノジャク様。あいつらどうしようもないバカどもですぜ!俺たちがずっと後ろからつけていたことに気づきもしないで』

 ドブヒコがスクナビコナとチュルヒコをあざける。

「まったくだ!おかげで今の今まで、あいつらがどうやってネズミどもをうまくたぶらかしたのかを、完璧に知ることができたというわけだ!」
 そんなドブヒコにアマノジャクも同調する。
『おかげで昨晩はどさくさにまぎれて、俺たちも宴会に参加して、ネズミどもの飯をご馳走になってやりやした。一晩ただ飯食らいとは我ながらうまくやってやったと思いやすぜ!』
「何をせこいことをぬかしてやがる!」

 ドブヒコの言葉を聞いたアマノジャクは一喝する。

「俺はネズミどものクサイ飯なんぞではまーったく満足できやしねえぜ!」
『な、なんと!』

 突然のアマノジャクの言葉にドブヒコは驚く。

「俺はネズミどもからたーんまりとお宝を受け取ってやらなきゃ気が済まねえ!」
『お、お宝?しかしネズミどもの穴の中ではそんなものはどこにも見えやしませんでしたぜ』
「ふん、あそこのネズミどもは弱いくせに根性のねじ曲がったやつらだ。どうせどこかにお宝を隠してやがるに違いねえ!」
『そ、そうか!さすがアマノジャク様、悪知恵が働…、いや本当に賢い!』
「ハッハッハッ、スクナビコナとチュルヒコはお人好し過ぎてそれを見落としたんだろうよ!だがこのアマノジャクはぜえーったいに見逃さん!」
『で、でもいったいどうやってそのネズミどものお宝ってのを手に入れるんで……?』
「ハーッハッハッハッ、愚問だな、ドブヒコよ」

 ドブヒコが疑問を呈しても、アマノジャクの自信は一切揺らぐことはない。

「まずはこっちもネズミの穴におにぎりを投げ入れる。そしてあいつらにたんまり礼をさせるのよ!」

 アマノジャクは自慢げに自分の計画をドブヒコに説明する。

『す、すげえ、さすがアマノジャク様だ!このドブヒコ、一生あなたについて行きやすぜ!』

 ドブヒコもアマノジャクの考えを絶賛する。

「ハッハッハッハッ、甘ちゃんのスクナビコナはネズミどもといくらか仲良くなったくらいだったが、このアマノジャクはネズミどもからお宝を、いや全てを奪ってやる!」
『クックックックッ、いやー、アマノジャク様。あんたは本当にえげつないぜ!』
「フッハッハッハッ、まずはスクナビコナのやり方をパクってパクってパクリまくる!そして最後のところでヤツを出し抜く!これがこのアマノジャク様の〝成功の方程式〟だ!」
『完璧だ!完璧すぎるぜ!…あっ、そういえば……』

 そのとき、ドブヒコがふと、あることに気づく。

「うん、なんだ?」
『俺たちがネズミ穴におにぎりを投げ入れるためには、おにぎりをクエビコの元から盗む必要がありやす。でも俺たちがここでいつまでも喋っていたら、その間にスクナビコナたちが先にクエビコの元にたどり着いてしまい、そうなるとおにぎりを盗むのが面倒に、グフッ……』

 話をしている途中でドブヒコは突然アマノジャクに頭上から殴られてしまう。

「その程度のことをこのアマノジャク様がわからないはずがないではないか!さあ、ドブヒコよ!クエビコの元に急ぐぞ!」

 そう言うと、アマノジャクはクエビコの元にスクナビコナたちよりも早く着かんと全速力で走り出す。

『…あ、あんた、絶対に話すことに夢中でおにぎりのこと忘れてただろ……』

 ドブヒコは愚痴を言いながら、アマノジャクのあとを追うのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

処理中です...